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回復職の悪役令嬢  作者: ぷにちゃん
エピソード2 錬金術師のプレイヤー的育成方法
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25 〈防護マスク〉を手に入れたい!

「んにゃ~~~~! この臭い、なんとかならないですにゃ!?」

「うーん……」


 狩りを終えて宿屋に戻ってきた私は、〈オークのぼろ布〉の臭いで涙目になりつつ〈火炎瓶〉を作っているタルトを見て苦笑する。


「ぼろ布の匂いを取るか、何かマスク的なものがあるといいよね」


 しかし考えてみよう。ぼろ布から臭いが消えて綺麗に? なってしまったら、それはもう〈オークのぼろ布〉ではないのでは……? と、私は思う。それに綺麗にする方法もいまいち思いつかないので、マスクを用意する方が現実的だろう。

 ……確か、〈防護マスク〉っていうアイテムがあったはずなんだよね。

 ただ、存在していることは知っているけれど、使ったことがない。なので、いまいち入手方法を覚えていない……。


「どっちでもいいから、ほしいですにゃ~」

「道具屋に売ってるか見に行ってみようか」

「――! すぐに、すぐに行きましょうにゃっ!」




 私とタルトは、とりあえず道具屋に来てみた。


「〈防護マスク〉? うちでは取り扱ってないな……」

「そうですにゃ……」


 無慈悲な言葉を聞いたタルトの耳が、ぺちょりと垂れてしまった。よほどショックだったのだろう。


「かなり切実そうだが、何に使うんだ?」

「〈オークのぼろ布〉がすごく臭いので、それをどうにかしたいんですにゃ」

「あー……」


 タルトの言葉を聞いて、遠い目をしている。ぼろ布のひどい悪臭を嗅いだことがあるのだろう。


「しかしあの臭いを防ぐとなると、そうとうなもんが必要になりそうだな。ギルドに行けば、何か情報があるんじゃないか?」

「確かに! ぼろ布も扱ってたし、何かあるかもしれませんね」

「行ってみましょうにゃ!」


 私たちはお礼を告げて、道具屋を後にした。




 そして〈冒険者ギルド〉にやってきた。

 狩の終わりに気づいていればそのとき聞けたのにと思いつつ、私は受け付け仕事をしているプリムさんに声をかける。


「あれ、シャロンさんにタルトちゃん! どうしました?」

「実はご相談があって……。〈オークのぼろ布〉の臭いがきついんですけど、どうにかするアイテムないですかね? 例えばマスク的な……」

「ああ~!」


 私の言葉を聞いたプリムさんは、「臭いですよね~」と苦笑している。やっぱりあの匂いはどこでも嫌われているようだ。


「一応〈防護マスク〉っていうのがあるんですけど……非売品なんですよね」

「なんと!」

「にゃんと!」


 非売品――売っていないというプリムさんの言葉に、私とタルトちゃんは絶望する。そんないいものを独り占めするの、いくない!! 私たちもほしい! 予備を含めて五つくらい!!


「せめて、せめて一つくらい……!」

「何がせめてなんですか……。うーん、でもシャロンさんにはいろいろお世話になってますし」


 プリムさんは「ちょっと待ってください」と言って、後ろの棚から地図を取り出した。ツィレの周辺地域が描かれた地図みたいだ。ゲーム時代と同じ……じゃなかった。ゲーム時代の地図の方が、もっと詳しく書かれていたね。


「〈防護マスク〉をお渡しするのは無理なんですけど、入手方法でしたらお伝えできます」

「なんと!」

「にゃんと!」


 今度は先ほどの絶望よりも、明るい声で返事をする。購入できないなら、自分で取りに行くしかないじゃない! 私は頷いて、「どこで買えるんですか!?」と食い気味に詰め寄る。

 プリムさんは「ここですよ」と、北西方面にあるフィールド〈枯れた泉〉を指さした。


「あー……」

「お師匠さま?」


 私が眉間に皺を寄せるように返事をしたら、プリムさんは苦笑して、タルトは不思議そうな顔で首を傾げた。

 ここは昔、とても美しい泉があった場所らしい。が、今は魔女モンスターに占拠され、泉ではなく毒沼があり、毒草が生えまくっているフィールドだ。私もプレイヤー時代に行ったけれど、毒々しい光景が広がっていたのは今でも印象深い。


「あ! そうか、ここの〈毒婦の魔女〉のドロップアイテムに〈防護マスク〉があるんだ……!!」


 思い出した、スッキリした! 特に使うことなく売却してお金にしていたので、まったく覚えていなかった。ドロップ率はそこまで悪くなかったから、しばらく狩りをすれば私とタルトの分を手に入れられるだろう。


「ここで狩りをすれば、〈防護マスク〉が手に入るんですにゃ!?」

「そう! 頑張ろう!」

「はいですにゃ!」


 そのためには魔女を狩るための〈火炎瓶〉を作らなければいけないのだけど、喜んでいるタルトには、今はまだ言わない方がいいだろう――。



 ***



 翌日、私とタルトは二人で〈枯れた泉〉にやってきた。道中は馬をレンタルしたので、サクサク進めていい感じ。入り口前の木に馬を繋いで、いざ魔女狩りだ!


 今回ケントとココアを誘わず二人で来たのには、理由がある。それは、このフィールドではめちゃくちゃ毒状態にさせられてしまうということ。毒を受けると、苦しい。さらに体力がどんどん削られていく。それを治癒するには〈解毒ポーション〉か私が新しく取得したスキルの〈キュア〉が必要になる。毎回〈解毒ポーション〉では、ケントたちは金銭面や荷物の面でも大変なはずだ。そのため私が〈キュア〉をするんだけど……四人分ともなると、結構大変なのだ。

 ……せめて毒耐性の装備があれば、また違ったんだろうけど。

 こればかりは仕方がない。装備一つ買うにも、結構なお金が必要なのだ。

 幸いなのは、ここのフィールドのモンスターは〈毒婦の魔女〉という魔女一種類。攻撃力はそこそこ強いけれど、数が多くないので、一度に複数体を相手にすることはほとんどない。それも、私とタルトが二人で来た理由の一つだ。


「う、薄暗い森ですにゃ……」

「陰湿な魔女モンスターがいるから、私から離れないように気を付けてね」

「はいですにゃ!」


 タルトは緊張気味に、けれど気合を入れて返事をしてくれた。私もそれに頷き、〈身体強化〉〈女神の守護〉〈リジェネレーション〉〈マナレーション〉をかけ、〈枯れた泉〉に足を踏み入れた。


 うっそうとした暗い森で、地面は苔だらけ。しかも水場――という名の毒沼がいたるところに広がっているので、非常に歩きづらいのである。触れるだけで手が赤くなってしまう毒草なども生えているので、周囲にも注意が必要だ。ちなみに毒沼に入ったら、もれなく毒を受けます。


「――いた」

「箒で空を飛んでるにゃ!?」


 毒沼の上を優雅に飛んでいる魔女を見つけた。真っ黒なローブに、金色のネックレス。箒の先には灯り用のランタンと、なぜか束にした毒草が吊るされている。

 タルトが飛んでいることに驚いていることに驚いたけれど、確かに箒で空を飛んでる人ってみたことなかったかも。


「私が魔女の気を引くから、タルトはタイミングを見計らって攻撃してね。〈女神の一撃!〉」

「任せてくださいにゃ!」


 タルトの返事を聞き、私は慎重に魔女の方へ歩いていく。魔女は攻撃力は高いけど、防御力は低い。そのため、〈女神の一撃〉を使えば〈火炎瓶〉で一確することができる。


『ギュギュ!?』

「こっちだよ、魔女!」


 私はヘイトスキルを持っていないけれど、自身をターゲットにさせることはできる。ようはタルトより先に近づいて、魔女の意識をこっちに向けさせてしまえばいいだけだ。攻撃が通ればそっちにヘイトがいくけれど、一撃で倒す予定なので今回は問題ない。


 魔女が箒で私に突進してきたので、「今!」と声を張り上げる。


「はいですにゃ! 〈ポーション投げ〉!!」


 タルトが魔女目がけて攻撃すると、私のすぐ横で火柱が上がる。かなりのド迫力で、一瞬息を呑んでしまったのは仕方がない。でも大丈夫! 〈女神の守護〉でバリアを張ってるから!! 無傷で生還です。ふう。


「やりましたにゃ~!」

「ナイス~!」


 私はタルトとハイタッチをして、魔女の落としたドロップアイテムを拾う。〈魔女の薬〉〈壊れた箒〉の二つ。どっちもゴミだね。


「薬、ですにゃ?」


 小瓶に入っている液体を見て、タルトが首を傾げた。


「これは〈魔女の薬〉っていうアイテムなんだけど、お腹を壊しちゃうから飲んだら駄目だよ?」

「それ、薬じゃないですにゃ……」


 そもそもあんなに怪しい魔女が持っているものなんて、服用してはいけません。


「よし、それじゃあこの調子でどんどん狩って行こうか」

「はいですにゃ!」


 元気なタルトの返事を聞いて、私は気分よく歩き出す。せめてテンションくらい高くしていかないと、うっそうとした森ではやってられないね。


 それから三〇体ほど魔女を倒したところで、〈防護マスク〉をドロップした。


「やったー!」

「やりましたにゃ~!」


 これで目標達成だ! 欲を言えばもっとほしいけれど、さすがにこれ以上〈火炎瓶〉を消費するのはもったいないので、素直にあきらめることにした。申し訳ないけど、タルトが〈製薬〉しているときは出かけさせてもらおう。


「それじゃあ、帰ろ――」

「きゃあああぁぁぁっ」

「「――!?」」


 私たちが帰るため出口に向かおうとした瞬間、幼い女の子の悲鳴が耳に届いた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] シャロンさんにはいつもお世話になってますし? 冒険者ギルドってシャロンにお世話になってないよね? 情報提供断ってるし、普通にアイテムの買取してもらってるだけだから他の冒険者と大差ないと…
[気になる点] 〈魔女の薬〉はゴミかねぇ? 使いようによっちゃ、相手に行動不能レベルのデバフになったり、悪徳な輩を嵌める手段になり得るのに。 ピーゴロはきっついぞぉ?w
[気になる点] 今回ケントとココアは魔女狩りに参加してないけど、パーティー登録が解除されてなければ経験値は分配される気が。それとも狩りのフィールドにいないと同じパーティーでも経験値分配が起きない? あ…
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