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回復職の悪役令嬢  作者: ぷにちゃん
エピソード2 錬金術師のプレイヤー的育成方法
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8 探し人

「はーー」


 私はフレイと二人、村の入り口でため息をついた。結局、〈薬師〉も〈錬金術師〉も見つけることができなかった。


「仕方ない、戻るか」

「……そうだね」


 フレイの言葉に頷いて、私たちはトルテの家へ向かった。



「おかえりにゃ! どうだったにゃ?」


 家へ戻ると、真っ先にトルテがやってきた。その後ろには、リーナとルーナがいるけれど、二人とも表情はすぐれない。向こうも見つけられなかったみたいだ。

 フレイが静かに首を振ると、トルテの耳がへにょりと垂れた。「大丈夫にゃ」と口では言っているけれど、きっと強がっているのだろう。


「今日はもう遅いにゃ。ご飯を食べて休むにゃ」


 テーブルの上を見ると夕食が用意されていた。トルテが看病の合間に作ってくれていたみたいだ。


「ああ、そうしよう。腹が減っては、いい案も浮かばないだろう」

「そうね」


 フレイとルーナが頷いて椅子に座ったので、私とリーナも後に続く。今日の夕食はシチュー、パン、サラダだ。


 私はシチューを食べながら、さてどうしたものか考える。

 ……私が〈薬師〉か〈錬金術師〉に転職できたら、一番手っ取り早くてよかったんだけど……。

 いかんせん〈薬師〉の転職場所は〈桃源郷〉で、〈錬金術師〉の転職場所はファーブルム王国をはさんだ隣にあるローラルダイト共和国にある。どちらも行くのが大変で、一刻も早く薬がほしいことを考えると時間が足りなさすぎる。

 転職ができることをフレイたちに話さなければいけないけれど……本当の本当の、最終手段としては考えておいた方がいいかもしれない。


「……ロン」

「シャロン!」

「えっ?」


 私が思考に没頭していたら、大きな声で名前を呼ばれた。見ると、私以外の全員がすでに食べ終わっていた。


「あ、ごめん。すぐに食べちゃうね」

「ゆっくりで大丈夫にゃ。その、シャロンが思いつめたような顔で心配だったのにゃ」

「あー……ちょっと考え事をね。もう大丈夫」


 私は笑顔を見せて、急いでシチューにパンをつけて口に含む。トルテのご飯は今日も最高に美味しいです。


「そんなに急がなくていいと言っただろう?」


 フレイがそう言って笑って、すぐに「決めたぞ」と全員を見た。


「明日、ツィレに戻ろうと思う。あそこなら、〈薬師〉も〈錬金術師〉もいるはずだからな。片っ端から当たれば、一人くらいはスキルを持った人がいるだろう」

「フレイ……ありがとうにゃ」

「私たちだって、タルトのことは大切だし、妹のように思っているからな。大丈夫だ、絶対に助かる!」


 フレイがぐっと拳を立てて、それに全員が頷く。すると物音がして、振り向くとタルトが立っていた。顔色は先ほどよりよくなっていて、少しだけほっとする。


「タルト! まだ寝ていた方がいいにゃ」

「だいぶ楽になったから、わたしも一緒にご飯を食べようと思ったのにゃ」


 そう言って、タルトちゃんは自分のお腹に手を当ててはにかむように笑った。小さくきゅぅと音が聞こえてきたのがまた可愛い。

 トルテが「すぐ用意するにゃ!」と慌てだすのを見ながら、タルトちゃんは席に着いた。



「おねえちゃんのご飯は美味しいにゃ」


 にこにこ笑顔でシチューを食べるタルトちゃんは、先ほどよりも元気が出てきたようだ。食欲があるというのは、いいことです。

 タルトちゃんはゆっくり食べながら、私たちを見た。


「……お医者様を探してくれていたのにゃ?」

「ああ。だが、この村にはいないみたいでな。明日、私が探して連れてくる予定だ」


 フレイが代表して返事をすると、タルトちゃんは「ありがとうにゃ」と微笑んだ。


「おばあちゃんがいたら、こんなに困らなかったのににゃ……」

「おばあちゃん?」


 突然出てきたおばあちゃんに、私は首を傾げる。


「私たちの祖母は〈錬金術師〉だったのにゃ。今は誰もつかってないけど、この家の地下に研究室があるのにゃ」

「へえぇ、そうだったん――」


 私は普通に頷こうとした自分に待ったをかける。祖母が錬金術師だということは、トルテの家系は〈錬金術師〉がほかにもいるかもしれない。でもトルテの職業(ジョブ)は〈お手伝い〉だから違う。


 ……そういえば、タルトちゃんの職業(ジョブ)ってなんだろ?

 先ほどさんざん職業(ジョブ)の確認はしたけれど、タルトちゃんの職業(ジョブ)は確認していない。

 今は体調も安定してるから、スキルがあれば薬一つくらいなら作れる……と思う。


「ねえ、タルトちゃん?」

「にゃ?」

「タルトちゃんの職業(ジョブ)って、何かな?」


「わたしは――〈錬金術師〉にゃ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分で自分を癒やすのかー となると他でも家系を遡ることは今後も必要性ありそうですね
[気になる点] ここから怒濤のレベリングが始まるわけですが ケットシー村の周辺にいる猫系モンスターってケットシー的には殴ってOKなんだろうかという疑問が ダメだったらアヒルンとかを中心に狩ればいいのか…
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