3 ケットシーの村
ちょっと更新があいてしまいました!すみません。どうぞよろしくお願いします~!
門番の青年ケットシーは、身長はトルテより少し高いくらい。90センチくらいだろうか。その門番が、警戒の色を強めて私に槍を突き出している。下手な受け答えをすれば、このまま槍で攻撃されてしまいそうだ。
すると、トルテが私の前に飛びだした。
「待ってにゃ! この人はシャロン。私がお願いして一緒に来てもらったのにゃ!」
「お前、トルテ! タルトの病気を治す薬草を探しに行ったんじゃないのにゃ?」
「シャロンのおかげで見つけることができたのにゃ。薬草に詳しいから、一緒に来てもらったのにゃ。……私たちだけだと、薬草を薬にできるかわからないからにゃ……」
トルテの言葉に、フレイ、ルーナ、リーナの三人が頷いている。ダンジョンの道案内をして、必要な薬草がどれであるか教えてあげたので、確かに私のおかげと言っても過言ではないかもしれない。
……私からすれば、そこまで貴重な情報でもなかったんだけどね。薬草だって、トルテの妹に絶対効くとも言い切れないから……。
門番をしていたケットシーは、トルテの言葉を聞いて私をじろじろ見る。品定めされているような気分だけれど、村に入るためにぐっと我慢だ。
「にゃうぅ……。でも、村のみんなは人間をよくは思わないぞにゃ。フレイたちには慣れているが、それだって時間はかかったし……」
「うぅ~ん……」
トルテと門番が二人で頭を抱えている。そしてどうすれば私が村に入れるか一生懸命考えてくれているのがわかる。
二人の優しさに泣きそう。
「あ、だったら……これはどうだろう?」
「「にゃ!!」」
私が以前装備していた〈猫のローブ〉を取り出して着てみると、トルテと門番の目が輝いた。それだ! という瞳で見られている。
「猫耳がついてるなら、まあ、大丈夫だろうにゃ!」
「え、本当に?」
ちょろすぎじゃない? 装備した私が言うのもあれだけど、とても心配になるよ……。そんなんじゃ人間に騙されちゃうよ……。あ、だから人間が嫌いなのか……? いや、考えるのは止めておこう。
とりあえず、私はケットシーの村〈キャトラ〉へ入ることを許された。
ケットシーの村の中は、当たり前かもしれないけれどケットシーしかいなかった。いや、ケットシーのほかに普通の猫もいる。なんだかとっても和やかだ。
私から見たら少し小さな建物は、少し体を屈めなければドアを通れない。けれど中は広そうなので、そこまで不便はしなさそうだ。
門のすぐよこに転移ゲートがあるのを確認しつつ、今はフレイたちと一緒なので登録は後回し。私たちはまっすぐトルテの家へやってきた。
トルテの家は、村の奥の方にあった。表通りから離れているため静かで、ざざん……と波の音が聞こえる。空気も澄んでいるので、妹さんの療養にはいい環境だろう。
可愛い水色の屋根に、魚の形の窓。庭には色とりどりの花とねこじゃらしが植えられていて、すぐ横にはベンチが置かれている。
ふおおおぉぉ、トルテお家めっちゃ可愛いね!!
この島についた瞬間から高かった私のテンションは、すでにマックスに近い。この村だけのクエストがあったりしないかなと、そわそわしてしまう。が、今はトルテの妹ちゃんへ薬草を届けるのが先決だ。
「ただいまにゃ」
トルテが「どうぞにゃ」と言いながらドアを開けると、中から小さなケットシーの女の子がやってきた。
「おねえちゃん、おかえりなさいにゃっ!」
「タルト!」
トルテに飛びついた女の子が、妹のタルトちゃんのようだ。
身長はだいたい50センチくらいの、ふわふわの髪のお人形みたいな女の子だった。とびきりの笑顔を見せたタルトちゃんは、私たちに気づくと慌ててトルテから離れて可愛くお辞儀をしてくれた。
「いらっしゃいませ!」
「久しぶりだな、タルト」
「元気そうでよかったわ。今日は調子がいいのね」
「ちゃんと薬草を持って帰ってきたよ!」
フレイ、ルーナ、リーナの三人がタルトちゃんを撫でて、元気そうな姿に安堵している。その様子から、体調に波があるのだろうということがわかる。
私に気づいたタルトちゃんが、こっちにやってきた。
「初めまして。トルテの妹の、タルトです」
「ご丁寧にありがとう。初めまして、シャロンです。どうぞよろしくね」
「はいっ!」
挨拶を返すと、タルトちゃんは嬉しそうに微笑んでくれた。その顔がめちゃくちゃ可愛いので、絶対に病魔許すまじと思った私である。