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回復職の悪役令嬢  作者: ぷにちゃん
エピソード1 私だけが転職方法を知っている
20/161

20 新たな装備

 ――どうか効いて!


『ぐああぁっ』


 祈るような気持ちで、私は聖水を浴びたエルンゴアを見る。悲鳴を上げたところを見ると、何かしらの効果はあったみたいだ。

 すると、エルンゴアの胸部の高さに水色のリングが現れて、下がりながら消えていった。


「これ、防御力低下の弱体化(デバフ)だ!」


 しかもよく見ると、〈聖水〉のダメージもしっかり受けている。持続するらしく、苦しそうな声が何度も耳に届く。

 ……これなら、思ったより早く決着がつくんじゃないかな?


「〈ホーリーヒール〉!」


 私はさらに攻撃を加えて、ぐぐっと足に力を入れて大きく後ろへ跳んだ。いったん離れて、スキルのかけ直しと回復だ。私は〈マナポーション〉を飲んで、一つ息をつく。とはいえ休む暇まではなく、再び襲ってきたスキル攻撃を全力で右に跳んで避ける。

 すると、エルンゴアが手にしていた杖をぐるぐると頭上で回し始め、サークレットについている宝石が光った。


「よし、残りHPが10%を切った!」


 思っていた以上に〈聖水〉の効果が高かったようだ。……が、聖水の効果はもうなくなったようで、エルンゴアがダメージを受けている様子はない。

 でも、ここまできたら勝ったも同然!

 とはいえ油断はできないので、慎重にエルンゴアの状態を見極める必要がある。HPが10%を切ると、杖を回し、簡易的な竜巻を起こし、すべての近距離攻撃を無効化してくるのだ。なので、エルンゴアの攻略には遠距離職が必須だ。


 私は〈ホーリーヒール〉を撃ち、〈鞄〉から〈聖水〉を取り出して勢いよく宙へ跳ぶ。そして再び〈聖水〉をエルンゴアに振りかけた。そして続けざまに――


「〈ホーリーヒール〉!」

『ぐああああああぁぁっ』


 私が一撃を加えると、エルンゴアの叫びが部屋にこだまする。思わず耳を塞ぎたくなるような不気味な声を発し、エルンゴアは光の粒子となり――カランという音とともに、地面にドロップアイテムが転がった。


「え?」


 思わず目を見開いて、〈エルンゴアの亡霊〉のドロップアイテムを見る。そこにあるのはエルンゴアが生前から愛用し、モンスターになった後にも持っていた〈芽吹きの杖〉だ。

 私はゆっくり歩いていき、ドロップアイテムを手に取る。落ちたアイテムは、〈芽吹きの杖〉、〈嘆きの宝玉〉、〈薬草〉の三つだ。ちなみに〈薬草〉はレアでもなんでもなく、正真正銘、その辺に生えている薬草だ。


「〈虹のクリスタル〉がドロップしたらいいな……と思ってたけど、杖が手に入れば十分だね」


 杖は回復スキル+3%、聖属性+10%の効果がついている。中盤くらいまでであれば、問題なく使えるだろう。

 私も〈鉄の鈍器(メイス)〉からおさらばするときがきたようだ。これからは、装備も正真正銘支援として生きていけるだろう。

 ……というのも、実はこの先に宝箱があるのだ。一度開けたら二度と出現しない、先着一名しか手に入れられない宝箱が。テンションが上がるのも仕方ないではなかろうか。


「わったしの宝箱~♪」


 るんるんスキップで奥の道を進むと、そこは五畳程度の小さな書斎だ。ここはエルンゴアの秘密の部屋なのだろうが……残念ながらプレイヤーはみんな知っている。

 部屋をぐるりと囲うように、壁は本棚がつけられている。見ると、エルンゴアの日記など、ちょっと気になってしまうラインナップだ。中央には書きものができる机があり、床には魔道具が入った木箱がいくつも置かれている。

 ……これって、いただいていいのかな?

 泥棒? と思いつつも、当のエルンゴアはもう亡くなっているし、むしろ今さっき亡霊になった本人を倒してしまったところだ。


「悩ましい……けど、まずは宝箱を先に見なきゃ」


 宝箱は隠されることなく、机の上に乗っていた。まだ誰にも見つかっていない、ゴールドの縁取りがされた、赤の宝箱だ。再出現する木箱の宝箱とは、存在感が違う。


「この宝箱は、何度見ても胸が高鳴る……」


 ドキドキしながら、そっと宝箱を開ける。すると、レアが出てくるときのまばゆい光が薄暗い室内を照らす。まるで、陽が上ったかのようだ。


「……これ、〈慈愛のローブ〉だ」


 綺麗にたたまれたローブを手に取ると、その下には〈慈愛のブーツ〉と〈慈愛の髪飾り〉も入っていた。回復系統のスキルにプラス補正が入るため、支援職は重宝する装備だ。


 私はさっそく着替えてみる。袖を通したらすぐ自分のサイズにピッタリ調整されたので、着心地がいい。

 オフホワイトを基調としたローブと中に着用するブラウスにワインのような深みのある赤の差し色が使われていて、胸元につけられたチェーンの装飾は背中部分に回り込むようにデザインされている。胸元からスカートの途中までは一部にダークレッドの生地が使われており、丈は膝下。ブーツは濃い色合いなので、ローブが引き締まったように見える。

 髪飾りは赤の宝石と白のレースの装飾がされた小ぶりのもので、前髪のサイドにつけた。


 ローブは回復スキルに+5%、物理防御+3%、全属性の耐性+3%。ブーツは回復スキルに+5%、物理防御+3%。髪飾りは回復スキルに+5%、魔法防御+3%。さらにこの三つの装備は〈慈愛シリーズ〉なので、すべて装備するとさらに回復スキルに+15%、物理防御+5%、魔法防御+5%、スキル使用時のマナの消費量10%減少がつく優れものだ。

 つまり、私の〈ヒール〉は+30%増し、杖も合わせたら+33%増しになったということだ……! すごい!


 これでしばらくは……というか、かなり先まで装備のことを考える必要はないだろう。長く使える、性能のいい装備だ。




 私はホクホク顔でボス部屋を出て、はたと気づく。


「そういえば、リセットしたスキルを元に戻さなきゃいけないんだった……」


 すっかり失念していた。またあの苦いような苦しいような〈スキルリセットポーション〉を飲まなければいけないのかと考えると、とてつもなく気が重い。……が、仕方ない。

 私は残りの聖水が二本だったので、〈スキルリセットポーション〉を二本作って一本は予備として持っておくことにした。

感想、書籍化へのお祝いのお言葉ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 亡霊倒してもレベル上がらないんですね
[一言] エルンゴアの部屋にあった魔道具はどうしたんだろか?
[気になる点] 今の世界なら、かなり先と言うより よほどのことがない限り変わらないような気がする
感想一覧
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