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回復職の悪役令嬢  作者: ぷにちゃん
エピソード7 Sランクの頂へ!
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20 いざ、島へ!

 〈キラキラ花〉採取の依頼を終えて数日後、再び冒険者ギルドにタルトからの言伝が来ていた。依頼報酬の一部でもあった、〈キラキラ花〉で作ったポーションの納品の件だ。


 しかし受付嬢は私たちにポーションを差し出しながら、ちょっと困った顔をしていた。


「こちらが報酬のポーションなんですけれど、当ギルドではなんのポーションか分からなくてですね……なので、ギルドとしては安全性を保証できないと言いますか、その、使わない方がいいのではないかなと思うわけです」


 受付嬢の言葉に、私は「なるほど」と苦笑する。

 タルトからもらったポーションは、瓶を軽くゆすると中の液体が虹色に輝いているのがわかった。


 ……確かに、これは飲むのに少し勇気がいるかもしれないね。


「皆さんはSランクのパーティですから、私の助言なんて必要ないかもしれませんが……。一応、そのことだけは心に留めておいてください」

「わかりました。ありがとうございます」


 だけど私は鑑定したので、このポーションのことを知っている。



 〈変身ポーション:ケットシー〉

 このポーションを飲むと、ケットシーの姿になる。

 効果時間:1時間。



 ***


『ふい、やっとここに戻ってこれたのう』


 私たちは再び島のすぐ近くまで、ドラゴンで飛んでやってきた。今はじいやの背に乗って渦潮を越え、島の目の前まで来ている。


『儂に力があれば、お主たちを置いて島へ帰ることもできたろうにの……』

「ちょっとちょっと、じいやさん。それは酷いんじゃないですか? 私たちはお姫様を保護していたんですからね」

『ほほ、わかっとるわかっとる。島に着いたら褒美を取らせよう』


 せっかく島へ行く道筋ができたのに、おいて行かれたらたまったものではない。私はそっとじいやにウンディーネを助けたこともアピールし直しておいた。


「さてと。変身ポーションは一つしかないけど、誰が飲もうか?」


 そう、私たちの手元に届いた〈変身ポーション:ケットシー〉は一本だけ。

 どうやら〈キラキラ花〉一輪ではポーション一つしか作れなかったようだ。ただ、同じパーティメンバーであれば、一人がケットシーに変身し、結界を破って中に入るとき同行できるとタルトの手紙には書いてあった。なので、誰か一人がケットシーになり、島に入ってしまえばこちらのものということだ。


 私は支援だし、ココアは後衛職。ケントかルルのどちらかがよいだろうと考える。私が二人を見ると、ルルイエはいつもの無表情。だけどケントはどこかワクワクしている様子だ。


 ……ケントはケットシーになってみたそう。そんな機会、そうそうないもんね。


 やはり変身してもらうならケントがよさそうだ。それに正直なことを言うと、ルルイエは闇の女神でもある。一時的な変身とはいえ、ケットシーに姿を変えてしまって世界的な規模で不都合が起きてしまったら大問題だ。


「それじゃあケント、お願いしてもいい?」

「おう! ケットシーに変身して、この結界に一撃を入れたらいいんだろ? 任せとけ!」


 ……猫ケントとか、なんだかちょっと楽しみかも。


 私がそう考えていると、ココアもワクワクしているようだ。もしもふもふになったら、ココアの抱き枕になっちゃうかもしれないね。そんな二人を想像して、私はふふっと笑う。


「不思議な虹色だな、このポーション。……不味くないことだけを祈るしかないか」


 ケントは一気にポーションを呷り、飲み干した。

 すると、ケントの体が虹色に輝きながらみるみるうちに縮んでいき、私の腰より少し高いくらいの背丈のケットシー姿になった。

 もふもふで、茶トラのケットシーだ。


「「可愛い!!」」


 私とココアが思わず声をあげたのも仕方がないだろう。


「まさか、ケントがこんなに可愛くなるなんて!」

「お、おい! やめろってにゃ!」


 ココアがぎゅっとケントを抱きしめて、早速もふもふしている。


 ……ああ、私ももふもふしたい。


 だけど、私がケントをもふもふしたら、ココアがやきもちを焼いてしまうに違いない。この二人、くっつきそうでまだくっついていない。いい加減くっついてしまえばいいのにと私は密かに思っていたりする。


 ……私も島に着いたら、タルトにもふもふさせてもらおうかな?


 なんて考えてしまうほどにはうらやまけしからん。


「おいこらにゃ、ココア! 離せにゃ!」

「ケント、口調に「にゃ」がついてる」

「わざとじゃねーにゃ! 勝手にこうなっちまうんだにゃ!!」


 可愛さ百倍増しだ。


「ココア、俺は今から結界を破るっていう大仕事があるんだからにゃ!」

「そうだね。ごめんごめん、頑張って!」

「まったく~にゃ~」


 ケットシーに変身できる時間は限られているので、ココアも渋々ながらすぐにケントを離した。

 ケントは、腰の剣に手をかけ、ゆっくり深呼吸して気合を入れている。スキルを使わないケント自身が持つ純粋な力。


『す~にゃ~、す~にゃ~』


 ゆっくりゆっくり呼吸を繰り返し、ここぞというタイミングでケントが剣を振り上げ結界に一撃を入れる。


「うおおおおおにゃっ!」


 しかし、結界は強固だ。さすが力を示すためのものでもある、というところだろうか。振り下ろしたケントの剣は下まで届かない。


 ……このままだと、結界にはじかれる?


 私は無理かもしれないと焦りを覚えたけれど、ケントは前衛としての意地を見せてくれた。雄たけびをあげ、さらに力を振り絞る。


「にゃあああああああああああっ!!」


 そして結界を打ち破った。

 キラキラ輝く光の粒子が舞って、結界にわずかな穴が開いた。


『今じゃ、そこから入るんじゃ!』


 じいやが一気に海を進み、結界の中に飛び込んだ。すると一瞬で霧が晴れ、目の前の島の中心部に――それは巨大な世界樹が姿を現した。

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>この二人、くっつきそうでまだくっついていない。いい加減くっついてしまえばいいのにと私は密かに思っていたりする もしかしたら・・・シャロンは自分が"自由恋愛”で"くっつく”ことを最初から諦めているの…
>この二人、くっつきそうでまだくっついていない。いい加減くっついてしまえばいいのにと私は密かに思っていたりする そう言うシャロンには"お相手”が現われないのでしょうか?(汗。 ティアラローズにアクア…
>「まさか、ケントがこんなに可愛くなるなんて!」 >ココアがぎゅっとケントを抱きしめて、早速もふもふしている ココア、凄い食い付きようですね(笑。 ココア、ケントシーをモフる目的で、一人で〈きらめき…
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