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回復職の悪役令嬢  作者: ぷにちゃん
エピソード1 私だけが転職方法を知っている
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15 〈ゴースト〉の倒し方

 出てきた〈ゴースト〉は五匹。物理攻撃が効かないモンスターだ。ゆらゆら揺れるように浮かんでいて、布を被ったような外見に、鎌を手にしている。倒せなくはないけれど、そこそこ厄介な相手と言っていいだろう。

 ダメージを与えるには、魔法か属性がついた武器を使うしかない。フレイが持つ〈聖剣グラシオス〉は属性が付与されていないので、攻撃が通らない。けれど、先ほどの宝箱から出た〈スティレット:火〉ならばダメージを与えることができる。


「〈身体強化〉、〈持続的な回復(リジェネレーション)〉!」

「いくぞっ!」

「あっ……」


 私が支援をするやいなや、フレイは斬りつけるため地面を蹴った。どうやら、〈ゴースト〉の特性を知らないみたいだ。

 フレイの剣は〈ゴースト〉の体をするりとすり抜け、宙を斬った。しかし同時に繰り出された〈ゴースト〉の鎌はフレイの腕をかする。


「――っ!?」

「え、フレイの攻撃が効いてない!?」


 フレイとリーナは驚き、慌てて〈ゴースト〉から距離を取って後ろに下がった。

 〈ゴースト〉の攻撃はこちらに通るので、それもまた混乱する要因の一つだろう。そもそも、〈ゴースト〉などのモンスターはあまり種類がおらず、珍しい部類に入るのだ。


 ――だけど、戦闘方法がわかれば問題なく対処できるはず!


 私は戸惑うリーナとルーナを見て、声を張り上げる。


「リーナ! さっきの属性短剣で攻撃を受け止めて! ルーナは魔法で攻撃を!」

「さっきの短剣で!? ……っ、オーケー!」

「え!? わ、わかったわ!」


 二人はすぐに行動を起こし、リーナは素早い動きで〈ゴースト〉に向かっていった。その速さはおそらく、〈チェイサー〉のパッシブスキル〈素早さ上昇〉だろう。ガキンと音がして、見事に鎌を防いでみせた。


「炎よ、我に力を! 〈ファイアーボール〉!」


 ルーナが力強い声で叫ぶと、〈ゴースト〉に魔法が命中した。


「! 魔法だと効くということ……? それなら――幾千の凍てつく刃よ、我が声で舞い敵を殲滅せよ! 〈絶対零度の吹雪(ブリザード)〉!!」


 ――範囲攻撃!

 ルーナの使った魔法は、氷属性の中級程度のスキルだ。術者が意図した方向一〇メートルほどに吹雪を起こし、敵にダメージを与えることができる。

 この世界の人は〈冒険の腕輪〉を持っていないからスキルの取得が自動のはずなのに、さすがは勇者パーティのメンバーだ。


 リーナも属性攻撃ならば敵に攻撃が通ることがわかったので、短剣で攻撃を続けている。すぐに、一匹倒した。残るは三匹だ。


「私はどうすればいいんだ!? 属性がついた武器なんて持ってないぞ!?」


 フレイがぐぬぬと頭を抱えて、軽やかに戦うリーナを見ている。その姿は生き生きしているので、自分も混ざりたいのだろう。

 ――〈勇者〉のスキルに属性スキルがあればいいんだけど、どうなんだろう?

 残念なことに、ゲームでは〈勇者〉に転職できたプレイヤーはいなかったのだ。いや、もしかしたらひっそり転職していて存在していたかもしれないけれど……実はそこそこの廃ゲーマーだった私が知らないので、その可能性は限りなく低いと思う。ちなみにユニーク職業(ジョブ)とは知り合いで、よくパーティを組んでいたりもする。


 と、私がなんやかんや考えていたら、いつの間にか〈ゴースト〉は倒されていた。さすがリーナとルーナ、強いし双子だけあって連携もバッチリでした!

 フレイが〈ゴースト〉のドロップアイテム〈宝玉の欠片〉を拾い、しょんぼり顔でこっちに歩いてきた。よほど戦いたかったらしい。


「助かった、リーナ、ルーナ。私じゃ手も足も出なかった……」

「そのお礼は、魔法を使うように言ってくれたシャロンに。でなければ、どうしようか迷って動けていなかったと思いますから」


 お礼を言う相手を間違えていますよ? と、フレイがルーナに言われている。でも、私は簡単な支援をして助言しただけで、実際に戦ったのは二人だ。


「大袈裟ですよ」


 私が苦笑すると、しかしフレイは首を振った。


「そんなことはないぞ。情報も立派な戦力の一つだ。というか、私が油断したせいだな……到着したと思って、気を抜いてしまった。すまなかった!」


 フレイはバッと頭を下げて謝罪の言葉を口にした。私の指示をちゃんと聞いていれば回避できたので、落ち込んでいるようだ。


「このパーティだったらどんなモンスターが出てきても倒せると思うので、大丈夫ですよ」

「だが、ここは私たちにとっては馴染のないダンジョンだ。注意するに越したことはない」


 ――ああ、そうか。

 私はフレイたちの実力を知っているので、〈ゴースト〉が出て来ても問題ないことはわかっている。けれど、フレイたちにとっては初めてのダンジョンで、さらにゲームと違って死んだらそれまでなのだ。

 私、この世界のことを少し舐めていたのかもしれない。


「……うん。でも、私が出発前にきちんと説明すべきだったと思う。ごめんなさい」

「いや、私もちゃんと確認すればよかった。次から気をつけよう」

「うん」


 私は頷いて、〈エルンゴアの楽園〉に関する情報を説明する。


「ここから先は、もう大丈夫ですよ。私が知る限り罠やギミックはありませんから、安全に過ごすことができます。ダンジョンですけど、亡くなったエルンゴアが住んでいた屋敷なので中は普通の住居です。休む場所もありますよ」

「そうか……!」


 私の言葉に、フレイは嬉しそうだ。

 ただ――罠はないけれど、アイテムなどを手に入れる隠しギミックはいくつか存在しているが。さすがにまだ発見されていない宝箱の情報を知っていたら怪しさ爆発なので、その点は黙秘することにした。

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