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回復職の悪役令嬢  作者: ぷにちゃん
エピソード5 悪役令嬢はもう終わりです!
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12 ただいま!

 うきうきのルーナが先頭に乗り、その後ろにケント、ミオが乗り、蛇は洞窟の出口に向けて出発していった。


「……蛇に乗らなきゃいけないなら、わたしに勇者パーティは無理ですにゃ……」

「そういえば猫って蛇が苦手だったよね。でも〈スネイル〉とかは普通に倒してたし、案外平気なものなの?」


 タルトが若干青ざめていたので聞いてみると、「小さいのは大丈夫ですにゃ」と返ってきた。


「〈闇色の大蛇〉も怖かったですけど、あれは倒すべきボスですにゃ。だから平気なんですにゃ。でも、普通の大きな蛇はあんまり得意じゃないですにゃ……」

「モンスターはいいけど普通の大きな蛇は嫌ってことだね」


 なるほど了解です! 一緒に旅をする上で、相手の苦手なものを知っておくことは大切だ。モンスターの蛇が問題ないのであれば、無理に克服する必要もないだろう。


「じゃあ、あの蛇の乗り物はうちのパーティには無理だね。ケントには申し訳ないけど……」


 私はそう言いつつココアへ視線を向けると、大きく頷いていた。


「私もできれば蛇は遠慮願いたいです。得意ではないというか……まあ…………苦手です……」

「わたしは大丈夫」


 小さくなるココアと、まったく問題ないと告げるルルイエ。とりあえず絶対ほしい! と言われなかったことにほっと胸を撫で下ろす。


「装備をケントが使ってるし、フレイたちのパーティの取り分にしてもらうのがよさそうかな?」

「あ、それはいいですね! 賛成です」


 ココアがすぐさま声をあげると、フレイとリーナが驚いた。


「これはかなりレアな召喚騎乗だぞ。そんな簡単に決めていいのか?」

「そうだよ。正直、私は蛇嫌いだし……」


 驚きつつも期待のこもった目をしているフレイと、嫌だと必死で首を振っているリーナが対照的すぎるよ。


「私は売ってお金に換えて分配……っていうかたちでもいいけど、どうしよう? ルーナはほしがりそうだよね」

「それ! 絶対にほしいって言いそう……。うう、どうやって説得しよう……」


 リーナが頭を抱えて悩みだしてしまった。まあ、ルーナに渡しても問題はないのだけれど……パーティの戦力が上がるものではないから、ちょっと微妙な感じになってしまうのかもしれない。

 ……難しいけれど、そこはフレイたちで相談をしてもらうしかないね。


「それじゃあ、私たちも行こうか。フレイ、前衛よろしくね」

「ああ、任せておけ」


 私たちはフレイを先頭にして、ルルイエ、タルト、ココア、私、リーナの順で出口を目指した。



 ***



 ドラゴンが風を切り飛んでいく道中で、フレイパーティは会議を繰り広げている。


「どうして!? 五人以上乗れる移動手段なんて、すごいじゃない! しかも、馬が走るより全然速いのよ。パーティで使わないなんて、そんなのもったいないわよ!」

「でも、蛇だよ!? 嫌だよ!!」


 ……いや、会議というより口論かな?


 蛇がほしいルーナVS絶対やだやだリーナのバトルが勃発なうです。


「まあ、私たちは急いでないからどうするかゆっくり考えてみてよ」

「俺は蛇ありだと思うんだけどなぁ」


 私が笑いながら告げると、ケントがルーナの肩を持っている。しかしココアが嫌がっているからか、うちのパーティで使おうと主張することはなかった。




 しばらく飛んでいると、街が目に入った。私の生まれ故郷、〈ファーブルム王国〉の〈王都ブルーム〉だ。花が名産で、街中は色鮮やかな花がたくさん飾ってある、穏やかな気候の国――。


 ……ついに到着してしまったか。

 私はため息をつきたくなるのを堪えつつ、街を指さしてみんなに呼びかける。


「ファーブルムが見えたよ!」

「「「おおお~~!」」」

「わー、なんだか綺麗な街ですにゃ!」


 フレイパーティの蛇どうする問題も一度小休止のようで、街を見て「カラフル!」「花が咲いてるらしいぞ」などと話している。


「シャロンの実家があるんだったな」

「うん。ファーブルムに滞在中は遠慮せずに泊まっていってよ」

「それは助かる!」

「みんなならいつでも大歓迎だよ~」


 私がウェルカムムードを見せると、フレイは「楽しみだ!」とウキウキし始めた。リーナは「どんな家だろう? やっぱり花が多いのかな?」なんて言っている。確かに庭園はしっかり手入れしているから、華やかだね。


「この数のドラゴンで街に近づくと驚かせちゃうから、手前からは歩いていこうか」


 ゆっくり地上に下りた私たちは、のんびり歩きながらブルームへ到着した。




「花の都とも言われてる〈王都ブルーム〉! とっても素敵ですにゃ!」


 街に入ってすぐ、タルトが目を輝かせた。その横ではココアも頷いていて、「優しい感じがするよね」と言っている。


「前にケントの転職できたけど、そんなにゆっくりはできなかったから……。今回はめいっぱい観光したいな。できるなら、ほかの街にも行ってみたいかも」

「それはいいですにゃ! ゲートも登録したら、いつでもまた行けますにゃ」

「名案!」


 タルトとココアが二人で盛り上がっているゲート登録の旅には、ぜひ混ぜてほしい。次の目標は、すべての街のゲートを登録することだね。私はいろいろな場所の景色をすぐ堪能しに行けるし、タルトは〈製薬〉の材料集めにちょうどいい。


「ゲートの旅だね。ファーブルムには、ほかに〈山間の村トーラス〉〈漁師の村〉〈花の街チューリア〉〈水の街リューレン〉〈花市場〉があるよ。それと、国境付近に〈旅人の宿〉と〈くつろぎの宿〉があるね」


 〈旅人の宿〉は私が〈エレンツィ神聖国〉に行く際に立ち寄った場所で、〈くつろぎの宿〉は〈ローラルダイト共和国〉に行く際に立ち寄る場所だ。


「お花関連が多いですにゃ」

「そうだね。花が名産だから、花のアクセサリーとか、そういうのも売ってるよ。もっと花がみたければ、チューリアに行くと圧巻! っていうほど花が見られるよ」

「わああ、楽しみですにゃ!」


 チューリアは花がたくさんある美しい街で、療養に訪れる人も多いと聞く。新しい品種の花の開発なども行っていて、研究が盛んな街だ。


「さて……観光もいいけど、私の家に行こうか。〈鞄〉があるから置く荷物がそうあるわけじゃないけど、いったん落ち着いて話もしよう」

「わかった。世話になる」

「「「お世話になります」」」

「お世話になりますにゃ」


 フレイが頷くと、それに続いて全員が頭を下げた。



 ***



 時間にして数ヶ月ほどだったけれど、随分と自分の家を懐かしく感じる。〈王都ブルーム〉はまったく変わっておらず、屋敷も私が国外追放を言い渡されたときと同じだ。

 ……イグナシア殿下が嫌いなだけで、家やこの国が嫌いなわけではないからね。


「ここが私の家だよ。みんな、ゆっくりしていってね」

「「「…………」」」


 私が門の前に立ってそう告げると、全員がぽかんと無言になった。


「お、お師匠さまの家、大きいですにゃ……」

「一応、公爵家だからね。王城を除けば、この街で一番大きいかも?」

「にゃあぁ……」


 事前に私の身分については説明していたのだけれど、想像よりも屋敷が立派すぎたようだ。私は苦笑しつつ、「どうぞ」と門を開ける。


「花園があって、その向こうにあるのが屋敷だよ」


 私が庭の説明をしつつ歩いていると、玄関が開いて使用人が出てきた。私が帰ることは伝えていたけれど、日時は伝えていなかった。使用人は涙目になっていて、「シャーロット様!!」と声をあげた。さらに何人もの使用人が出てきて、全員が涙目になっている。……久しぶりに見たみんなの顔に、私の目頭も熱くなる。


 ……ああやばい、泣いちゃいそう。


「――ただいま!」

「「「おかえりなさいませっ、シャーロット様……!!」」」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ところで、家を出る時は、〈闇の魔法師〉だったシャロンが、現在は〈聖女〉であることは、家族には伝わっているのでしょうか?。 ツィレで再会したルーディットに伝え、彼から両親にも伝わっている…
[一言] >「お、お師匠さまの家、大きいですにゃ……」 >「一応、公爵家だからね。王城を除けば、この街で一番大きいかも?」 >「にゃあぁ……」 タルト・・・将来ルーディットと結婚したら、キミがこのお…
[一言] 更新お疲れ様です。 移動用の蛇にウキウキ先頭ポジのルーナさんw ルーナのハイテンション振りに対してリーナは涙目。 いつも元気なリーナの方が蛇が苦手というのはちょっと意外でしたw フレイは蛇…
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