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回復職の悪役令嬢  作者: ぷにちゃん
エピソード5 悪役令嬢はもう終わりです!
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6 〈リーフイーグル〉との戦い

 バサバサッと力強く風を切る〈リーフイーグル〉に、思わずみんなの顔が引きつっている。だけどそれも仕方のないことで。なんせ〈リーフイーグル〉は、でかいのだ。


「なっ、んだこの……巨体!! 〈挑発〉!!」


 ケントがすぐさまスキルを使い、〈リーフイーグル〉の敵意を自分に集中させる。そのまま攻撃を防御しつつ、「こっちだ!」と〈リーフイーグル〉を塔の中心部へと誘導する。塔の端で戦闘するのは危険なので、いい判断だ。


「〈聖女の加護〉〈守護の光〉〈月の光〉! 回復は私が担当するから、どんどん攻撃しちゃって! 〈リーフイーグル〉は結構強いから、早く倒さないと大変だよ!」

「「「応!!」」」

「にゃっ!」


 私の言葉に全員が返事をし、戦闘開始だ。


 〈リーフイーグル〉は鷲型のモンスターだ。ただし羽の部分が植物の葉でできていて、食べるものは木の実だけという草食モンスターだったりする。大きく迫力はあるが、攻撃力はそこまで高くない。その代わり素早さが高いので、攻撃を当てるのが少し厄介だろうか。


「氷の息吹よ、我がためにその姿を変えて敵を撃て――〈氷柱の矢(アイシクルアロー)〉!」

「ルーナ! よし、これで先制――何!?」


 ルーナが使った魔法を、〈リーフイーグル〉はいとも簡単に避けてしまった。そう、これが〈リーフイーグル〉の厄介なところだ。フレイは驚き、しかしすぐ気を持ち直す。剣を構えて、ぐっと地面を蹴った。


「やああぁぁぁっ!」

『クィー!』


 しかし〈リーフイーグル〉は、フレイの剣に斬られることを恐れて空高く飛び上がった。こちらの攻撃に対応した回避手段を使ってくるので、モンスターの中では知能がある方かもしれない。


「なっ、飛んだ!」

「フレイ、わたくしに任せてください!!」


 杖を構えたミオが一歩前に出て、キッと〈リーフイーグル〉を睨みつけた。巫女の彼女は弱体化(デバフ)スキルも多いので、こういった戦闘では役に立つ。


「空を飛んでいられるのも、今のうちよ! 〈沼落ち〉!!」


 ミオがスキルを使うと、〈リーフイーグル〉の足元の空間がゆがみ、黒い沼のようなものが出現した。そしてそれが〈リーフイーグル〉を包み込むと、バタバタと羽を動かし抗うも地面に落ちてきた。

 ……空中にいる敵に使うと効果的だけど、ちょっとだけ罪悪感があるね。


 みんなが〈リーフイーグル〉をフルボッコにしているのを見つつ、ときおり回復し、後少しで倒せる――というところで、もう一匹やってきた。


『クイィ!』

「まさかの二体目!? 〈挑発〉!!」


 ケントのスキルを受けた二匹目は、鋭い足の爪でケントに襲いかかる。一匹目が瀕死状態になっているので、二匹目の気が立っているのがわかる。


「だから早く倒したかったんだけど、仕方ないか……」


 私がぼそりと呟くと、ココアが「どういうことなの!?」と魔法を使いつつこちらを見た。もしかしたら、何か攻略法を私が知っていると思ったのかもしれない。


 残念ながら、そんなことはない。


「私たちのパーティ、フレイたちのパーティ、それぞれクエストを受けたでしょ? だからそれぞれ一匹ずついるんだよ」

「「「えええぇっ」」」

「あ、なるほどですにゃ!」

「そういうこと……」


 みんなが驚くなか、タルトは手を打って納得している。ルルイエも頷き、「それなら二匹とも倒せば解決」と言ってフレイに向かって走り出した。


「フレイ」

「!? ……っ、わかった!」


 え、いったい何がわかったの?

 どうやら戦闘中の二人にしかわからない何かがあったのだろう。フレイはすぐさま腰を落として、体の前で手を組んでみせた。そこにルルイエが勢いよく足をかけると、フレイはぐっと力を入れてルルイエを空に押し上げた。ルルイエは勢いで高くジャンプし、〈リーフイーグル〉より高い位置につく。


「おおっ!」


 人間、脚力だけであんなに高く跳べるのか。……いや、ルルイエは人間じゃなかったね。たぶん女神だった。たぶんね。


「――闇より深き混沌よ、我の命に応えよ。〈深淵より深き闇(ダークブレス)〉」


 ルルイエがスキルを使った瞬間、空間がゆがんでそこから何本もの黒い光が降り注いで〈リーフイーグル〉を貫いた。


「これは……いったい、なんだ?」

「わたくしが使うスキルより、ずっとずっと恐ろしさを感じます……!」


 フレイとミオが目を見開いてルルイエを見ているが、本人はけろりとしている。〈リーフイーグル〉が光の粒子になって消え、ルルイエはこっちにむかってブイサインをしてきた。可愛いかよ。


「倒しましたにゃ!」


 タルトが歓喜の声をあげると、私たちの前にクエストウィンドウが現れて、クエストの達成を告げた。




「ああ、〈リーフイーグル〉を討伐していただけるとは……。なんと礼を言えばいいか……」

「本当にありがとうございます」


 管理人と世話係が揃って頭を下げる。これで〈大きな桃〉をモンスターに食べられてしまうこともなく、無事に収穫できると喜んでくれた。


「よかったですにゃ」

「ん」


 タルトとルルイエが嬉しそうにしていると、管理人が「お礼と言ってはなんですが……」と報酬の話にはいった。


「この〈大きな桃〉はとても貴重なものですが、みなさまにでしたらお譲りさせていただきます。必要なときは、いつでも声をかけてください」

「本当ですにゃ!? ありがとうですにゃ! さっそくほしいですにゃ~!」

「わたしも食べたい」


 すぐに購入の意思を伝えると、管理人は「ありがとうございます」と微笑んだ。


「一つ、一〇万リズです」

「……にゃっ!?」


 値段を聞いたタルトが、ぴゃっとその場で飛び上がった。わかる、桃一つに一〇万リズって高いよね……。ただ、この〈大きな桃〉はいいこと尽くしなのだ。今まではゲームだったから味は知らないけれど、食べると体力、マナが全回復。さらに一〇分間、体力とマナが三〇%アップする。

 いい値段ではあるけれど、常用せずたまに使う分には問題ない。


 タルトが顔色を悪くして、私のところにやってきた。


「どどど、どうしますにゃ?」

「もちろん買うよ! 私は自分の分のストックを一〇個と……実家へのお土産は三個かな?」


 私は悩んでいるタルトの横で、しっかり〈大きな桃〉を購入する。支援職として、ピンチになる場面は絶対にある。この桃は、支援職にとって生命線の役割をしてくれる。

 ……ゲームではそうだったんだけど、現実になった今は……あの桃を食べなきゃいけないなら話が変わってくるけど……ひとまず考えないことにした。


「俺は五個買うぞ!」

「私も!」


 ケントとココアも購入し、ルルイエは「買えるだけ!」と言ったので私が一〇個に留めさせるなどした。

 フレイたちはそれぞれ一つずつ購入し、タルトは考えた末に三個購入していた。



 ***



 私たちは〈桃源郷〉の宿に数日滞在することにした。今は宿の一室に集まって、今後の話をしている。


「このままファーブルムに行くんだったな? ここからどうやって行くか、道はわかっているのか?」

「〈桃源郷〉を知ったのも初めてだし、地理がさっぱりわからないわよ」


 フレイとリーナの言葉に、私はどうやってファーブルムに行くか説明していく。


「ここから南に進んでいくと、ファーブルムに続いてるんだ。途中でダンジョン〈大蛇の洞窟〉を抜けた先が、ファーブルムなの」

「――! またダンジョンを通るのか」

「うん。そこでレベルも上げたいと思ってるんだ」


 ダンジョンという言葉に、フレイの目がキラリと輝いた。フレイたちは〈冒険の腕輪〉を手に入れ、今までとは桁違いに強くなった。新たな敵と戦いたくて仕方がないのかもしれない。ケントもワクワクしているようだ。


「レベル上げをしたら、ルーナとリーナ、ミオは覚醒職へ転職っていう一大イベントも待ってるもんね」

「「「えっ!?」」」


 ルーナ、リーナ、ミオが揃って声をあげた。


「三人には頑張って覚醒職になってもらって、一緒にダンジョンに行ってほしいからね……!」


 まだ先の話かもしれないけれど、私はみんなでIDへ行きさらなるレベルアップを考えていることを熱く語った。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり呪文には詠唱がなくては!(←厨二病)
[一言] パワレベするって意味で悪役になっとらんか?
[一言] 更新お疲れ様です。 二パーティー分で二羽のリーフイーグルを倒して、大きな桃の購入権をゲット。一個十万リズ也。 なかなかいいお値段で・・・HPとМPの全回復に十分間の体力とマナの三十%アップ…
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