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回復職の悪役令嬢  作者: ぷにちゃん
エピソード1 私だけが転職方法を知っている
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11 薬草採取

 はてさて……私はどういうことだろうと頭を悩ませる。スキルを複数覚えることは、なんら珍しいことではない。ゲーム時代のNPCだって、複数のスキルを覚えていたからだ。

 よくわかっていなそうな私を見かねたのか、ココアが説明をしてくれた。


「えぇと……最初は、同じスキルのレベルがマックスまで上がっていくんです。そのあと、ほかのスキルを覚える……っていうのが普通で……」

「だいたい、レベル6くらいで初めてスキルを覚えるんだ」

「なるほど……?」


 私は目をつぶって、どういうことだと頭の中を整理する。ココアとケントの話が本当ならば、スキルを自分で選んで覚えられない、ということになる。そんな不便なことがあるだろうか……?

 でも、そうか……私たちは〈冒険の腕輪〉をつかってスキルを獲得してたけど、ほかの人はそれがないから自動でスキルを取得しちゃってるんだ……!

 おそらく、スキルポイントをためて置ける上限が5で、以降は勝手に割り振られるのだろう。まさか〈冒険の腕輪〉を作らないことに、こんなデメリットがあったなんて……!! ちゃんと最初に作っておいてよかった。

 ほっと額の汗を拭う。


「ま、レベルを上げれば新しいスキルを覚えるから、結果はあんまり変わらないんだけどな」

「私も今は〈ファイアーボール〉しか使えないけど、すぐ次の属性スキルを使えるようになってみせるよ!」


 すごいことだと言いつつも、二人はそこまで気にしていないようだ。変に追及されても説明に困ってしまったので、ありがたい。

 ――〈冒険の腕輪〉は、現実になったこの世界では、すごく意味のあるものになったみたいだね。

 自分が持っているのはゲーム時代の情報なので、この世界の情報をきちんと集めつつ比べた方がいいかもしれない。




「ココア、シャロン、〈薬草〉があったぞ!」

「本当!? って、ケントこれ……〈毒草〉だよ」

「え!?」


 ウルフの討伐が終わったので、私たちは採取依頼の〈薬草〉を探している。ケントは〈薬草〉と〈毒草〉の見分けが上手くできないようで、大苦戦中だ。


「これが〈毒草〉? 〈薬草〉じゃないのか?」

「ケントは昔から剣の素振りばっかりで、山菜取りも採取もしなかったんだから……。〈薬草〉は丸みを帯びた葉っぱで、〈毒草〉はギザギザしてて葉の裏がちょっと濃い色なんだよ」


 見分けのついてないらしいケントに、ココアがお小言を言いながら教えている。

 正直、私もあまり詳しい特徴は知らなかったので助かってしまった。ゲームアイテムとして見たことはあったけれど、実際に触るのは初めてだ。なんだか楽しい。


 それにしても……。


「二人は仲がいいね」

「私とケントは幼馴染なの」

「え、そうだったんだ」


 話を聞くと、二人は〈牧場の村〉の出身らしい。〈聖都ツィレ〉の三つ下にある村で、私がこの国に来るときも通ってきた。動物がたくさんいるので、また行きたいと思っていた場所だ。


「俺が一五で、ココアが一四。俺が冒険者になるって村を飛び出したんだけど、ついてきたんだ」

「ちょ、ケントだけだと絶対に無理だと思ったから! 現に今だって、〈薬草〉も採取できなかったじゃない!」

「仲良しだねぇ」

「「よくないよ!」」

「わあ、息ピッタリ」


 思わず拍手すると、顔を赤くして「「そんなことない!」」とこれまた息ピッタリのお返事をいただいた。

 最初のころより素が出てきたであろう二人に、私は笑う。冒険中の、こういったちょっとしたやりとりも大好きだ。


「あはは」

「もう、シャロンってば……あ、〈薬草〉発見!」

「くそ、俺だって――って、〈ウルフ〉だ!」


 〈薬草〉と〈ウルフ〉のダブルだ。けれど、連携にも慣れてきた私たちに〈ウルフ〉はもう敵じゃない。


「よーし、行くよ! 〈身体強化〉!」

「炎よ、我に力を! 〈ファイアーボール〉!」

「俺だって剣の腕を見せてやる!!」


 私たちはワイワイしながら、〈ウルフ〉討伐の依頼と、〈薬草採取〉の依頼を無事に達成することができた。初めてのパーティにしては、かなりいいと思う。

 私のレベルは12まで上がった。



 ***



 歩いて街まで戻ると、門のところがざわついていた。人が多いのはいつものことだけれど、騒ぎが起きるようなことはそうそうない。

 私たちがなんだろうと顔を見合わせていると、周囲の人たちの話声が聞こえてきた。


「なんでも、勇者パーティが来てるらしいぞ」

「え、隣国の王子様が来てるって話じゃないのか?」

「どっちの情報が正しいんだ!?」


 ――え。

 隣国の王子様といえば……私に『笑いもしないつまらない女は世界平和でも祈ってろ』と言った奴のことだろうか? せっかく冒険をしていたというのに、楽しい時間に水を差さないでほしい。私の気持ちは一気に急降下した。

 というか、イグナシア殿下にとってここは敵国じゃないの!? という疑問が浮かぶ。だというのに訪問するとは、いったいどういうことなのか。ああ、頭が痛い……。


「シャロン、どうしたの?」

「あ、うぅん。依頼の報告に行かなきゃね」

「うんっ!」


 元婚約者のことは聞かなかったことにして、心配してくれたココアたちと一緒に冒険者ギルドへ向かった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「私だけが腕輪の使い方&有用性を知っている」 って感じなのかな 現地の人的には只の御守り程度の認識だったから廃れた?
[気になる点] 他の人に腕輪作成勧めたりはしないのか、最初じゃなきゃだめとかって駆け出しでも後からは使えなくなったりするんだろうか。
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