47 レベル1のシャロン
本日4巻の発売日です。
どうぞよろしくお願いいたします!
7時、12時、19時の3回更新です。
リアズは、ほかの職に転職すると、レベルが1に戻る。これは仕様なので、どうしようもないことだ。私が〈闇の魔法師〉から〈癒し手〉になったときも、レベルが1に戻った。
……あれからそんなに経ってないのに、もう懐かしく感じるね。
ということで、私はレベル上げにやってきた。
メンバーは、私、ケント、ココア、リロイだ。ケントは壁役で、ココアはもしものときの殲滅担当、リロイはもちろん支援担当だ。私のスキルはまだ全然だし、そもそも〈聖女〉にどんなスキルがあるのかも未知数だからね。
ほかのメンバーは宿でお留守番をしてくれている。ちなみに、タルトには〈スキルリセットポーション〉を泣きながらもたくさんお願いしておきました。飲みたくない。
最初のレベル上げは、ツィレを南にでてすぐのフィールド。ここで〈プルル〉や〈花ウサギ〉を倒してレベル10くらいまで上げていくのだ。
「〈身体強化〉〈攻撃力強化〉〈防御力強化〉〈女神の守護〉〈女神の一撃〉」
「〈挑発〉!!」
「〈至福のひと時〉」
「わあ、ありがとう~!」
そして私は一気に〈咆哮ポーション〉を飲み干す。これで攻撃力アップだ。フル支援でのレベル上げ、楽しい~!
〈プルル〉を杖で殴ると――一撃! 〈花ウサギ〉も杖で殴って――一撃!
「た~のし~いっ!」
「……こんな反則みたいなレベル上げがあるのかよ……」
ケントが呆れつつも〈挑発〉をしてくれるが、一撃で倒してしまうので今はあまり意味がない。ひとまず殴り続けて、15レベルになったところで一度ストップ。
「ちょっとスキルを見てみるね」
「おう」
「〈聖女〉のスキル、興味深いですね……」
ケントがモンスターを釣るのをやめ、ココアも「了解!」と返事をした。リロイはスキルが気になるようで、私のところにやってきた。
どれどれ……?
「んー、〈聖女〉のスキルではあるけど、内容は〈癒し手〉と重複してるものも多いね。上位版って感じかな?」
とはいえ、育ちさえしてしまえば比べ物にならないくらい強くなるだろうけど……。
今取得できるのは、いわゆる〈ヒール〉の効果を持ち、さらに周囲まで少し回復してくれる〈癒しの光〉、次の攻撃力が3倍になる〈必殺の光〉、強力なバリアを張る〈守護の光〉、身体能力を大幅にアップさせる〈栄光の光〉、聖属性で攻撃する〈裁き〉だ。
さすがは〈聖女〉、強いね……!
ほかのスキルに関しては、前提スキルを取得していけば取ることができるようになるだろう。今はとりあえずレベル上げをしたいので、〈裁き〉を取得した。
「よーし、次に行きましょう!」
「お、スキル取れたのか?」
「うん。今やってみるね!」
スキルの検証はとても大事だ。私はそれをティティアのときに学んだので、もう同じような失敗はしないのだ。
私は〈プルル〉の前に立って、高らかにスキルを唱える。
「――〈裁き〉!」
すると、空が一瞬キラリと光り、気づいたときには〈プルル〉に聖剣が突き刺さっていた。そしてふっと消えると、〈プルル〉も光の粒子になって消えた。残ったのはドロップアイテムの〈ぷるぷるゼリー〉だけだ。
思わずぽかんとしてしまう。
「わあぁぁ! いい感じ!」
「うわ……威力、えぐっ」
「……〈聖女〉ってなんだろうね」
「まあ、シャロンですからね……」
私はスキルの威力に喜んだのだけど、三人は若干引いているような気がする。
「そもそも女神フローディアと天使があんな感じだったのに、〈聖女〉に過度な期待をするのは駄目だと思う!」
「「「確かに」」」
女神フローディアのおかげで全員の意見が一致した。
***
「ただいまっ!」
レベル上げを終え、私たちは宿に戻ってきた。一日ほぼフル稼働でレベル上げをした結果、私のレベルは73まで上がった。
そして私が元々持っていた女神フローディアの祝福の称号はなくなった。きっとフローディアを倒したせいで消えたのだろう。代わりに、女神の代理人という新しい称号がついていた。
【名前】シャロン(シャーロット・ココリアラ)
【レベル】73
【職業】聖女
世界を愛する聖なる乙女
大いなる力で人々を癒し、世界の平和を祈る存在
【称号】
婚約破棄をされた女:性別が『男』の相手からの攻撃耐性5%
女神の代理人: 回復魔法の効果が+30%になる・ 攻撃魔法の威力が+20%になる
【スキル】
〈聖女の祈り〉:天使を召喚する
〈癒しの光〉レベル10:対象者と、その周囲にいる味方を少し回復する
〈絶対回復〉レベル5:一人を大回復する
〈虹色の癒し〉レベル5:半径10メートルの対象を回復する
〈必殺の光〉レベル3:次に与える攻撃力が3倍になる
〈守護の光〉レベル3:指定した対象にバリアを張る
〈栄光の光〉レベル3:身体能力(攻撃力、防御力、素早さ)が向上する
〈聖女の加護〉レベル10:身体能力(攻撃力、防御力、素早さ)が大幅に向上する
〈月の光〉レベル10:20秒ごとにマナを回復する
〈星の光〉レベル10:5秒ごとに体力を回復する
〈治癒〉:すべての状態異常を回復する
〈聖なる結界〉レベル5:モンスターが入れない結界を作る
〈聖女の結界〉レベル10:使用者に害意ある者が入れない広範囲の結界を作る
〈平和の祈り〉レベル1:自身の体力・マナが向上する
ちなみに職業スキルの〈聖女の祈り〉は内容が物騒すぎるので、まだ一回も使っていない。しばらく使う予定もない。
「え、人のレベルって一日でそんなに上がるんですにゃ?」
「いくらなんでも、73は無理じゃないか……?」
タルトとミモザが困惑した顔で私を見てきてつらいです。タルトはいつでもすごいですって褒めてくれるのに……。
それにフォローを入れてくれたのは、ケントだ。
「それが本当なんだよ……。攻撃スキルがめちゃくちゃ強くて、〈プルル〉と〈花ウサギ〉を倒したあとは〈ウルフ〉を倒して、そのまま〈オーク〉を倒して、最後は〈ワイバーン〉も狩ってきたんだ……」
フォローをしつつも、ケントの顔にも「ありえない」と書いてあるのがわかる。
「なんというか、壮絶な戦いをしてきたんですね……」
ミモザは苦笑しつつ、「お茶を淹れましょう」とお茶とお菓子を用意してくれた。
「――という感じで行こうと思います」
「それでいいと思います」
私がざっと作戦を説明すると、リロイを始め、みんなが頷いてくれた。
基本的な作戦は前回と変わらないけれど、今回は私が大幅にパワーアップしている。そのため、〈ルルイエ〉への勝機もあるはずだ。
すると、ティティアがおずおずと手を上げた。
「どうしました?」
「今、気にするべきではないと思うのですが……オーウェンたちはどうしましょう?」
「ああ……」
そういえばそうだったと、私も思い出す。
ロドニーの息子オーウェンと、エミリアと、その他の〈聖堂騎士〉たちは再び徒歩でツィレに向かっているはずだ。もしくは、まだエデンで休んでいるかもしれない。
あの後――エミリアは、「どうしてわたくしが〈聖女〉じゃないのよ!」と大泣きした。ヒステリックなその様子を見て、全員でドン引きしたことは今でも鮮明に思い出せる。
オーウェンは「自分が連れてきたので」ということで、どうにかエミリアをなだめようとしていたが……まあ、そんな簡単になだめられるわけでもなく。最後は引きずるようにして連れ帰っていた。
結局のところ、オーウェンの『女神フローディアを倒す』という目的は私が達成してしまうという不思議な結末になってしまったわけで。
……でも、オーウェンはそんなにロドニーに肩入れしている感じではなかったのよね。
オーウェンは私の前に両手を差し出し、「どうぞ捕えてください」と告げた。父の言うことに逆らうことはできなかったけれど、好きだったわけではなかったらしい。むしろ、ティティアのためならなんでもするリロイに憧れているのだと言っていた。私としては、憧れる人を間違えているのではと思う。
「ひとまず脅威的な戦力じゃないから、今は置いておきましょう。クリスタル大聖堂の件が片付いたら、〈聖堂騎士〉を派遣すればいいと思います」
「……そうですね。そうしましょう」
私の提案に、ティティアは頷いた。
「それじゃあ、本当の最後の決戦に向かいましょうか」
「「「応!」」」