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聖獣達の鎮魂歌~Requiem~  作者: 悠介
肆章 紛争に巻き込まれて

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10話 エドモンド達の死

「エド!」

「リリエルさん、まだ敵は残ってる!」

「……!」

 リリエルが珍しく取り乱し、エドモンドの元に駆け寄ろうとするが、ディンがそれを止めた。

 ここは戦場、気を抜いてしまったらいくらリリエルが強いといっても、生き残る事は出来ないだろう。

 人間らしい、誰かの死に叫ぶという行動に水を差したくは無かったが、しかし。

それでやられてしまったら、本末転倒だ。

「エド……、邪魔をするからこうなるんだ。」

「あんたは最悪の形で子供の命を奪おうとしたんだ、それなりの報いはあると思えよ。」

 隊長が死んでいない事を確認したエドモンドの父親が、エドモンドの近くにきて吐き捨てる、それを聞いて、ディンは怒りを覚えた。

 しかし、今は怒りに任せて行動している場合ではない、この戦局を乗り越え、エドモンド達の手当てをしなければならない。

「おいおい竜神王サン、大丈夫か?」

「大丈夫、すぐに傷は治る。それより、今はこの場をさっさと制圧しちまおう。」

「okだ。」

 ディンの下腹部が銃弾によって抉られ出血をしていたが、ディンは気にする事無く戦い続ける、この程度の痛み、幾度となく経験してきて慣れている、と。

 リリエルの方を見ると、凄まじい勢いで革命軍に斬りかかっていて、次々と革命軍の隊員が倒れていっている。

「俺も調子あげ……。」

 ディンが隊長と対峙しなおし、さあ戦おうという所である事に気づく、それに気づいた所で一瞬固まり、そこを隊長が斬りかかってきた。

「喰らうかよ、そんな剣。」

 しかし、伊達に数百もの戦場を乗り越えてきたわけではない、一瞬の判断でそれを躱し、左拳で隊長の脇腹にフックを喰らわせる。

「がっ!」

 左フックで隊長を倒し、残りの人数を確認する。

 レジスタンスは三十人いたのが十五人、革命軍で立っているのは残り三十人程度。

その三十人も、リリエルが次から次へとアコニートで切り付け、毒によって殺されていく。

 ウォルフもタクティカルナイフで急所を攻撃し、次々に革命軍を仕留めていく、結果、三分と経たず革命軍は全滅、レジスタンスは半分が生き残った。


「エド!」

「リリ……、エル……。」

 戦闘が終わった瞬間、リリエルは刀を消しホルスターに戻すと、エドモンド達の元へ駆け寄った。

 エドモンドは浅い呼吸をしていて、ベアトとレジナはもう呼吸をしていなかった、銃弾が貫通した位置、それがベアトとレジナの丁度心臓の部分だったのだ。

 それを瞬時に理解したリリエルは、せめてエドモンドだけでも助かる方法はないのかと、傍に膝をつきエドの頭を膝に乗せ、銃創を抑える。

「外園さん、来てくれ。」

「わかりました。」

「セレンももう出てきて良いよ。」

「おいディン、おめぇも大丈夫なのか?」

 すぐ近くで待機していたセレンと外園をディンが呼び出すと、外園はまっすぐエドモンドの方へと向かう、銃創を抑えているリリエルの横で膝をつき、魔力を練り始めた。

「私の回復魔法が間に合うか……。」

「外園さん、お願いよ……。」

 普段のリリエルからは考えられない、今にも泣きそうな声、ディンの魔法は外界の人間には使えない、そもそもリリエルはディンがエドモンドを治療するとは思っていない、だから、唯一治癒魔法が使える外園に、頼むほかないというわけだ。

「リリ……、エル……。オヤジ、達は……。」

「無事よ、皆生きているわ。だから貴方も……。」

「俺……、は……。」

「エド、話さないでください。治癒に支障が出てしまいます。」

 外園がエドモンドに向け手を当て、魔力を放出する。

『ヒール』

 それは黄緑色の淡い光となりエドモンドを包み、徐々に銃創を癒そうとしている、が。

「外園さん、解毒は出来ないのか?」

「解毒……?あの銃弾には毒が塗られていたと?」

「俺は体質的に解毒出来たけどな。」

 気が付けばディンの銃創は消えていて、傷が癒えていた。

 ディンは元が竜神、仮にも神なのだから大概の毒は解毒出来るし、ディン自身の傷は魔力を少し練れば治せる、しかし、竜神の魔力は膨大で強大、安易に他者に使ってしまうと体に異常をきたす場合がある、移癒という魔法があるにはあるが、それは傷をディンに移すだけで毒までは治癒出来ない。

「私の持っている魔法では、解毒までは……。」

 外園は解毒魔法は覚えていない様子で、どうしたものかと考えている、近くにいたセレンは、エドモンドの父親がすぐそばにいる事に気づき、声をかけた。

「あんた、解毒薬はないのか?」

「……。馬鹿につける薬などない、やるだけ無駄だ。」

「あんだと!?おめぇの息子だろうが!おめぇのせいで今死にかけてんだろうが!」

「そもそもここに来なければ良かっただけの話だ、そんな事もわからないとは、貴様らも馬鹿だな。」

 父親の言葉にセレンが激昂し、胸倉を掴むが、父親はそれがさも当然かの様に、セレンに向けてそう言い放った。

「ふざけんなよ!?」

「セレン、止めろ。」

「なんでだよディン!こいつがふざけてんだろ!」

「馬鹿に何言ったって通じない、その人は救いようがないくら馬鹿だ。」

 外園が治療をしていたのを見ていたディンが、セレンを止める、父親は馬鹿と言われた事に怒りを感じ、額に青筋を作った。

「私が馬鹿だと?馬鹿に馬鹿呼ばわりなどされたくないな。」

「あんたは救いようがない。プライドで自分の仲間を危険にさらして、ここにいる半分がそのせいで死んだ。エドの気持ちも考えずに、エド達の忠告も聞かずに、半分殺した。革命軍との戦力差も考えられない、救いようのない馬鹿だ。」

「何……!?」

「とっととエドの前から失せろくそ野郎、俺達の気が変わらない内にな。俺達と戦って勝つ自信があるなら、好きにしろ。」

「くっ……!」

 ディンはそれだけ言うと、エドモンドの方に向き直る、もう父親など眼中にないという態度を取ったその行動に、普段はニブいセレンもその意図に気づき、エドの方を見る。

 エドは浅い呼吸をしていて、何かを言おうとしていたが、痛みと毒の回り方から呼吸するので精一杯な様子だ。

「エド……。」

「竜神王サン、なんとかならんのか?」

「俺の魔法は俺達以外の種族に使うと危険なんだ、外園さんが解毒魔法を使えない以上、打つ手はない。」

 諦めろとリリエルに暗に伝えるディンと、それを聞いて震えるリリエル。

 晴れていたはずの空が曇り、ぽつぽつと雨が降り出した、それは涙を失ったリリエルの代わりに、涙を流している様だった。

「リリ……、エル……。」

「エド……。」

「俺……、まちが、って……、ない……、かな……?」

「ええ、貴方の行動は間違ってなんていなかったわ…。貴方の父親が何と言おうと、貴方は勇敢に戦ったのよ…。」

 良かった。

 エドモンドの口が静かにそう動いて、そして、力を失ったエドモンドの体が、だらりとリリエルの膝の上に落ちる。

「エド…。」

 雨足が少しずつ強くなる。

 リリエルは涙を流せなかった、ただただ悲しみが体を震わせた、たった数日関わっただけのはずなのに、たった数日言葉を交わしただけのはずなのに。

 何か大きなものを失った様な喪失感、ディン達は、それを感じて震えているリリエルに、何も言えなかった。


『竜神術、竜炎』

 レジスタンスはディン達に恐れを覚え、急ぎ北へ向かった、残されたディン達は、時間が経つのを忘れたかのように立ち尽くしていたが、このままではいられない。

 雨が止み日が暮れた頃、三人の遺体を手を重ねて眠らせ、ディンは魔法を唱えた。

「リリエルさん、これは君が持っていてくれ。」

「これは?」

「エド達の魂の欠片、俺の魔法で魂に安らぎを与えて、宝玉にしたものだよ。」

 炎が消えた時、そこには指先程度の琥珀の宝玉が三つ残った、ディンはそれを拾うと、リリエル渡す。

 リリエルは渡された宝玉を受け取ると、トレンチコートのポケットの中にしまった。

「暖かいわ、貴方の力は優しいのね。」

「俺は優しくなんてないよ、第二段階以上の解放をしてればエド達は死ななかったかもしれないのに、それをしなかった。」

「掟がそうさせている、貴方の本心はそこにはない。私は心は読めないけれど、この宝玉の暖かさにそれを感じたわ。」

 いつもの調子に見えるリリエルだったが、ディンやウォルフ、外園は気づいていた、彼女が、心から死を悼んでいると。

 暗殺者として、復讐者として生きるリリエルの心に、誰かの死を悼むという、優しさが残っていたのだと。

「これからどうするんだ?竜神王サンよ。」

「竜太達と合流、の前にしておきたい事があるだろう?リリエルさん。」

「……、そうね。私は復讐者、奪われたのなら奪う。それが誰であろうと、変わりはないわ。」

「じゃあ、もう少しこの国にいる事になるかな。北上すれば、あの大馬鹿に追いつくだろ。」

 誰も、リリエルを止めようとはしなかった、リリエルの力が恐ろしいからではない、リリエルの心の痛みがわかるからだ。

 敵と認識すれば、十歳前後の子供を殺すことも厭わなかったリリエルが、誰かの為を思い行動し、そしてそれを失った、心境の変化、それは思った以上に大きかった様だ。


「ちょっと向こうに行って様子見てくる。」

「oh,こっちは任せろ。」

「頼んだ。」

 夜、歩いている途中、ディンがふと蓮達が気になったのか、転移を使い消えた。

 リリエルやウォルフはそれを気にする事はなく、セレンと外園もまあと言った所だ。

「そういやリリエル、ディンとなんかあったんか?なんか、感じちげぇぞ?」

「セレン、それを聴くのは野暮ってもんじゃないか?」

「別にいいわよ、隠す様な事でもないのだし。一昨日、彼と戦ったのよ。負けたけれど、いい勉強になったわ。」

「戦ったから仲良くなったんか?よくわかんねぇな。」

 本来戦いとは無縁のセレンは、リリエルの言葉が理解出来ていない様だ。

 リリエルも別に理解させようと思って話している訳でもなく、ただ事実を述べた。

「最初は雪辱を晴らす為に戦いを挑んだのだけれど、途中から楽しいと思ったのよ。それに、ディン君の考え方もなんとなくわかってきたから、それだけよ。」

「ほ、ほへー……。」

「リリエルさんは最初、ディンさんに斬りかかっていましたからねぇ。あれから一年と少しは経ちましたが、払拭は出来たのですか?」

「そうね、今は満足してるわ。」

 気持ちはだいぶ落ち着いてきたのか、普段と変わらない様子のリリエル。

 内心はまだ穏やかではなかったが、それを見せてしまう程幼くはない、それよりも、復讐心の方が強いというのもあるだろう。

 それは革命軍への復讐であったが、同時にレジスタンスのリーダーであるエドモンドの父親への復讐だ、革命軍との戦闘でエドモンドが死に、エドモンドの父親が殺した、だから、両方に復讐をしようと考えていた。

「そういや、エドは親父さんを守りたがってたが、そこはいいのか?ベアトもレジナも、あのリーダーを守ろうとしたろう?」

「事情がどうあれ、彼がエド達に手を下した事実は変わらないわ。だから、私は復讐する。」

「Umm.それじゃエド達の意思に反するんじゃないか?あの子らは親を守りたがったろう?」

「……。私は私の意思で動く、それは今も変わらないわ。」

 エドモンド達は父親を守ろうとした、それはわかっている、しかし、リリエルの心が父親を許す事が出来ないと言っている。

 エドモンド達の思いと、自身の感情を天秤にかけ、自身の感情を優先してしまう、それが必ずしも悪だとは言えないが、ウォルフ的には引っかかる所なのだろう。

「リリエルさんは報いを受けさせるつもりなのですね、それが彼らの願いと違ったとしても。」

「そうよ。元よりエド達を警護するというのだって、私の意思。私は、私の意思でしか行動しないし、出来ない。」

「ふむ……。当初の目的は果たせなくなりましたし、こだわる理由が何処かにあるのですか?」

「私は奪われた、だから奪い返すのよ。命を奪ったのだから、命を持って償わせるわ。」

 外園達が考えている以上に、エドモンド達に情が移っていた様だ、リリエルがここまで他人に拘る、というのがある意味信じられない。

 単純に、昔を思い出し怒りを灯しているのかもしれないが、しかし、それだけではない様な、そんな気がした。


「ただいま、少し進んだか。」

「ディン君、あっちは良いのかしら?」

「あぁ。竜太達は無事、蓮と修平君も解毒薬を飲んで解毒してた。一旦、合流する様に伝えといたよ。」

「そう、なら私も急がないとかしら。」

 十分ほどして、ディンが戻ってくる、ディンが転移で飛んだ地点から、歩き続けていた四人は、少しずつではあるがレジスタンスの居場所に近づいていた。

 レジスタンスはまだ北上しているのか、とディンが確認すると、どうやら野営をしている様子だ、十五人程度の人間の波動が、炎の波動を囲っているのがわかる。

 その少し先に、革命軍と思しき麻薬に毒された人間の波動が五十ほど確認でき、これはまた衝突するであろう事が考えられる。

「少し急がないと、また革命軍と衝突するよ。」

「それは好都合ね、あの男だけ殺せればそれでいいもの。殺した後のレジスタンスに、私は興味はないわ。」

「衝突狙って奇襲かける、って事か。俺は手伝えないし、多分だけど皆も手伝わないだろ?」

「構わないわ、あの程度の連中の攻撃くらい、貴方の剣に比べれば眠気覚ましにもならないもの。手伝ってなんて、そもそも思ってないわよ。」

「そっか。それなら、リリエルさんの思う様にやればいいと俺は思うよ。皆がどうするかは、任せるよ。」

 ディンも怒りの感情が無いわけでは無かったが、しかし守護者という立ち位置上復讐など出来ない、他の三人がどうするかは任せるが、自分は参加しないという気持ちでいる。

「俺は戦闘力ほとんどねぇし。むかつくけど、リリエルの足引っ張っちまうから。」

「私はそうですね……。復讐するほど親しくは無かった、と言っておきましょうか。」

「oh!俺は英雄だからな、復讐ってのは合わないな。」

 どうやら三人もリリエルの気持ちは理解すれど、復讐する程ではない様子で、どうやら一人で目的を果たさなければならない様子だが、リリエルは元より暗殺者、単独行動が主だった戦闘技術の元で、闇夜に溶け込みターゲットを仕留めるのが常だ。

 それが昼間になり、ターゲット以外に障害が増えた所で、何ら問題はないのだろう。

「私は一人でもやるわ、貴方達の力を借りるつもりもない。」

「わかったよ、リリエルさん。ただ、時間制限はありだ。」

「時間制限?」

「リリエルさん達には、まだやってもらわないといけない事が山ほどあるんだ。だから、竜太達が移動を始めて船に乗るまでの間、それが条件だ。」

 リリエルは縛られる理由が無いと思ったが、本来の目的であるクロノスに近づく為にはディンについていく必要がある。

 それを一瞬忘れかけていたが、瞬時に思い出し、これは条件をのむしかないと考える。

 ここでエドモンド達の復讐に集中してしまったら、おそらく革命軍の崩壊が最終地点だ、幾らリリエルでもそれを果たすには時間がかかるし、ディンがそれまで待つ理由もない。

「……。わかったわ、竜太君達が船に乗るまで、ね。それまでは何をしてもいいのよね?」

「この世界の常識に収まる範疇であれば。」

「瞬間移動や世界移動はしてはいけない、という事かしら?」

「大体その考えで合ってるよ、そこら辺だけ気をつけてくれれば、俺が止める理由はない。」

 大体の事が決まり、一行は移動を続ける、夜でも平気で動く五人は、少しずつレジスタンスと距離を縮めていった。


「はぁ……。」

「どうしました?お疲れになられましたか?」

「外園さん……。いえ、少し考え事をしていただけよ。」

「それはエド達の事で?」

 月が傾き、空が白み始めた頃、少しだけ休憩をとセレンが言いだし、一行は休憩を取っていた。

 セレンとディン、ウォルフが三人で話していて、一人でいたリリエルの元に外園が歩いてくる。

「……。それもあるけれど、私の目的の事よ。」

「確か、外界の神に復讐を果たす事、でしたか?それがどうかされたので?」

「ディン君が言っていたわ、もしもそういう相手なら俺しか戦えない、と。私は自分自身で復讐を遂げる、その為の障害は全て排除するつもりよ。」

「……。ため息の理由は、ディンさんと衝突する可能性、ですか?」

 外園はウォルフと同等か、それ以上に洞察力が鋭い、八百年も生きていて、色々な国を旅して回っているだけあり、人を見る目というのは養われていた。

 だからではないが、リリエルがため息をつくこと自体初めて見たが、話の内容から危惧している事を推察するのは、簡単だった。

「……。そうよ、ディン君は強いもの。私よりずっと強い、そして信念を持っている。守るべき物がある人って、強いのよね。」

「そうですねぇ、確かにディンさんはお強い。能力を全て開放した場合、私達の世界群の誰にも負けない自信があると仰られていました。しかしリリエルさん、貴女が危惧しているのはディンさんの強さだけはない、そう伺えますよ。」

「どういう事かしら?」

「貴女はディンさんを優しいと仰った。それは、ディンさんを認めつつあるという事だと思えます。貴女は心の何処かで、ディンさんと戦いたくない、傷つけたくないと思っているのではないでしょうか?」

 外園の言葉を聞き、驚くリリエル、それは、普段はそんな事を言わない外園がこんな事を言ってくる事、そしてそれを聞くと、そうなのではないかと思わされた事。

「私はあまり他人に干渉するのは好みませんが、リリエルさんはお若い。心の曇りは、その美しさに翳りを見せてしまうでしょう。」

「……、だったらどうするの?」

「私は妖精、人間とは違います。人間を醜く思う事もあれば、美しいと感じる事もある。貴女は復讐者、暗殺者でありながら、その心は澄んでいる。ですから、私が口を挟む事で濁らずに済むのなら、それも一興と考えているだけですよ。」

「……。私は、ディン君をどう思っているのかしら。ディン君だけじゃない、貴方達の事も。」

 白み始めた空を見上げながら、リリエルはため息をつく。

 この感情を昔持っていたような気がするが、それは暗殺者として不要だと切り捨ててきたのだと思う、だから、どう説明すればいいかわからない。

 だから、どう自身の中で答えを出せばいいのかがわからない、捨て去ってしまい、忘れてしまった感情、その名前を。

「これは私の個人的、希望的観測でもあります。リリエルさん、貴女は私やディンさん、皆さんを仲間だと思い始めているのではないでしょうか?ディンさんを通して私達の事を見ていた、だからディンさんを仲間だと意識する事で私達の事も仲間だと認識し始めた。それは暗殺者としては不要な物、だから戸惑っている。」

「……、仲間……。仲間だなんて、私には必要ないと思っていたけれど。」

 仲間などいなかった、暗殺家業の同業者や師匠はいたが、それは仲間ではなかった、シードルも、友であって仲間ではなかった、今までずっと、1人で戦ってきたリリエルが、知らない感情。

「それは過去の貴女であり、今の貴女ではないのでしょう。貴女は初めて仲間という存在に気づき、戸惑っているのでしょう。蓮君や竜太を見て、ディンさんや私達と接して、貴女は仲間という存在を知った、そうではないでしょうか?」

「そう、なのかしらね。私には仲間なんていなかった、必要ともしなかった。でも蓮君や竜太君を見て、貴方達を見て、その眩い何かを知った、のかしら。」

 仲間とは、背中を預け戦う者達の事だと認識していた、自分は一人で戦える、だから仲間など必要としないと思っていた。

 しかし、仲間とは、それだけの関係とは言えない、語り切れない何かなのではないだろうか、リリエルは少しずつではあるが、それを知っていったのではないか。

 外園は、リリエルの変化をそう見ていた。

「私の話はここまでですね、後はリリエルさんご自身が答えを出す事です。……、リリエルさん。仲間とは、良いものですよ。」

「……。」

「では私は少し休ませて頂きます、復讐が叶うと良いですね。」

 外園は話す事は話した、後は自分で考えろ、とリリエルの横を離れた、残されたリリエルは1人、外園に言われた言葉を思い返しながら、明ける空を見上げた。

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