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聖獣達の鎮魂歌~Requiem~  作者: 悠介
肆章 紛争に巻き込まれて

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9話 作戦失敗

「そろそろ動きがあってもいいと思うけどな。」

「ディン君、どうかしたのかしら?」

「革命軍とレジスタンス、そろそろ動くんじゃないかって思ってな。」

 真夜中、エドモンド達は路上で炎のすぐ近くで寝ていた、セレンと外園も休憩を取っていて、起きているのはウォルフと二人だけだ。

「なら、私達も動かないといけないんじゃないかしら?」

「まだ確定したわけじゃないからな、もう少し様子を見よう。」

「oh!そんな悠長に構えてていいのか?」

「大丈夫だと思うよ?俺の経験則で言わせてもらえば、抗争自体は朝になってからだろ。」

 炎から少し離れたところで、三人は話している、話し声で他の面々が起きてしまっては可哀そうだから、という所だ。

「リリエルちゃんが心配していたが、抗争に首を突っ込んだら彼らは死んじまうんじゃないか?」

「ちょっとウォルフさん……。はぁ、そうよ、あの子達が死んでしまうんじゃないかと、少し心配よ。」

「どうだろうな、守りながら戦うつもりではあるけど、確証は何処にもないから。」

 エドモンド達の性格はまだよくわからないが、ここまでの傾向で言えば、父親達の為に突撃するだろう。

 ディン達が代わりに戦う、という選択肢もなくはないが、そもそもそれでは頼りきりの依存になってしまうし、何よりディンの主義に反する事だ。

 ならば、最初から守りながら戦う前提でいた方が良いだろうし、エドモンド達も納得するだろうと考えられる。

「ディン君、貴方手を抜いたりしないわよね?」

「解放は一段階までだけどするよ、それ以上はするつもりはないけど。」

「Umm,竜神王サン、あんたの能力ってのはどうなってるんだ?一段階ってあたり、段階が何個かありそうだが。」

 まだ第一段階の解放と、話していなかった第四段階解放しか見たことのないウォルフが、疑問を口にする。

リリエルは第四段階開放までは知っているが、それ以上があるのかは知らない。

 ディンは一瞬話すか迷ったが、まあばれた所で問題はないか、と考える。

「俺の能力解放は全部で五段階あるんだ。魔力と身体能力が二段階ずつと、完全開放の五つ。ただ、常時解放してると、魔力を持たない人間に影響を与えちゃうから、段階封印してるんだよ。」

「成程そういう理屈か、じゃあ初めて会った時は何段階の開放をしたんだ?」

「あの時か……。あの時は、第四段階解放だな。リリエルさんの刃を受けるには、それくらいはしないときついから。」

「ほう、それはリリエルちゃんがそれだけ強いってことだな。そういえば、リリエルちゃんも人外じみた力を使ってるが、あれはどういう理屈だ?」

 ディンの説明を興味深いと聞いていたウォルフは、好奇心をリリエルに向ける、今のディンの説明からして、第四段階解放というのは中々な力を発揮すると見える、となってくると、それをさせるだけのリリエルの力、というのも気になるといった所だ。

「……。説明しても理解できないでしょうけど、私は星の力を使っているのよ。簡単に説明するなら、星の持つ波動を行使しているとでも言えば良いのかしら。」

「星の力、か……。そんな力を使う人間は見たことがないな、リリエルさんが特例みたいなもんなのか。」

「さぁ、どうなんでしょうね。私も同じ力を持つ人なんて見た事がないし、わからないわ。そもそも私、竜神王なんて存在も知らなかったわ。」

「リリエルちゃんの力は不思議だな、俺も聞いた事がない。俺のいる世界にもそんな力を使う奴はいないな。」

 ウォルフが顎鬚を撫でながら興味深げにリリエルを眺めると、リリエルは値踏みされている様な感情を覚える、明かした所で目的に支障はないだろうと踏んで話をしたが、その視線は若干不愉快だ、という風だ。

 それに気づいたのか、ウォルフは一瞬でその視線をそらし、腕を組んで唸る。

「この世界にはまだまだ知らん力の持ち主が多そうだ、これは愉快だな。」

「ウォルフさんの世界じゃこういう力は珍しいかな?」

「竜神王サンみたいな存在は俺の知る限りではいないからな、だから俺みたいな英雄が必要ってとこだ。」

 リリエルとディンは、それを聞いてそれ以上を追求しようとはしなかった、ウォルフは語らないだろう、秘密にし煙に巻くだろうと考えていたからだ。

 ディンでさえ正体がわからない、そんな人間の正体、リリエルは、踏み込んではいけない気がすると、そう勘がささやいているのを感じていた。

「そういや竜神王サン。聞き忘れてたんだが、なんでセレンをこの旅に加えたんだ?あいつは戦闘能力はないだろう?」

「セレンは優秀な鍛冶屋の家系でな、特殊な鉱石や武具の扱いに慣れてるんだよ。今の武器でも十分神々に通用するだろうけど、もしも外界からの干渉が酷くなって神々の力が増したら、今あの子らが持ってる武器じゃ通用しない。」

「それがなんでまた、連れて歩く理由になるんだ?」

「セレンもまだ若い、色んな世界の形を見てほしいんだよ。あと、この世界で良い鉱石を見つけてもらうのにセレンの能力は役に立つから。」

 ディンは、そういえば話してなかった、うっかりしていたという顔をしながら、セレンについて言及する。

 ウォルフは勿論の事、リリエルも何故非戦闘員であるセレンを仲間に加えたのかは疑問だった為、少し興味ありげな表情だ。

「彼には何か特別な力でもあるのかしら?」

「セレンは鉱石の声が聞こえるんだよ。俺も原理は知らないけど、そういう理由で、この世界にある上質な鉱石を見つけてもらって、武器を鍛造してもらおうって事だよ。」

 耳を指さして、セレンの特殊能力について説明するディン。

 セレンの肉体の秘密、について知っているのは、今の所ディンとセレンだけ、というよりも、セレン自身その構造を知っていても、真意を知らない、と言うのが正しいだろうか。

 それを言ってしまったら、ディンもその真意は知らないが、なんとなく想像はついている、それがセレンにとって酷な話だから、出来ていないというだけだ、と。

「今の武器じゃ勝てない、と竜神王サンは踏んでる訳だ。」

「まあ、干渉具合からするに今のままじゃ到底勝てないだろうさ。それも含めて、修行時間を稼いでるんだから。あの子らには緊張感を持ってほしいからある程度誇張して話してるけど、まだ猶予はある。」

 ディンの言葉に納得する二人、それもそうだ、一刻も早く神々の争いを止めなければならないのならば、わざわざ聖獣の守り手達をソーラレスに飛ばしたいり、自分達と引き離したりはしないだろう、と考えていたからだ。

 ディンに未来を予言する力があるとは聞いたことがないが、千五百年も生きているからこそ考えられる、経験則の様な物があるのだろう。

「悪い男だな、君は。」

「嫌われ役になる事も、時には必要だろ?」

 ディンはやれやれ嫌な役目だよ、と首を振りながら炎の方へと歩いていった、リリエルもウォルフと話したい事は今は特段ないのか、それについて行ってしまう。

「全く、面白い。」

 残されたウォルフは、髭を撫でながら不敵に笑って見せた。


「エド、起きて。貴方のお父さん達、動き出したそうよ。」

「ん……。まじか!?」

「えぇ、ディン君がレジスタンスと革命軍の距離が縮んでいるのを確認したわ。」

 朝方、日が昇り始めた頃、リリエルがエドモンドの体を揺さぶり、起こす。

 エドモンドはリリエルの言葉を聞いて飛び起きる、レジナとベアトはそれぞれ外園とセレンに起こされていた、寝ぼけて頭が回らない状態ではあったが、首をぶんぶんと振り回し無理やり目を覚ます。

「行かねぇと!」

「エド、その前に約束してほしい事がある。」

「な、そんなこと言ってる場合なのか!?」

「これを守れないならお父さん達の所には連れていけない、生きてノースディアンに行きたいのならちゃんと守ってくれ。」

 エドモンドが起きて、三人が集まった所で、ディンが声をかける、その声は真剣そのもの、これを守らなければ絶対にダメだと思わせる様な声色に、真剣な眼差しをしている。

 エドモンドは一瞬慌てるが、ディンのその真剣な眼に、構える。

「今から俺達はレジスタンスと革命軍の衝突に介入する。でもエド達は、後方支援から動かない事。絶対に、前に出ちゃいけない。」

「じゃあ、オヤジ達が危なかったらどうすんだ!?」

「俺達が出来るだけ守りながら戦うよ。ひとまずはお父さん達が他のレジスタンスの基地に到着するまで、それでいいだろう?」

「……、わかった……。」

 ディンの言葉を聞き、不安そうな顔をするエドモンド、ベアトとレジナはそれでいいといった風だが、エドモンドはディン達にまかせっきりになってしまうのではないか、と考えている様だ。

「勿論、エド達の後方支援も必要だと思う。だから、そこは任せるよ。」

「俺達も戦えるんだ……、わかった、ディンの言う通りにする。」

 ディン程の強さの持ち主に「任せる」と言われた事で、少し気が楽になったのだろう、迷いのない眼で、エドモンドは答えた。

「じゃあ、急ごう。」

「おう!」

 ディンとエドモンドを先頭に、一行はレジスタンスと革命軍の元へと走り出した。


「レジスタンスは撲滅せよー!」

「怯むなー!戦えー!」

 レジスタンスの一行と革命軍の分隊が、今まさに衝突した、レジスタンスは三十名程、対して革命軍の分隊は百名程、どう足掻いていも勝ち目のない戦だが、エドモンドの父は果敢に戦いに乗り込んだ、レジスタンスのメンバーは、エドモンドの父親の号令に雄たけびを上げ、突撃する。

「ディン!始まっちまってる!」

「わかってるよ。さあリリエルさん、ウォルフさん。サクッとやっちゃおうか。」

「oh!近距離戦はあまり好かんがまあいいだろう。」

「殺さない様に、でしょう?わかってるわよ。」

 両者が突撃し、丁度戦いの火ぶたが切られた所に、ディン達は間に合った。

 ディンとウォルフ、リリエルが前に飛び出し、両者の間に割って入る、両者共に割って入られた事に一瞬固まり、そしてざわつく。

「ご客人?何故ここに?」

「エドモンドの依頼でね、貴方達を基地まで護衛しようと。」

「……。あのバカに何を吹き込まれたかは知らんが、私達は私達だけで戦う。」

「この人数差で勝てると思っていますか?」

 ディン達の介入により、一気に静まり返った場で、エドモンドの父親とディンが少し話す、革命軍は何が起こっているのかわからず固まっていて、レジスタンスもそれは同じ、突然現れたディン達という異分子に、驚き戸惑っていた。

「こ奴らもレジスタンスか!?」

「とりあえずここを突破する事を考えましょう、話はそのあとだ。」

「……。」

「行けー!レジスタンスを撲滅せよー!」

 エドモンドの父親が何かをいう前に、革命軍の隊長と思しき人物が叫ぶ、それを皮切りに両軍が動きだし、戦闘が始まってしまった。

「ウォルフさん、リリエルさん。」

「わかっているわ。」

「oh!任せろ。」

 革命軍の隊員が剣を腰から抜き、後方では魔法を唱え攻撃を仕掛けてくる。

 レジスタンスのメンバーもそれに対抗し、銃を構え魔法を発動しようとしている、そんな中、ディン達は革命軍に向け攻撃を始めた。

「オヤジ!」

「……、エド、何のつもりだ?」

「俺は……、俺達は……。オヤジ達に、死んでほしくない!」

 ディン達がレジスタンスの放つ弾丸と魔法を躱しつつ、革命軍に攻撃している中、エドモンドと父親は数日ぶりに話をする。

 エドモンドは話が終わったらすぐにディン達に加勢する勢いでいて、レジナとベアトはもうディン達の支援の為に魔法を放っていた。

「この愚か者が、二度と会うことはないと思っていたが……。親の顔に泥を塗るのが楽しいか?」

「そんなんじゃねぇよ!ただ…、死んでほしくなかっただけだよ!」

 魔法と怒号が飛び交う中、親子は会話をする、父親は苛立たしいという顔を、エドモンドは恐れと決意を混ぜた様な顔をしながら、怒鳴り合っている、ディンはそんなエドモンド達に目を向けながら、革命軍に攻撃をしていた。

「お前は馬鹿なのだ、馬鹿はどこかに引っ込んでいろ。」

「ふざけんな!死んじゃったら終わりなんだぞ!」

 こんな所で親子喧嘩をしている場合ではない、と言いたくはなるがしかし、ディン達はそれを止めようとはしなかった、ただ一つ、三人を守りながらここを切り抜けるだけだ、と。

「私達が革命軍に負けるとでも?本当にお前は、顔に泥を塗りたいようだな。」

「だからちげぇって!」

「だったらあの連中を連れてさっさと消えろ、私達はお前に構っている暇などない。」

 エドモンドの父親は、そう言い放つとその場を離れてしまう、残されたエドモンドは、唇を噛みながらどうすればいいのかと立ち尽くしてしまう。

 そんなエドモンドは、革命軍からすれば格好の的だ、革命軍の指揮を取っていた隊長と思しき人物が、剣を抜き突撃してきた。

「エド、戦場で気を抜くと、死ぬわよ?」

「リリエル……?」

「全く、貴方の覚悟はそんなものだったのかしら?親に何を言われたところで、貴方の覚悟は褒められて然るべきなのよ。」

「貴様!邪魔立てするか!」

 そこに割って入ってきたリリエルが、隊長と思しき人物の腕を蹴り、剣を落とさせる、少し間が生まれ、リリエルはエドモンドに声をかけた。

 エドモンドはハッとした顔をし、ここが戦場である事を思い出す。

「レジスタンスは余さず死罪なのだ!」

「貴方、品がないわね。」

「黙れ黙れぇ!」

 落とした剣を拾い、連撃を仕掛けてくる隊長、リリエルはそれを、エドモンドに攻撃が行かない様にと誘いながら、躱し続ける。

「リリエル……、俺……。」

「無駄話は戦いが終わってからよ、まずはこいつらを蹴散らしましょう。」

「ふざけるなぁ!貴様らごときに負ける私ではなぁい!」

 隊長はリリエルの言葉に激昂し、更に連撃の勢いが増すがしかし、リリエルにとってそれは遅すぎる程に遅く、簡単に軸をずらして躱すことが出来る攻撃だった。

 エドモンドはそれに圧倒されながら、他のレジスタンスのメンバーのサポートに動こうとする。

「つまらないわ、ディン君ほどじゃないにしても、もう少し楽しめる戦いがあると思ったけれど。」

「何!?」

「おしまいよ。」

 縦に振り降ろされた剣を躱し、隊長のみぞおちに強烈な蹴りを一発繰り出すリリエル、がっ!っと言う声が漏れ、隊長はその場に倒れてしまった。

「さ、他をやりましょうか。」

 ディンとの戦いを楽しいと感じた事が、少し頭の中に残っている様だった、戦いを楽しむなど考えた事もなかったが、少しずつリリエルの思考は変わり始めていた。

 それが良い事か悪い事か、に関しては誰も言及する事はない、出来ないだろう。 

 戦場にいるのが当たり前なウォルフやディンからしたら、楽しむという感覚は、少しずれてきている証拠でもある、しかし、自分より格上の人間と相対した時、ウォルフは背筋がしっかりとすると言えば良いのだろうか、そう言った感覚になるのは事実だ。

「さて、あと数はどれくらい残ってるかな?」

 ディンは能力を第一段階解放しつつ、革命軍の相手をしながら、レジスタンスへの攻撃を防いでいた。

「余裕そうだな、竜神王サンよ。」

「まあ、そんなに強くないし。ウォルフさんだって、銃出してないだろ?」

「まあこの程度なら問題ないな、何よりばれる心配がない。」

 やはり、ウォルフなりに竜神の掟に対する気遣いというものがあった様だ。

 ウォルフが持っているのは、背中に背負っているスナイパーライフルと、腰に差しているハンドガンの二種類だ。

 そんなものは、この世界ディセントには存在しない、外界の存在を示唆している様な物だ、とウォルフはそう考えていた。

 他にもタクティカルナイフを持っているが、殺しはなしというディンの意向に従い使わない、という事の様だ。

「レジスタンスのメンバーに死者は出てないか?」

「出てないな、今のところはだが。」

「それは良かった、エド達に顔向け出来ないからな。」

 放たれる魔法をうち払い、迫りくる剣を躱し、革命軍をノックダウンさせながら、ディンとウォルフは戦況を見ていた。

 レジスタンスに向けられた攻撃を、うまい事弾きながら戦っていた二人は、今のところレジスタンスに死者を出さずにという目的をはたしている。

「さて、残り半分くらいか。さっさとやっちゃいますかね。」

「oh,それには賛成だ。」

 ウォルフとディンは、リリエルがこちらに加わったのを目視し、テンポを上げていく、次々と革命軍の軍人達を相手取り、次々とノックダウンさせていく。

 レジスタンスの攻撃で革命軍に死者も出ていたが、それはもう仕方が無いと割り切っていた。


「増援が来るな……。」

 ディンが戦いながら探知魔法を発動していると、増援が迫ってきているのがわかる、その数は約二百人程度、これはいよいよ戦況がわからなくなってきた。

 今まではレジスタンスに死者を出さずに済んでいたが、ここから先は守り切れるかどうか保証は出来ない、自分達がやられるという事は一切考えていないが、レジスタンスの死者をゼロ名にするというのはまた話が変わってくる。

「さて、どうしたもんか。」

 革命軍の攻撃を躱し、魔法を弾きながら、ディンはどうするかを思案する、撤退も考えられるが、それはリーダーであるエドモンドの父親が是としないだろう。

 かといって、増援に対し全員が無傷で突破出来るのかと言えば、それも難しい。

 ディンが第二段階以上の開放をすれば、可能性自体はあるが、それをする気は微塵もない。

「ディン君、増えるわよ。」

「わかってるよ。」

 悩みながら戦っていると、リリエルが耳打ちをしてきた、ディンが増援の事に気づいている事を伝えると、リリエルは何か策はあるかといった顔をする。

 リリエルもディン同様、増援が来たらレジスタンスが無傷では済まないと理解している様子だ。

「殺し、は無しなのかしら?」

「最悪有りだな、手を抜いて戦うにはちと数が多くなってくる。どっちにしろ、レジスタンスの攻撃で革命軍の方は死人出てるしな。」

「そう、わかったわ。」

 リリエルはそれを聞くと、ディンのそばを離れる、ディンは仕方がないか、とため息をつきながら、ウォルフの方へと走る、ウォルフは敵を投げ飛ばし、倒れた所を腹に蹴りを加え、気絶させている所だった。

「ウォルフさん、手加減はある程度なしだ、増援が来る。」

「Umm.それは由々しき事態だな。竜神王サン、勝算は?」

「正直死者ゼロは厳しいな、ある程度は犠牲が出る。」

 ウォルフはディンの力ならこの戦局を乗り越えられそうなものだが、と考えたが、一瞬でディンがそれをする気が無いという事は理解した、かといって自分が銃を出すのも違うと考えたウォルフは、リリエルと同じ結論に至る。

「ある程度の殺しは必要って訳だな。っと、増援が来たぞ竜神王サン。」

「そうだな、仕方がない。」

 革命軍が残り二十名程度になった所で、増援が到着してしまった、レジスタンスはそれにざわつき、狼狽える。

「臆するなー!戦えー!」

「オヤジ!みんなを逃がさねぇと!」

「ふざけるな!戦え皆の者ー!」

 父親の近くで戦闘をしていたエドモンドが、怒鳴るように撤退を促すが、それは逆効果になってしまった様だ。

 闘争心、というよりもプライドに火をつけてしまったといった所だろう。

「レジスタンスを撲滅せよー!」

 革命軍の増援の隊長が、叫んだ、それと同時に革命軍が魔法を放ち始め、ディン達はそれを何とか相殺するべく動く。

 しかし、やはり二百人もいるとなるとその魔法の量はすさまじく、弾ききれない。

「うわぁ!」

「大丈夫か!?うわ!」

 ディン達が弾ききれなかった魔法が、レジスタンスに飛来する、炎に包まれていく者、光線にあたり消失する者など、死者が出始めてしまう。

「今だー!レジスタンスを撲滅しろー!」

 隊長の声と共に、革命軍が剣を抜く、レジスタンスは銃を使い応戦するが、如何せんマスケット銃を撃つ人員と二百人とで数の差が出てしまっていて、ディン達がそれを止めようにも、すり抜ける者が出てきてしまう。

「本腰入れないとまずいかしら、ね。」

 それを見てリリエルは、太腿のホルスターに手をかける。

 刀の柄しかないそれを握ると、一瞬目を瞑り柄に力を籠める、すると青紫色の刃がゆらゆらと現れ、それは刀の形を取った。

「さ、行きましょうか。」

 刀を構え、抜けていった革命軍に突撃するリリエル。

「な、なんだお前は!?」

「何でもいいのよ、貴方は今ここで死ぬのだから。」

 神速の速さで駆け抜けてきたリリエルに驚いた革命軍の一人を、さっと刀で撫でるリリエル、背中に軽く傷をつけると、そのまま次の相手の所に行ってしまう。

「こんな程度で倒れると……、ガハッ!」

 斬られた革命軍の隊員が、突然血を吐いて倒れた。

「oh!何だ何だ?」

「妖刀アコニート、つまりは毒を持つ刀って事だな。」

「成程、それで竜神王サンも警戒していたって訳か。」

「あの毒、俺にも効くかもしれないからな。」

 それを眼で追っていたウォルフが驚き、ディンはやっぱりかという顔をする、リリエルから直接聞いたわけではなかったが、リリエルの刀の発している波動の中に毒の成分が感じられたからだ。

 だから、戦闘時にはその刀を受けない様にしていた。

「それは良いんだけどウォルフさん、段々大変になってきたぞ。」

「そうだな、俺も行くとするか。」

「頼んだ。」

 二人が三人ノックダウンさせる間に、二人はすり抜けていく、リリエルがいくら強いとはいえ、基本は一対一の戦いの人間だ。

 数が増えれば取りこぼしが出てくる、だからウォルフにディンはそっちに行ってくれと頼んだ。


「貴様ら、見ない顔だな。」

「あんたが隊長か?」

「いかにも。レジスタンスを撲滅し、我らが王の国を盤石に。」

 言葉ははっきりとしているが、探知波動では麻薬を使った形跡が見受けられる隊長、エクイティの麻薬がどんなものかはまだわからないが、判断力を残したまま作用する物もありそうだと推察出来る。

「貴様ら諸共滅ぼしてくれる!」

「やれるものなら。」

 隊長は剣を抜き、ディンに襲い掛かる、ディンは隊長の振るう剣を躱しながら、戦況を考えていた。

 レジスタンスの方も死者が十名程出てしまっている、そして革命軍は残り百人、リリエルが刀を抜いたとはいえ、まだ死者は出てしまいそうだ。

「おのれ!小癪な!」

「……。」

 隊長の剣を避けていると、後ろから殺気を感じるディン、躱したついでに後ろを見やると、エドモンドの父親がこちらに向けてマスケット銃を構えている所だった。

 ディン諸共隊長を撃つつもりなのだろう、まあ躱せば良いかと考えていたその時。

「ディン!あぶねぇ!」

 たまたまそれが目の端に入ったエドモンドが、父親の意図に気づきディン達との間に割って入る、すぐ近くにいたベアトとレジナも、エドモンドの怒鳴り声でそれに気づき、慌てて割って入ってきた。

「エド!」

「エド!ダメ!」

 BANG!

 銃声と魔法飛び交う中、ひと際大きく銃声が響く。

「エド!」

 銃声の方を向いたリリエルが、その方向を向き、そして見てしまった、たまたま丁度全員が縦一列に重なっていて、銃弾がエドモンド達を貫通した所を。

 ディンは銃弾を受けながら、三人の元に走り寄った。

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