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聖獣達の鎮魂歌~Requiem~  作者: 悠介
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8話 薬草を見つけて

「……、知ってる気配だ……。」

「どうした?」

「いや、覚えのある気配が探知に引っかかって……。もしかして、大地さん達が戻ってきたんじゃないかって。」

「それは良かったな、この子も何とか持ちこたえられそうだ。」

 天野の住処にて、探知波動を展開していた竜太が、四人が戻ったことに気付く、しかし、何故だか街の方からではなく、その外側を回ってきている様だ、竜太はそれを不思議に思ったが、しかし口にはしなかった、何か理由があって、街の外側を通ってきている、遠回りになったとしても、魔物除けの結界が無いというリスクを背負ったとしても、それをする理由があったのだろう、と。

「じゃあ、俺は薬草を薬にする準備でもするかな。」

「お願いします。」

 天野はそう言うと、何かをがしゃがしゃと探し始める。

「あったあった、これが無きゃ何もできんからな。」

 そう言って持ち出したのは、古錆びれた薬研だった、それを使って、薬草を磨り潰すのだろうと考えられる。

「使うのも久々だ、丁寧に扱わなきゃ壊れるかもな。」

「それは……、困りますね……。」

「そうだな、丁寧に使ってやるとしよう。」

 薬研を瓶にたまった水で洗いながら、天野は笑う。

「そう言えば、皆さんはここを知らないんじゃ……。」

「おー、そう言えばそうか。君が迎えに行ってやれ、俺がこの子は見てよう。」

「……、お願いします。」

 少し信用はならないが、しかしそれ以外に手立てもない、竜太は一人天野の住処を出ると、覚えのある気配の方へと歩いていった。

「さあ、間に合うかな?」

 天野は不敵とも取れそうな笑みを浮かべ、蓮の様子を伺っていた。


「そういや、天野さんの居場所わかんねぇな……。」

「そうですね……。私達、住所を聞かずに飛び出してしまいましたから……。」

 少し時間がかかり、夕暮れになって街の南外れまで辿り着き、見覚えのある場所で立ち往生していた四人は、急がなければという気持ちばかりで、そう言えば肝心の居所を聞き忘れていた、と思い出す、竜太が天野について行ったが、自分達は天野の住居を知らないし、探知魔法が使える訳でもない、と。

「探すしかねぇな。」

「そうですね。」

 そう言って南へと歩を進めようとした、その時。

「おーい!みなさーん!」

「竜太か……?」

「あ、見つけた!皆さん!こっちです!」

 そんな困っていた一行の元に、南東から竜太が声をかけてきた、探知魔法を使い、四人の居場所を把握していたから迎えに来たのだ。

「あれ、修平さんは?」

「修平なら大地の背中だ、毒にやられちまったんだ。」

「そんな……!急いで天野さんの所に行きましょう、まだ間に合うはずです。」

 大地の背中に背負われている修平を見て、竜太は一行を急かす、さっさと来た道を引き返しはじめ、四人はそれについていく。

「ここ、結構ぬかるんでますね、大地さん、お気をつけください。」

「……、うむ……。」

 ぬかるんだ地面を踏みしめながら、歩く四人。

「そう言えば、魔物には襲われませんでしたか?」

「それがよ、襲われたけど大地が足止めしてくれてな、何とかなったんだよ。」

「何やら壁を形成されていましたね、詠唱もされていたようです。」

「って言う事は、上級魔法ですかね?この世界の魔法は、中級魔法までは詠唱無しで発動出来るって話ですし。」

 竜太は、そう言えば自分と二人旅をしていた時も、上級魔法を唱えていたなと思い出す、それはもう三か月前の話だが、竜太の記憶の中には鮮明に残っていた。

「大地さんは魔法に長けてるんですかね?父ちゃんがそんな事言ってた様な気もするし……。」

「俺達じゃ上級魔法なんて唱えられねぇからな、そういう事なんだろ?」

「……。」

「大地さんは魔法に長けている、とディンさんが仰られていた様な気がします。その通りなのでしょう、私達にはまだ出来ない事です。」

 褒められ、少し赤面する大地、しかし一番後方にいた為、それは誰にも見られずに済んだ。

 上級魔法を使えるのは、今の所大地だけだ、清華と俊平は中級魔法まで、修平に関してはそもそも魔法という魔法を使えない、それが現状だった。

「もうすぐ着きます。」

「そか、蓮ダイジョブそうか?」

「何とも言えないですね……、僕も専門的な知識が無いので……。」

 ならば早く行かないと、と足を早める一行、すぐに天野の住処が見えてきて、あばら家に見えるそこに一行は入っていった。


「おぉ、お帰り。皆無事だったかな?」

「それが、修平さんが毒にやられちゃったらしくて……。」

「そりゃ大変だ、患者用の敷物はまだある、寝かせると良い。」

 蓮を観察していた天野が、一行を出迎える、住処の中には確かにもう一つ敷物があり、そこに寝かせろと言っていた。

「……。」

 修平をゆっくりと下ろし、敷物に寝かせる大地、修平の呼吸は苦しそうで、顔色も運び始めた時より悪くなっている。

 一方の蓮は、少し苦しそうではあったが落ち着いていて、スースーと寝息をたて寝ていた。

「なんか、蓮の方が苦しくなさそうだな。」

「あぁ、この子に食べさせた魚には若干だが毒の作用を緩和する成分が含まれてる、そのおかげだろう。」

「そうだったんですか。あの魚、美味しいだけじゃ無かったんですね。」

「そうだ。さて、薬草は取ってこれたかね?」

 天野は竜太にネタばらしをすると、清華が持っていた薬草に目を向ける、そしてフムと唸ると、清華の方へ寄ってくる。

「君が持っているそれは正解だ、淡い色のそっちは発光草の類だがね。すぐに薬を調合しよう、しばし外で待っていてくれ。」

「何故外で?」

「これでも薬の作り方は秘匿事項だ、ばれてしまうと色々と問題があってね。」

「わあった、外で待ってっからさっさと作ってくれや。二人分、足りるよな?」

 清華が疑問を呈すると、天野は手をひらひらとさせながら答える、俊平はさっさと外に出ていき、それに大地と清華が続く。

「まあ足りるだろう、ともう外に出てったか。まあ信じてくれたまえ、これでも腕は良い方だ。」

「お願いします。」

 そういうと竜太も外に出ていき、天野は薬研に薬草を入れ、擦り始めた。


「間に合いますかね……、二人とも苦しそうな表情でしたが……。」

「信じるしかないですね……、天野さんが間に合わせてくれる事を……。」

 外に出て、清華が不安を漏らす、竜太はもう信じる他ないと考えていて、大地と俊平は何とも言えないという感じだ。

「竜太君は天野さんと共に過ごされていたのですよね?何か感じ取る事はありましたか?」

「それが……。天野さん、探知魔法にも引っかからないし、どういう人かいまいち掴ませないというか……。僕がそういうのが苦手なのを考えても、あの人は隠すのが上手みたいで……。」

「そうですか……。ですが、今は信頼するしかありませんね……。」

 ため息をつく清華は、如何せん天野の事が信用しきれていない様だ。

 それもそうだろう、突然現れ医者を名乗り、しかも破門されていて依頼所の店主と顔なじみ、怪しい要素しかない、というのが正直な所感だろう。

「そういえば、なんで街中を通って来なかったんですか?」

「あぁそのことか。いいん……、清華がよ、街中通って行くのは薬草持ってるから不安って言っててよ。それで、外周を回ってきたってとこだ。」

「成る程……?」

「街中を通っていては、もしかしたら薬草を持っている事を不審がられるかも知れませんでしたから。ですから、街の外を通る事を提案したまでです。」

 清華の説明に、そういう事かと竜太は納得する、その清華はというと、ひと段落着いたからなのか、やはりというべきか俊平につんけんとした態度を取っている。

「がさつな方では思いつかないでしょうけど、そういった事があるかもしれない街ですからね。」

「そいつは……、いうなよ……。」

「貴方が悪いのです、改めてください。」

「えーっと、何かありましたか……?」

 事情を知らない竜太が戸惑いがちに聞く、確かにこの二人は合わなそうな感じではあったが、この一日で何があったのか、と。

「何もありません、ただ俊平さんのがさつさに呆れているだけです。」

「いい……、清華が口うるせぇんだろ……?」

「だからそういう無神経なところと言っているんです!」

 俊平が小声で反論すると、清華は大声で返す、今は魔物がいるわけでもない、薬草も無事届けられた、だから、別にいらいらや不満を隠したり我慢する必要もない、という所だろう。

 委員長と呼ばれ続けている事、神経質だと言われた事、そう言った細かい諸々が爆発してしまう。

「あの……。確かに俊平さんは気遣いが出来ない人かもしれないですけど……。でも、仲良くやっていかないと、これから先大変だって、父ちゃんも言ってましたよ……?」

「それはそうですが、私は俊平さんと上手くやっていく自信はありません。」

「うーん……。どうすれば良いんだろ……?大地さんはどう思います?」

「儂は……。」

 大地は急に話を振られ、答えを出すことが出来ない、そもそもが、人と接する事がほとんどなかった大地にとっては、難しい問題だ。

「あの人の言葉を借りる訳ではありませんが、私は私です。仲良く出来ない人とは、仲良くは出来ません。」

「そんなつんけんするなよ……。」

「貴方が悪いのです、反省してください。」

 俊平がぼそっと小声でいうが、それをバッサリと切り捨てる清華、竜太もこれは今はどうしようもないのかもしれないと、若干諦める。

「……、しかし清華よ……。」

「なんでしょうか、大地さん?」

「……、いや、仲が良いというのも……、悪くは、ないのではないか……?」

 友達が欲しいと思っていた大地の純粋な想い、竜太にはそう聞こえた、大地は少し顔を赤らめながら、つっかえつっかえ恥ずかしそうに話をする。

「……、儂は……。友が、欲しいと、ずっと思っていた……。」

「大地さん……。……、わかりました、善処しましょう。」

「お、マジか。」

「ただし。気遣いが出来ていないと感じたら私は口に出します、そうしないと、俊平さんの為にもなりませんから。」

 取り合えずの落としどころだ、と清華はため息をつく、大地には友と呼べる人がいなかった、それを知っていたからその気持ちを無下にしたくは無かった。

 俊平はそれを聞いて、口うるさく言われるのかとうんざり顔だ。

「そういえば、そろそろ陽が暮れてしまいますね。薬はすぐには出来ないのでしょうか?」

「おっと丁度そのことか。薬なんだがな、作って与えて効果が出るまでだと日をまたぐ。だから、今日の所は君達は街の宿にでも泊ってくれ。」

「あ、天野さん……。誰か残らなくてもいいんですか?」

 日暮れを見ながら話していたら、ひょっこりと天野があばら家から顔を出す、四人がそれに驚くが、天野は別段普通だという感じだ。

「流石に外で一晩を過ごさせるのは酷だからな、仕方がない。」

「わかりました……、じゃあ明日また来ます。蓮君と修平さんの事、お願いしますね。」

「わかってるよ、医者としてしっかり治すさ。」

「お願いします。」

 竜太は天野にそういうと、三人に目くばせする、三人はそれに気づくと、先に街の方へと向かっていった。

「そうだ、彼がお金を持っていたろう?ほれ、これだ。」

「あ、ありがとうございます。」

 天野はそれを見送りながら、修平の懐から出したのであろう袋を竜太に渡す、竜太はそれを受け取ると、三人の後を追うようにあばら家から離れていった。

「さあて、仕事だ仕事だ。」

 天野はそれを見送ると、家の中に戻り作業を開始した。


「だいぶ暗くなってきましたね。」

「そうですね、また宿に泊ることになるとは思いませんでしたが、確かあちらだったはずです。」

 街へ戻ってきた四人は、宿へ向かう、その道中、昨日すれ違ったであろう人間から少し怪訝な顔をされる。

 昨日と違う旅人がいて、昨日いた旅人がいない、これはどういうことか、とそんなところだろう。

「ここだ、旅人用の宿なんだとよ。」

「皆さんは昨日もここに泊まってたんですか?」

「そうだぜ。」

 成る程、と竜太は頷く、四人は宿に入り、受付に声をかけた。

「あの、四人なんですが。」

「はい、四十シルバーになります。」

「これでいいですか?」

「承りました。」

 宿屋の受付も、昨日と顔ぶれが違う事に気付いているのだろう、少々怪訝な顔をしながら、四人を部屋に通した。

「四人、一緒なんですね……。」

「思うよな?普通男女で分けるだろ?」

「はい……、というか、僕女性と一緒に寝たことないので……。」

「なーに言ってんだよ、仲間だろ?気にすんなよ。」

 女性と一緒に寝る、という経験を母親としかした事がない竜太は、少し恥ずかしそうな顔をする、嫌らしい事を考えている訳では決してないが、慣れていないから恥ずかしいのだろう。

「私も昨日、初めて男性と同じ部屋で寝ましたけど、何もありませんでしたよ?大丈夫ですよ、竜太君。」

「はい……。」

「そう恥ずかしがんなって、へーきだへーき。」

「……。」

 今朝、下着一丁の所を見られた事を思い出していた大地は、一人顔を赤くしていたが、しかし少し部屋が暗かったため、そんな大地の顔の赤さに三人は気付かない。

「取り合えず風呂入ろうぜ、汗かいたから気持ちわりぃ。」

「私も湯船に浸かりたいですね。」

「……、そうだな……。」

「じゃあ、お風呂入りましょうか。」

 皆、蓮と修平の事は心配しているが、それを口にしたところで、もう天野を信じる他に手段はないのだ、だからあえて口にはしなかった。

それを四人とも理解していたから、あえて普通にふるまって、精神を安定させようとしていたのだろう。


「はぁ……。」

 鎖骨にお湯を溜めながら、清華は一人女湯に入っていた、風呂は男女別に振り分けられていて、今は一人だ。

「蓮君も修平さんも、無事だといいのですが……。」

 湯船に浸かり、ふわりと香る木の香りを楽しみながら、しかし不安は消えない、一人になると余計心配になってしまい、そわそわする。

「はぁ……、ここで考えていても、仕方がないのはわかっていますが……。」

 湯船に口元まで沈め、悩む。

 これからの事、これまでの事、大地に仲良くしたいと言われたが、本当に俊平と仲良くなど出来るのだろうか、そういえば蓮にも言われた様な、と思い出す。

 蓮や大地にとっては、自分達は友と呼べる存在なのかもしれない、清華にとっても、確かに共に戦う為に友情を育んでも、意味はあるだろう、リリエルがそれをいらないと断言していたのと違って、自分達は連携を取って戦わなければならないのだから、仲が良い事に越した事はないだろう。

 ただ、俊平の言葉を許容出来る程、清華は人間が出来ていないと感じていた、どうしても許せない、その発言達があった。

「ふぅ……。」

 少し顔を出し、清華の美しいとも言える鎖骨がたらりとお湯を流す。

 悩んでいてもどうしようもない、今は体を休めよう、そう考え、清華はゆっくりと湯船に浸かった。


「竜太よ……。」

「何でしょう?」

「天野という男、信用なるか……?」

「うーん……。わかんないです……、何とも言えないっていうのが正しいのかなぁって感じで……。」

 一方の男湯で、俊平と大地と竜太は、角を突き合わせて湯船に入っていた。

 大地は如何せん天野が信頼出来ない、竜太は関わってみたがわからない、俊平はあまり関心は無いといった感じではあったが。

「信じていいんじゃねぇの?修平達の毒治してくれるってんだからよ。」

「……、何か、違和感が……。」

「違和感?俺はそんなの感じなかったぜ?」

「……。」

 自分の勘違いなのだろうか、大地はそう悩んでしまう、対人関係が少ない自分が、勝手に疑ってしまっているのだろうか、そう考えてしまう。

「でも確かに、共鳴探知には引っかからないし、破門された?っていうのに医者を続けてるっていうのも違和感が……。」

「そうか?破門されても生きてける奴もいるってだけじゃねぇのか?」

「……。」

 大地は一人、昼間に会った青年の事を思い出す、確か、彼も破門されたと言っていなかっただろうか、破門されると言う事は街から追放される事だ、と話していたような気がする。

「……、やはり、違和感を感じる……。」

「きのせーだろ、そんな事よか二人がちゃんと治る事を信じようぜ?」

「……。」

「大地さんの気持ち、わかりますよ。僕もなんだか、少し違和感を感じますから。」

 俊平の楽観さに黙ってしまう大地、そこに竜太がそっと耳打ちをする、大地は自分だけがそう感じていたわけでは無いと、少しホッとした様子だった。

「明日の朝には治ってんだろ?ならまた移動だな。マグナまで船で行って、さっさと神様の喧嘩止めようぜ。」

「……、そうだな……。」

「……。」

 それを聞いて竜太は考え込む、果たして、そこら辺の魔物相手に苦戦している今の戦力で、神々と戦えるのか?と。

 神々がどれだけの力を持っているのかはわからないが、しかし魔物よりは格段に強いだろう。

 今のままマグナに行ってしまったら、返り討ちに合い皆が死んでしまうのではないだろうか、そう見えてしまう、考えてしまう。

「どうした……?」

「いえ……。明日には修平さん達、治ってるといいですね。」

「そうだな、そうなってくんねぇと始まんねぇからな。」

 竜太の不安を他所に能天気そうな俊平と、何かを感じ取っている風な大地。、三者三様な様子で、時間は流れていった。


「さて、完成だ。」

 日が暮れ、松明の明かりだけが部屋を照らしている、そんな中、天野は薬研を片づけ、団子状に丸まった二つの粒を持っていた。

「飲みなさい、解毒剤だから。」

「んぅ……。……、にが、い……。」

「良薬口に苦しというやつだ、水で飲み込みなさい。」

「ん……、ん……。」

 まずは毒が回ってきている蓮に、薬を飲ませ水で飲み込ませる。

「良し、それでいい。明日の朝には治ってるだろう。」

「あり、がとう……。」

「もう寝るんだ、明日の朝には仲間が迎えに来る。」

 そういうと、今度は修平の方へと向かう天野、修平は背中を広く斬られていた為、空手着の上を脱がし、包帯が巻かれている。

「さあ飲むんだ、早く飲んだ方が治りも早い。」

「ありがとう……、ございます……。」

 薬を手渡され、それを素直に飲む修平、少々苦みを感じるが、しかし水で飲み込めないレベルではなかった。

「飲み込めたか?」

「……、はい……。」

「宜しい、君も今日は寝るんだ。」

「はい……。」

 薬を飲み終えると、二人はスースーと寝息を立てて寝始めた、天野は安心したような顔をして、二人の寝顔を見つめていた。


「今日は寝ますか、明日には治っているというお話ですし、早めに伺いましょう。」

「それがいいな、大地と竜太もそれでいいだろ?」

「……、うむ……。」

「はい、そうしましょう。」

 風呂を上がり、夕食を食べ終え、浴衣になっていた四人、布団を敷いてもらっていて、それぞれが布団の上に座っていた。

「さ、寝ようぜ。」

「竜太君もゆっくり休めますね、昨日は大変だったでしょう?」

「そうですね……、初めてではないので少しは慣れましたけど。」

 そう言いながら布団に入る竜太、布団で寝ることが出来るというのは、やはり有難い。

 他の三人も布団に入り、すぐ寝入ってしまう、そんな時だった。

「よう竜太、うまくやってるか?」

「と、父ちゃん!?」

「しー、みんなが起きるから大声出すなや。」

 竜太がうとうとして寝入ろうとした時に、突然部屋の中央が光り、ディンが現れた、竜太が大声で驚き体を起こすと、ディンに口をふさがれる。

「父ちゃん、なんで?」

「今のみんなの実力はみんな自身がわかったと思ってな、そろそろ合流しようかと思ったんだ。」

「合流?マグナに行かなくていいの?」

「実際の所、あのレベルの魔物に手こずってる様じゃ、勝てないよ。」

 ディンはちょくちょく飛眼を使い様子を見ていた様で、自体をしっかりと把握している様だ、竜太は直感的にそう判断し、風呂で感じた不安は現実だったかと考える。

「何処で合流するの?父ちゃん達が何処にいるかわかんないよ?」

「ドラグニートの首都で合流しよう、そこまでの金くらいなら手持ちで間に合うはずだ。」

「わかった、港から船で行けばいいんだよね?」

「あぁ、この街の南に港町がある。そこから船に乗ってドラグニートまで行って、そこからは列車で来ると良い。」

 わかった、と首を縦に振る竜太、そして、浮かんできた疑問を口にする。

「そういえば、蓮君達を天野さんって人の所に預けてるんだけど……。」

「その天野さんが何者か、って事か?」

「うん……。僕の探知魔法に反応しないし、そもそも破門されるってどういう事なのかなっていうのもあるし……。」

 ディンは答えるかどうかを悩んでいる様に見える、正体は知っているが、という感じだ、竜太は漠然とした不安というべきか、違和感を拭えずにいた。

「彼は……。そうだな、破門された人間じゃないな。破門された人間は、恐らく餓鬼になるはずだ。」

「じゃあ……、あの魔物って、元々は街の人達……?」

「そうなるな。なんでなのかは俺も調べてないからよくわかっちゃいないけど、多分な。餓鬼には人間の波動も交じってたろ?人間の魔物化、それと破門はくっついてると思う。」

「そっか……。」

 やはりそうだったか、そういう顔をしている竜太、ディンとしては、人間とも戦わなければならない運命にあるのだから、良くも悪くも経験になったと考えている、しかし、それを口にしてしまうのも酷だろう。

「ねぇ父ちゃん、ほんとは全部わかってたんじゃないの?」

「何がだ?」

「……。クラーケンに襲われる事、ここの魔物の事、天野さんの事、蓮君達が毒にやられる事。父ちゃんなら、予想くらい出来てたんじゃないの?」

「……。」

 口を閉ざすディン、その答えを言ってもいいものかという顔をしている、竜太はそんなディンを見て、それが真実なのではないかと考えてしまう。

「……。正直な所を言うとな、半分半分くらいだ。クラーケンは予想外、ここの魔物の事はみんなを見て知った、天野って人の事は竜太を通じてなんとなく、蓮達が毒にやられるのはまあ、そうなるんじゃないかとは思ってた。」

「それで僕に導けって……。僕、何にもわかんないよ……。」

「それでいいんだよ、竜太。俺だって最初は何も知らなかったんだ、最初っから全部を理解する必要はない。少しずつ覚えていくんだ、みんなそうさ。」

「……。僕に、出来るのかな……。」

「出来るさ。だって竜太は、俺の自慢の息子なんだから。」

 ディンはそう告げると、転移を使い消えてしまった。

 竜太は悩む、自分はそんな立派な竜神にはなれないと、しかし今は悩んでいる場合ではない、そう考え、眠りについた。

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