表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖獣達の鎮魂歌~Requiem~  作者: 悠介
弐章 修行の日々 そして

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/160

6話 修行の成果

 全員揃っての修行開始から、一か月が過ぎた、各々毎日修行の日々を送り、着々と力をつけ始めていた、それこそ、能力開放こそしていない状態ではあるが、蓮と互角に戦える程度には。


「それぇ!」

「こなくそぉ!」

 出発日の前日、今は俊平と蓮の模擬戦を行っている所だ。

 今までなら二分と蓮を相手に持たなかった俊平が、一か月の修行を経て五分も持つ様になった、それどころか、攻撃をいなすだけではなく自身も攻撃を繰り出しており、その成長ぶりが伺える。

 セレンが相手をしていた時期、よりもずっと動きが良くなっている、ここ二週間程は毎日模擬戦を白刃出やっていた為、それもまた、感覚を研ぎ澄まさせる要因になっている、のだろう。

『スパイラルリボルバー!』

 蓮から距離を取り左手を前に翳す、中級魔法である火属性の魔法を唱えると火の玉が複数出現し、蓮に飛来する。

『雷咆斬!』

 蓮も負けじと魔法剣を放ち、それは相殺され辺りに煙が立ちこめる。

『瓦解撃!』

 蓮が俊平の懐に潜り込み、氷の刃を繰り出す。

 氷の刃、それは当たった場所から氷柱を生成し、攻撃範囲を伸ばして不意打ちをする、という攻撃だ。

 元来は、氷冠という竜神術の完成度、硬度によってその氷柱の硬度が変わってくるのだが蓮は魔法剣は使えても竜神術は使えない、デインが何処まで力を譲渡していて、何処までを使える様にしているのか、と言うのも、ディンはある程度は把握していた。

『ニトロバーン!』

 繰り出された氷冠に俊平は、爆発の魔力を発動して防いだ、蓮の剣のすぐ手前で起こった爆発、蓮は爆風に逆らわず後ろに飛ぶ。

「えへへ、俊平さん強くなった!」

「そりゃ、一か月も絞られたからな。」

「でも負けないもん!」

 蓮は剣を腰に構え、体を回転させながら技を繰り出した。

『翔破閃!』

「っとアブね!」

 繰り出されたのは風の魔力、それは真空の刃となり地面を抉りながら、俊平へと襲い掛かる、俊平はそれを持ち前のフットワークの軽さで、ぎりぎりの所で避ける。

『爆塵……』

「そこまで。」

 蓮が次の技を繰り出そうとした所で、ディンが声を出す、俊平と蓮は刃を収め、歩み寄る。

「つえぇなホント……。良くやるよなぁ、俺にゃあそこまで出来ねぇわ。」

「えへへ、頑張ったもん!」

 俊平はスパイラルリボルバーが中級魔法だとすると、初級にあたる魔法ニトロバーンをいつでも使える様になり、蓮は雷咆斬しか使えなかったのが、今では四属性の魔法剣を使える様になり、お互い成長を感じていた。

 四人としては、まだまだ修行が足りていない、この状態で神など討てるわけがない、と感じていた、ただ、ディンが一か月という期間を定めた以上、それに従うしかない、それに従って、何処まで強くなれるか、と。

「二人共、よく頑張ったな。」

「お、おう。」

「えへへ、凄いでしょ!」

「あぁ、凄いよ。」

 ディンが声を掛けると、蓮が嬉しそうに笑い、俊平は少し恥ずかしそうな顔をする。

 実際ディンにとって、これは誤算レベルという速さで強くなっていた、修行は詰めてしてきたが、期待値よりも大きく成長した、という所だ。

「俊平、もう俺より強いんじゃねぇか?」

「そ、そっかな……。」

 セレンが感心していると、俊平は照れる、セレンが元々非戦闘員である事、元来の攻撃方法を使おうとしない事も加味すると、俊平は実力的にもう教えられる事はない、といった感じだ。

「じゃあ蓮、最後に能力開放しての修行だ。」

「え!?誰とするの?」

「俺とだよ、蓮の能力開放時の力を確認しておきたいんだ。」

「わかった!」

 俊平が下がり、代わりにディンが修行場に出る、聖獣の守り手達は能力開放と聞いて、一か月前の大地との戦いを思い出しざわつく、あの段違いの力を開放して戦うのか、と。

 そんなざわめきの中、蓮は目をつむると、瞑想をし魔力を高める。

『封印開放……。』

『限定封印、第一段階開放。』

 蓮とディンがほぼ同時に呟く、すると二人を包む闘気が発生し、風が吹き荒れる。

「来い。」

「いっくよぉ!」

 蓮が先に動く、両刃剣を片刃の剣として両手に持ち、二つの刃を帯電させる。

「竜神王剣、竜の誇りよ。」

 ディンは左手を目の前に翳し、唱えると、光がそこから零れ、百二十センチ程のバスターソードへと形を成した。

 これがディンにだけ許された剣、元来竜神王が持っていなければならなかった、竜神王にのみ所有を許された剣、竜神王剣。

 そのバスターソードは、つばの部分が少し特殊な形状をしていて、逆三角形に見える支えの中に丸い何かを填め込むのであろう穴があり、その穴には、黄玉の宝玉が填まっていた。

 元来闇のみを切り裂き、闇を癒し還す剣、その頭目が扱える、竜神王剣の中で、ディンだけが発現出来る剣、それが竜神王剣、竜の誇りだった。

『雷咆斬!』

 ディンが剣を出したのとほぼ同時に、蓮が二本の雷を放つ。

「全てを食らう雷よ。」

 ディンも剣を帯電させそれを迎撃する、軽く剣を振るうと、二本の雷は消え去り、ディンが放った雷の魔力の余波が蓮に飛来する。

「あっぶなあい!」

 俊平達には一瞬に見えたそれを、蓮は的確に避けた。

「ふむ、避けたか。」

 そういいながら軽く剣を振るい、二発目の雷を蓮に繰り出すディン。

「わぁ!」

 それを紙一重で躱す蓮、俊平達聖獣の守り手達は、その動きを追いきれないでいた。

 気が付けば雷が発生し、蓮がそれを避けている、そうとしか見えなかった。

『瓦解撃!』

 蓮が氷の魔力を刃に籠め、突撃する。

 ディンの振るう雷を回避し、何とか間一髪の所で避けながら、近接戦闘に持ち込もうとする。

「てやぁ!」

 ガキン!という音と共に、風が辺りに吹く、蓮とディンの剣がぶつかり、辺りにばちばちと電気が舞う。

『爆塵波!』

 蓮が魔法剣を切り替えると、そこで爆発が起きる。

「おっと。」

 ディンは爆風を避ける様に後ろに飛び、距離を取る。

『翔破閃!』

 後ろに飛んだところに、蓮の風の刃が飛んでくる、ディンはそれを側宙で回避し、一回転して立ち上がる。

「当たると思ったのにぃ!」

 悔しがる蓮、本気の一撃が外れたのが、相当悔しいようだ。

「はは、今のは当たると思ったな。」

 今度はこちらから、とディンが攻撃を仕掛ける、聖獣の守り手達にはギリギリ見えるか見えないかの速度で蓮に突撃する、そして、帯電したままの剣を軽く振り下ろす。

「わぁ!」

 それを辛うじて両手の剣で受ける蓮、攻撃の重みに耐えられないからか、軽く地面に足がめり込む。

「蓮、これで終わりか?」

「まだまだだもん!」

 ディンの剣を横に流し、転がるように回避する蓮、回避した直後、ディンの横っ腹に左手の剣を振りぬいた。

「甘いな。」

 しかし、それは読まれていたようだ、ディンは振り下ろした剣を右脇腹の所まで下ろし、それを受ける。

 再び舞う風、それだけの衝撃がこの打ち合いで起こっているのだろう。

「中々やるようになったな。」

「頑張った、もんね!」

 そもそもの能力の保有者であるデインの力、封印開放、それは、蓮の持つ力に合わせてデインの力を発現することにより、飛躍的に基礎能力を上げる術、なのだがしかし、代償としてかなりの体力を消耗する。

「はぁ、はぁ。」

「そろそろ限界だな、ここまでにしよう。」

 蓮もたった一分程の戦闘で、体力をだいぶ消耗してしまったようだ、息切れを起こし、体力の低下が伺える。

「まだ、やれるもん……!」

「いや、十分だよ。十分蓮の強さは確認できた、だからここまでだ。」

「はぁ、ふぅ……。」

「疲れたろう?今日はゆっくり休むんだ。」

 ふらふらし、倒れそうになる蓮をかかえるディン、竜の誇りをしまうと、そのまま担いで部屋に戻っていた。

「あれが、守護神の力……。」

「貴女はまだまだ辿り着けない境地よ、覚えておきなさい。」

「凄すぎる……!」

「hahaha!いつかお前さんも上達すれば、あそこまでとは行かないが強くなれるぞ。」

 驚愕する聖獣の守り手達。

 蓮の本気、それに対するディンの余裕、一か月二か月共に過ごして来た仲ではあるが、見たことがなかった。

「……、あれが……。」

「デインおじさんから貰った力を、フルで発揮した時の力ですね。ただ、体力的にあんまり持たないんじゃないかな?」

「あんなばけもんみたいな力、使いこなせてんのか……。」

「おめぇもあれくらいにならなきゃいけねぇんだぜ?」

 各々感想を口に述べる、それだけの力、それだけの戦闘を目の前で見せられた。

「明日には出発よ、今日はゆっくり休むのね。」

 リリエルの一言で四神の使い達はハッとし、それぞれの部屋へと戻っていった。


「……。」

「さて、いよいよ出発か。」

 部屋に戻り蓮を寝かせたディンは、一人呟いていた。

「はてさて、間に合うかどうか。」

 世界の存亡を掛けた戦い、それは年輪の世界全体の存亡にも関係する、先代竜神王が作ったこの世界群は、一つの世界が壊れてしまったら全ての世界が壊れる様に出来ている。

 だから、ディンとしては間に合ってもらわなければ困るという訳だ。

 否、全ての世界の住人にとって、間に合わなければ、困るのだ。

「蓮……。」

 そこに本来は関わりのなかったはずの少年、蓮、蓮が何故選ばれたのか、理解はしている。、が、そうなってほしくない、そう切に願っている自分がいる。

 たった半年しか関わっていないのに、それでも、自分を兄として慕ってくれている蓮を、斬る事だけはしたくない。

 しかし、もしもそうなってしまったら、全ての世界の為に、そして何より元居た世界の家族の為に、蓮を斬らなければならない、他者の闇という大いなる闇に呑みこまれた場合、蓮を斬る、その覚悟だけはしておかなければならない。

「……。」

 すやすやと眠る蓮を見て、ディンは悩む、果たしてそうなってしまった時に、自分は斬れるのか、と。

「宿命、ね。」

 しなければならないのはわかっているが、したくない、そんな二律背反の中で、ディンは眠りについた。


 翌日朝、日差しが強い八月の陽気の中、全員揃って朝食を取りながら、ディンが話を始める。

「これから先は何が起こるかわからない、俺達指南役の役目もそろそろ終わりだ。皆、それぞれの判断で動いて貰う事も多くなる。」

「お兄ちゃんたちは、一緒にいけないの?」

「いや、ついては行く。ただ、ここから先は皆が戦わなきゃならない。それこそ、人間相手でもな。」

「……。」

 清華は一人、二か月前の事を思い出す、人間相手に、全く動けなかった自分を、今の自分は出来るのか?と。

「まあ、人間相手なんてそんなにある事じゃないから、安心してくれ。」

「……、はい。」

 そんな清華の心を読み、ディンがフォローを入れる、実際、マグナに到着するまでは人間相手に戦う事はないだろうと、そう考えているだからそれまでに、その覚悟を決めておいてくれればいいと。

 人間を殺さずに済むのなら、それで良いのだろうが、マグナの使者、という存在達が好戦的である以上、それは不可能だろう、とディンは予測していた。

 だから、非情な話だが、人間相手に戦ってもらう事になるだろう、その覚悟をして欲しいと。

「それで、これからどこに向かうんですか?」

「まずは港町に向かう、そこから船でマグナまで行く算段だよ。」

「船?船って言うと、帆を張って、って言う感じですか?」

「いや、蒸気船だよ。セスティアのは基本的に重油を使って船は運航しているけれど、この世界は帆船と蒸気船が主だ。」

 修平が疑問を口にし、ディンが答える、船での移動は生まれて初めてで、わくわくするといった感じだ。

「すぐにマグナに行くのね?」

「予定では、な。」

 何か含みがあるような感じのディン、リリエルはまた勿体ぶるのかと呆れる。

「マグナに着いたら俺達指南役は解散の予定だ、それまで宜しく頼むよ。」

「じゃあ、マグナって所では俺達だけってか!?」

「そうなるな。皆は十分強くなった、だから俺達指南役は降りなきゃならない。まあ、俺は最後まで見届けないといけないから、いるけどな。」

「じゃあ、お兄ちゃんとは最後まで一緒なんだね!」

 そうだよと蓮に微笑みかけ、ディンは話を締めた。


「そうだ、蓮に渡さなきゃならないものがあるんだ。」

「なあに?」

「これだ。」

 一旦部屋に戻り、準備をしていた時、ディンはふと思い出したかのように蓮に話しかけ、左手を目の前に翳す。

『竜神剣、竜の想いよ。』

 光が零れ、それはディンの使う剣とそっくりの剣に形を成した、違う点を上げるとすれば、鍔に嵌っている宝玉が黄玉ではなく紅玉だという事と、ディンの使っている竜の誇り違い、鞘に収まっている事だ。

 ディンの剣、竜神王剣は鞘にしまう事が無いから、という理由で鞘を取り払っているが、元来はこの鞘に収まっている、マホガニー調の木目の美しい、鍔を収める場所には、竜が息吹を吹いている金細工が施された鞘、それが竜神剣や竜神王剣の、固有であり共通の鞘だ。

「これはデインが使ってた剣だ、蓮には使う資格がある。ただし、本当に守りたいものの為にしかこの鞘を抜くことは出来ない。」

「これを僕が?でっかくて使えないんじゃないかなぁ……?」

「いずれ使える様になる日が来るよ、背負ってみな。」

「うん。」

 ディンが蓮に剣を渡す。

 蓮がそれを持った最初の感想は、思ったより重くない、だった、重厚なディンの剣と同じ作りなのに、不思議としっくりくる重さをしている。

「あれ、抜けないよ?」

「だから、本当に守りたいものの為にしか抜けないんだよ。この剣はね。」

 剣を抜こうとしてから、ディンの言葉を聴いた蓮が背中に剣を背負うと、大体蓮の身長より少し小さいくらいで、ひざ下までの長さがあるが、やはりというべきか重く感じない、まるで、蓮の為に作られたかのような、そんな感触だ。

「それが抜けたら一人前だな、蓮なら出来る。」

「うん!」

 剣がもらえて嬉しかったのか、えへへと笑う蓮、そんな蓮にディンは行くかと告げ、二人は集合場所である外園邸の玄関へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ