4話 手合わせ
全員が集合した日の夜、相変わらずわくわくして寝れない蓮を、ディンはいつも歌っている子守歌で寝かしつけた。
その歌は竜神の中で歌い継がれてきた歌で、何故かディンは知っていた、竜神王の血族、その中でも女性の竜神が担っていた、鎮魂の歌、それをディンは聞かされた事はなかったが、母レイラが、ディンを身ごもっている時によく歌っていた、それを何処かで覚えていた、のかもしれないが、真相のほどは誰にもわからない。
そうして蓮を寝かせた後、外園と会話をしてから、ディンは竜神の祠へと足を向けた。
「デイン、良いか?」
……どうしたの?……
「いや、全員揃ったからな。その報告をと思ってきた。」
……そっか、じゃあ始まってしまうんだね……
「そうなるな。」
デインがため息をつく、千年前の戦争もそうだったが、未然に防げるのなら防ぎたかった、というのが本音だろう。
世界の守護神として祀り上げられた、のは他の竜神達の都合、そしてディンの都合だったが、世界の守護神と呼ばれている以上、世界を守りたい、とデインは願っていた。
……所で、敵の情報は集まったの?……
「まあ、ぼちぼちって所だ。異世界に介入出来る存在なんて、数が限られてるからな。」
……そっか……
「まあそんなことで報告に来たんだ、じゃまたな。」
……蓮に宜しくね……
「おう。」
それだけ言うとディンはその場から消える、デインは深くため息をつき、眠りについた。
次の日の朝、興奮であまり寝れなかった蓮は、ディンより先に起きて散歩をしていた、天気はよく、初夏の少し暑い朝日が山を照らす。
「……。」
「あ、大地さん!」
「……、風眞か……。」
「蓮って呼んで!」
外に出て修行場に出た蓮、ポカポカと暖かいを通り越して、若干暑い日照りの中、丁度朝の鍛錬をしていた大地が居た。
大地は蓮に声をかけられると、棒振りを止めそちらを向く、日ごろから欠かさずやっている演舞、大地が幼少の頃には、父は棍を振るう事をやめてしまっていた、大地の家に代々受け継がれている、素の六尺棒は、代々の長が買い替えて、ずっと演舞と攻撃方法を絶やさない様に、と用意されたものだった、それを大地は、最近になって知った。
「……、蓮よ……。」
「なあに?」
「……、お主は……、怖くはないのか……?」
単刀直入に聞く大地、自分は家訓を伝えられ、その為とは言わないが鍛錬を積んできたからまだ覚悟は出来ているが、蓮は話を聞く限りでは普通の少年だ。
怖くはないのか、戦いたくないのではないか、そう考えるのは、ある種当然と言えるだろう。
「怖い、かぁ……。お兄ちゃんがそばに居てくれるから、怖いって思ったことないなぁ。」
「……、兄とは、竜太の父の事か……?」
「うん!お兄ちゃん大好きなんだ!だから、お兄ちゃんの為にも頑張ってるの!」
「……、そうか……。」
嘘を言っている様には見えない、余程ディンの事を慕っているのだろうと、大地は考える、それこそ、命を賭けてしまえる程に。
それは悲しい事だ、と大地は認識した、自らの命を兄の愛情と天秤にかけて、それで兄の愛情を取ってしまった、それは悲しみではなく、なんなのかと。
「……。」
「どうしたの?」
「……、何もない……。」
「そっか。あ!大地さん、そろそろ朝ごはんだから、いこ?」
無邪気な蓮は、とてもではないが魔物を生み出す存在とも思えないし、戦士とも思えない。
しかし、竜太曰く自分より強い、信じられないが、竜太が嘘をつくとも思えない。
「……、行こう……。」
「うん!」
侮れない、そう改めて認識させられる大地だった。
「お、大地君おはよう。蓮と一緒にいたのか。」
「……。」
「お兄ちゃんおはよ!」
「おはよう、蓮。」
食堂に二人が行くと、そこには朝食を運んでいたディンの姿があった、ディンは片腕で器用に食器を持ち、ささっと運んでいる。
「お手伝いする?」
「お、頼む。」
「……、儂も運ぼう……。」
「助かるよ。」
流石に十一人分の食事ともなると多いからか、ホッとした声を出すディン、蓮と大地が手伝いをし、テーブルには全員分の食事が並べられた。
「っはよー。」
「セレンさん、おはよ!」
「おぉ蓮、おはよ。」
そこにまず現れたのはセレンと俊平だった。
眠そうなセレン、気だるげでやる気がなさそうにも見えなくはないセレンと、ある程度覚悟を決めてからというもの、はきはきとする様になった俊平、という対比の構図、はディンとしては面白いだろう。
「飯って、今日はご飯なんだな。」
「外園さんのその日の気分というか、まあそんなんで決めてるらしいからな。」
「へー。」
朝食は白米に目玉焼き、ソーセージだ、昨日の晩、初めての晩餐で皆で食べたのがパン主体のメニューだったからか、俊平が少し驚く。
「材料とかってどう調達してるんだ?ここ山の中腹だろ?」
「業者が運んでくれてるんですよ、私個人で輸入しておりますので。」
そこにひょこっと現れる外園、料理をしていたのは彼のようで、若干炭の香りがする。
「成る程……。って、個人?」
「えぇ。この国は基本自給自足、村単位での取引があるかないか。ですから、私の様な者は輸入をするんですよ。」
べっ甲の眼鏡をくいと持ち上げながら、外園は話す、その話に納得して、俊平はへーっと言いながら席に座り、朝食を食べ始めた。
「これ、初めて食べる味だな……。ウィンナーじゃねぇの?」
「それは羊肉のソーセージですよ、ドラグニート産の。」
「ドラグニート……、って何処だ?」
「ジパングとは友好的な、少し文明の進んだ国とでも言えばいいでしょうか?」
成る程、とソーセージを食べながら頷く俊平。
修平が何時だったか聞いていたドラグニートの話、についてはきいた事が無かった、友好的な国である事に関しては間違いないだろう、とは感じたが、どんな国なのか、については、この国の発展度合いから見るに推測出来る範疇を超えていた。
「……、儂は……。」
「大地君には精進料理を用意してるから安心してな。」
「……、いや、最早仏門は儂には関係がない……。それに、魚を食べたこともある……。」
ささっと食べ始める俊平とセレンをよそに、大地は眉間にしわを寄せていた。
動物を食べてはいけない、と言う古い仏教の中に生きてきた大地にとって、肉を食べるという文化はない、そして、肉を食べる事は禁忌ともされていた、しかし、今はこうして精進料理を用意してもらっていたとしても、これから先、旅の中でそれが出来ない可能性もある、現に道中で魚は食べた、あの時は空腹と頭の回らなさで深く考えられず、とにかく腹を満たす事を優先した、しかし、戒律と言うのは、時に足をすくませる。
空太から聞いたことがある肉料理、それに興味はある、寺を継ぐ予定が無かった空太は、寺では肉を食べる事はしなかったが、学校では普通に同級生と同じ食事をとっている、と言っていた、肉を食べた事があり、ずっと食べていなかった事について、悲しいとまで言っていた。
「……。」
「大地さん、怖い顔してるー。」
暫しの無言の後、戒律を破る事を決めた大地が、ソーセージを一口かじる。
普段無表情な大地が、糸目をゆっくりと大きく見開きながら、頬の筋肉を緩め、生まれて初めて食べる肉という物を味わう。
「……。」
「美味しい?」
「……、ああ……。」
蓮の言葉に、静かに答える大地、ゆっくりと咀嚼し、肉を味わう。
「……、これが、肉か……。」
「あ、大地さんおはようございます。って、お肉食べてるんですか?それソーセージですよね?大豆ミート、じゃないですよね?」
「……、竜太か……。肉とは、美味い物なのだな……。」
そこに竜太が欠伸をしながらやってきて、驚く。魚はまだ他に食料がなかったから、食べざるを得なかっただろうが、まさか肉を食べる、肉を食べてはいけないという、古めかしい戒律を破って、肉を食べるとは思っていなかった。
しかも、頬を緩めながら、目を見開きながら食べている、竜太にとっても見たことが無い、そんな顔をしている。
「大地君は仏門に帰依してる身だからな、俺も正直驚いてる。」
「父ちゃん、野菜とか用意してなかったの?」
「いや、精進料理を用意してあったんだけどな。」
なら自発的に肉を食べたのか、と竜太は更に驚く、それだけ大地にとって、仏門とは苦痛だったのだろうと推測は出来るが、まさかそこまで大胆に戒律を破るとは思いもよらなかった。
「あら、今日の朝はご飯なのね。」
「あ、リリエルさんおはよ!」
「蓮君、おはよう。」
そこにリリエルと清華がやってくる、二人はすっと席に着くと、出されていた料理を黙々と食べ始めた。
「おはようございまーす。」
「おはよう、皆朝から元気だな。」
「修平さん、ウォルフさん。おはよー!」
「おはよう蓮君、今日の朝飯はソーセージか。」
最後に、ウォルフと修平がやってきて、全員朝食を食べ始めた。
ウォルフも、大地が肉を感動しながら食べている、という事に気づき驚いたが、これから先の事を考えると、それは正しい行動だろう、戒律に固められて飢えてしまっていたら、戦いにおいては足を引っ張る事になる、ウォルフ自身、生肉などは食べられない、生魚も食べられない、何もかもに対して火を通さなければ気が済まないタチではあるのだが、それと肉を戒律において食べられない、では意味が変わってくるだろう、と。
「全員揃ったと言う事は、もうマグナへ乗り込むのかしら?」
「いや、もう暫くはここで修行だな。」
「何故?」
「まだみんなは未熟、このまま行っても返り討ちが関の山だ。」
成る程、とリリエルは納得する。
と同時に、清華や俊平、修平は少しムッとした表情をする、それは神であるディンや、オリュンポスの神々と呼ばれる、頂上の存在よりは弱いだろうが、この二か月自分達だって鍛錬を積んできたのに、と。
「取り合えず、みんなが蓮レベルまで到達するまでが目標だな。一か月ってところか。」
「そんな短期間で上達出来ると考えているのか?竜神王サンよ。」
「勾玉の力と指南役、それに俺と蓮。全員で修行つければ、それくらいで到達出来るだろ。」
ウォルフが口を挟むが、ディンにはある程度の算段はついている様だ、ウォルフはそう見て首を縦に振り、食事に戻る。
「お兄ちゃんはわかるけど、なんで僕?」
「蓮は今みんなの中で一番強い。だから、みんなを育てる手伝いをして欲しいんだ。」
「ほんと!?」
「あぁ。」
蓮が目玉焼きを頬張りながら嬉しそうに笑う、俊平達は、やはりというべきか複雑そうな顔だ、こんな子供に自分達が劣るなんて、蓮はずっと鍛錬を続けてきた自分達と違って、半年前までは一般人だったのに、という顔をしている。
「疑わしいなら、今日模擬戦でもしてみるといいよ。」
「別に、疑っている訳では……。」
「顔に書いてあるよ。後、俺人の心読めるから。」
「な……!?」
思わず声が出てしまう四人、普段は言葉を発するまでに時間がかかる大地でさえ、驚きの声を上げる。
「ウォルフさんやリリエルさんみたいに心を隠す術を持ってれば別だけど、君達の感情は手に取るようにわかるよ。」
「そ、そんなこと……!」
「ありえ無くないよ。読みたくはないんだけどね、自然と読める様になっちゃったんだよ。」
ありえないと修平が言おうとするが、ディンが先に答えを出してしまう、どうやら本当のようだ、と修平は呆気に取られる。
「では、隠し事は出来ないという事ですか……。」
「悪いけどそうなるね、勝手に発動してる魔力みたいなものだから。」
「……。」
伊達に神ではないと清華は考える、超常的な力の持ち主だとは考えていたが、まさか人の心が読めるとは。
空恐ろしく見えてしまう、目の前のディンという神が、竜神王という、この世界群という二つの世界を守っている神であるはずのディンが、そもそもは自分達とは違う異質な存在である事は認識していたが、そこまでの力を持っているとは、と。
「まあそんなに怖がらないでくれ、悪い様に使う為の能力じゃないから。悪用もしないし、みんなの心の内を暴露しようとも思ってないから。」
「マジかよ……。」
「本当だ。疑いたくなる気持ちはわかるけど、信じてほしい。」
「……。」
信じるほかないと大地は考える、どうせ考えを読まれているのなら、信じていた方が気楽だ、と。
「さて、それじゃ朝ごはん食べ終わったら模擬戦と行きますか。」
「そうね、貴女達も自分の実力を知る良い機会でしょ。」
「そ、そうですか……。」
「というわけだ、ささっと食べちゃおう。」
ディンがそう纏め、各々は何か思う所がありそうな風に食事に戻った。
「じゃあ、誰から行くかな?」
「清華さん、貴女から行ったらどう?」
「はい。」
最初に対峙したのは蓮と清華だ、清華は普通の木刀を、蓮は脇差程度の長さの木剣を二本持って対峙している。
蓮の木剣は、捻っても両刃剣にはならない、それは注意していた、逆に木剣を握る事が少ない蓮は、普段の癖で木剣を合体させない様に、と考える。
「じゃあ、はじめ。」
ディンが宣言する、それとほぼ同時に始まった。
「いっくぞぉ!」
蓮が動いた、迅速な動きで距離を詰め、両手に握った木剣を同時に清華へと振るう。
「……!」
その速さに、驚かされる清華、なんとかという反応速度でそれを防ぎ、後ろに飛び距離を取る。
「まだまだぁ!」
それにすぐ追いつく蓮、今度は右手に持った木剣を真向竹割に振るい、清華へと攻撃を繰り出す。
「負けません!」
今度はきちんと反応し、防ぐ。
「こっちも!」
しかし、蓮は二刀流だ、右の木剣を防がれた所に、左手の木剣を横に振るう。
「きゃっ!」
それは運良くか蓮が狙ってなのか、胴防具にぶつかるが、かなり力が入っていたらしく、清華は衝撃と共に軽く吹き飛ばされる。
「っ……!」
なんとか態勢を立て直し、倒れる事を防ぐが、蓮の実力という物を知ってしまった、清華にとって、自分より強い相手と言うのは少ない、この場で言えば多いのかもしれないが、セスティアの剣道において、清華を超える存在と言うのは、ここ数年父親以外いなかった。
「……。」
受け手に回っていてはいけない、攻めなければならない、目の前にいるのは小さな少年だが、しかし自分より実力は上。
子供相手だからなんていう、生ぬるい考えは捨てなければならない、そう瞬間的に考え、木刀を構える。
「えいやぁ!」
駆ける、その距離約十五メートル、思い切り木刀を振りかぶり、袈裟に振りぬく。
「清華さん、早いね!」
しかし、それは蓮が左手に握っていた木剣で、呆気なく防がれてしまう、余裕綽々と言った風な蓮が、次の攻撃を繰り出そうとした時。
「そこまで。」
ディンの声が静かに聞こえてくる、蓮はその声を聞くと攻撃を止め、後ろに飛び下がる。
「……、私はまだ……!」
「いや、そこまでだ。蓮、もうちょっと加減してやらないとだな。」
「えへへ、頑張っちゃった!」
たった三撃、たった三撃の攻防で、実力を図られてしまったような気がしてしまった。
しかも、蓮という小さな少年に対し、ディンは手加減をしろと暗に言っている、それを理解した清華、悔しくてたまらないと握っている木刀が震える。
「清華さん、それが今の貴女の実力よ。」
「リ、リリエルさん……。」
「認めなさい、でないと強くなれないわよ。」
「……、はい……。」
下を向き唇を噛みながら、清華は答える、無邪気に笑う蓮とは対照的に、とても悔しそうにしながら、清華は、次の挑戦者の為に場を退いた。
「さて、次は誰が行くかな?」
「俺、勝てる気がしないよ……。」
「お、俺も……。」
清華と蓮の模擬戦を見て、すっかり戦意喪失してしまった修平と俊平。
剣道の中で、セスティアにおいてだが最上級の強さを持っていた清華、剣道の天才として名を馳せていた清華でさえ、蓮にはかなわない、それを知ってしり込みしてしまっている。
「……。」
そんな中、大地が修行場の真ん中に歩き出す。
「大地さん?」
「……、儂は、今の実力を知りたい……。」
竜太がどうしたのかと問うと、大地は静かに答える。
大地は、他の三人や蓮と違って、親や師匠と呼ばれる存在がいなかった、自分なりに棍を振るい、そして体を動かす、という事をしてきただけだ、演舞と言って、決まった動きをしてこそいたが、それが正しいのかどうかすらわかっていない、自分の実力が竜太の下である事以外、何も知らないのだ。
「そう、ですか……。」
「次は大地さんと戦えばいいの?」
「そうなるな。気をつけろよ、蓮。」
それを知りたい、自分が何処にいて、どれだけ戦えて、世界を守り得るだけの力を持っているのか、それを知りたいと蓮と立ち合い、薙刀の様に構える大地、蓮は木剣を外側に構え、待つ。
「……。」
先に動いたのは大地だった、決して早いとは言えない速度で、蓮に詰め寄り棒を横に振りかぶる。
「ふん……!」
そしてそれを、全身全霊を込めて蓮に叩きつけた。
「あっぶない!」
蓮はそれを余裕を持って両方の木剣で受けるが、大地にパワー負けし、少しざざっと横に動く。
流石に倍以上の体重から繰り出される攻撃には、動かず対処するのは難しかったようだ、踏ん張り切れず態勢を崩す。
「……そこだ……!」
そこに大地は棒の反対側に力を入れ、逆側から一撃を加える。
「わぁ!」
それを蓮は片手の木剣で防ぐが、大地の元々の筋力と勾玉によってブーストされた力には勝てない、そもそもの体格差と魔力による身体能力のブースト、には勝てないと感じ、威力を受け流す為、横に大きく跳び、五メートル程の地点に着地する。
「大地さん、強いね!」
「……。」
「今度はこっちから!」
蓮は跳躍し、大地へと強襲を仕掛ける、大地が空を見上げると、太陽の眩しさの中に蓮の影がある、どうやら両手の木剣を振り下ろす攻撃を仕掛けてきているようだ。
「……。」
それを真向から受ける大地は、空へ向かい蓮に向かって棒を振りぬいた。
カキン!という乾いた音と共に、蓮が宙を舞う。
「わあぁ!」
ドサっという音と共に、蓮が尻もちをつく。
「いてて……。」
「……、大丈夫か……?」
「蓮、油断しすぎじゃないか?」
大地が蓮に声を掛けるのとほぼ同時に、ディンが笑う。
「えへへ!」
「……。」
効いていない、大地がそう直感し、蓮がそれを自覚したその瞬間。
「封印開放……。」
蓮が、何かを呟いた、その刹那、蓮から何かオーラの様なものが発せられる。
それは金色というのがふさわしい闘気で、蓮を包むように発せられていた。
「……、いっくよぉ!」
「……!」
水色がかった灰色のその瞳が、黄金色がかった色に変わる。
目が合った瞬間、殺されるとそう直感してしまうほどの覇気や威圧感、それを纏った蓮が前方へ跳躍し、右手の木剣を振り上げた、その時。
「だからってそこまでしろとは言ってないだろ?」
「お、お兄ちゃん?」
「まったく……。本気出してどうするんだ?蓮が本気を出しちゃったら、大地君が死んじゃうぞ?」
四神の使い達には目に追えない速度で、ディンが動き蓮の木剣を掴んだ。
「ごめんよ大地君、蓮はまだ加減の仕方を知らないから。」
「……。」
一人腰を抜かしていた大地に、ディンが優しく話しかける。
「ごめんなさい……。」
蓮は纏っていた闘気を収め、謝る、心なしかしょげている様で、しゅんとしながら、ディンに叱られた事実を受け止めている。
「なんなんだよ……、あれ……!」
「あれは守護神デインの力だ、あれを使ってる時の蓮は俺なんかよりずっとつえぇぞ。」
「あれが……?」
「清華さん、貴女より強いといった理由がわかったでしょ?」
呆気に取られる四神の使い達、まさか闘気が可視化される程の力を持っているとは、という感じだ。
清華に関してはそういったものに触れていなかった為、それが何なのかはあまりわからなかったが、強大な力、と言う事だけは理解出来た。
「俺達、あんなに強くなれるの……?」
「hahaha!なるしかないんだよ。」
「大地さーん、平気ですか?」
「……、うむ……。」
疑心を抱いてしまう修平と、立ち上がり竜太に答える大地。
二人も驚愕していた、あんな子供が、あれだけの覇気や威圧感を発するとは、と。
威圧感、という意味ではある意味ディンやリリエルより強い、それだけディンやリリエルが普段は気配を殺して生きている、という話であり、本気の竜太もあの程度の威圧感では済まないのだが、今の所四人はそれを知らない、だから、蓮の威圧感に怯えてしまう。
「まあ、これで自分達の実力不足は理解出来ただろ?修行積めば、これくらいは出来る様になるよ。」
「お兄ちゃん、ごめんなさい……。」
「謝らなくていいよ、わかっててやってもらったんだから。」
木剣を離し、しょげている蓮の頭を撫でるディン、蓮は少し複雑そうな顔をするが、しかし撫でられているうちに笑顔になってくる。
「蓮は強い、だからそれを指標にするのに丁度良かったんだよ。」
「そうなの?」
「みんなにはこのレベルに一か月でなってもらう。」
出来るのだろうか、全員がそう考えている、ディンや指南役達からしたら、なって貰わなければならない訳なのだが。
「さ、それぞれ修行開始だ。一か月、頑張ってくれよ?」
ディンが音頭を取り、それぞれがそれぞれの修行へと入った。




