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聖獣達の鎮魂歌~Requiem~  作者: 悠介
弐章 修行の日々 そして

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3話 俊平、大地合流

「そういえば修平君よ、妹ちゃんの事は気になるかね?」

「そりゃ、勿論気になりますよ!」

「そうか。」

 修平が外園邸に到着してから、半月が経った。

 修行に明け暮れる毎日の中、ウォルフは夕食後の珈琲を飲みながら、修平に問う、それに対して修平は、当たり前のことを聞くか、という顔をしていた。

「綾子は一人じゃ色々出来ないことあるし、変な男に言い寄られたりしたら……。」

「修平君、それは過保護過ぎるんじゃないか?」

「そんなことありません!」

 ドン!とテーブルを叩く修平、何故そんな事を言うのか、妹を気遣って何が悪いのかと。

「妹ちゃんの首を締めてる事がわからないのか?」

「俺が守らなきゃ誰が守るっていうんです!」

「それだよ、それ。それが妹ちゃんの首を締めてると言ってるんだ。」

「そんな事ありません!綾子には俺が必要です!」

 普段穏やかな修平が怒りを露わにする、それは周りを驚かせる。

 一緒に食事をしていた清華やディンは驚き、蓮は少し怯えている様だ。

 和やかな時間が過ぎていくはずだった、夕食後のひと時、修平や清華にとっては、修業で疲れた体を回復させるのにも、大事な工程でもある。

 そんな中、普段怒るという事をしない、天真爛漫と呼ばれていることを知っていた面々が、修平が怒っている事に驚くのは無理もないだろう。

「落ち着け、蓮が怯えてるじゃないか。」

「ウォルフさんが変な事言うからですよ!」

「わかったわかった、俺が悪かった。」

 宥める様にウォルフが謝るが、修平の怒りは収まらない、バンとテーブルを叩き、食事を途中で終え何処かへ行ってしまう。

「やれやれ……。」

 ウォルフは頭を掻きながら、どうしたものかと思案するのだった。


「俺がいなきゃ、だめなんだ……。」

 一人修行場に出て来た修平、雲もなく満月が辺りを照らす中、握りこぶしが震えている。

「俺がいなきゃ……。」

 それは侮辱であり、人生の否定であった。

 十一歳で両親を亡くし、妹が下半身不随になってから、ずっと自分が守ってきたと、そう自負してきたから。

 だから、ウォルフの言葉が気に入らない、ウォルフの言葉に過剰ともいえる程反応してしまう、それは己の存在意義であり、生存理由なのだから。

「……。」

 妹がいやらしい男に言い寄られた時のことを思い出す、あの時の男は、侮蔑しか出来ないような屑だった。

 そんな男から妹を守る事が、何故妹の首を締めるという話になるのか。

 理解が出来ない、ウォルフもそういう目で妹を見ているんじゃないか、一瞬、そう邪推してしまう。

「違う……。」

 きっと違うのだろう、ウォルフなりの、考え方という物があるのだろう、そう思えはするものの、やはり怒りは冷めない。

 妹を守る、それが人生唯一の生きる意味と言っても過言では無いのだから。


 清華、修平が到着してから一か月が経った、その二組が思い思いに修行をしている所に到着したのは、セレンと俊平だ。

「ふぅ、やっと着いたぜ。」

「ここが集合場所なのか?」

「あぁ。ここで俺らは集合して、それで敵陣におめぇらを送り出すってわけだ。」

 麓までは馬で、そこからは徒歩でやってきた二人。もう桜も散って葉桜になり、もうそろそろ、蒸し暑くなってきた頃だ。

 ここジパングはセスティアの日本に似ていて四季がある、夏は日本ほど暑くならない、梅雨が無いと細かい差はある、台風や地震があるかないか、天災に見舞われる頻度など、差異はあるが、概ねの所はセスティアの日本と同じで四季折々がある。

 現在は時期で言えば初夏、七月のはじめあたりなのだが、暑さとしては、沖縄の五月よりは涼しい程度、だろう。

「ここに仲間がいんのか?」

「あぁ。先に着いた奴らは、今の時間だと修行してんじゃねぇか?」

「とりあえず休みてぇよ俺は。」

「賛成だ。」

 修行場に行く前に、まずは割り当てられた部屋に向かう二人は、途中誰かに会うこともなく、部屋にたどり着く。

「はぁ。」

 荷物を下ろし、ため息をつく俊平。

 一息つきたい、ずっと慣れない馬に揺られて、移動時間以外は基礎鍛錬に明け暮れていた日々なのだ、少しは休憩したいだろう。

「取り合えずディンのとこ挨拶行くぞ?」

「ディン……、って確か、神様だっけか?同じ名前の討伐者?ってのはきいた事あるけどよ、なんか関係とかあんのか?」

「それは会ってみてからのお楽しみってやつだな、俺の口から言う事じゃねぇ。」

「ふーん。」

 セレンは荷物をおろすと、さっさと部屋を出て行ってしまう、俊平はそれに従い、二人はディンの元に向かった。


「よぉディン、到着したぜ。」

「お、セレン久しぶりだな。俊平君、初めまして。」

「あんたが、ディン……?」

 食堂に行くと、丁度昼ご飯を食べていたディンと蓮の姿があった、セレンが挨拶をするとディンが反応し、俊平は驚く。

「あんた、テレビに出てた!?」

「そうだな、セスティアではテレビ出てたぞ?」

「まさか、神様だったのかよ!?」

「そうなるな。」

 俊平はよくテレビを見るから、ディンの姿は見たことがあった。

 所謂「魔物の討伐者」として一年前からテレビに出演しており、現在では孤児院の様なものを経営していると。

 NPO法人最後の場所、という特定非営利法人を立てて、親の愛に恵まれず自決を選ぼうとした子供達を保護している、時には人攫いと言われてしまう事もある、という話は俊平も聞いた事があった。

「すげぇ奴だったんだな……。」

「そうか?それは嬉しいな。」

「お兄ちゃん、このお兄さんは?」

 セスティアで討伐者を名乗り、そして非営利法人を経営している人物?が神であった事、に関して俊平が感嘆している所に、蓮が口を挟む。

 守護者の一人であるのは間違い無いだろうが、誰の守護者なのか?といった風だ。

「あぁ。彼は猿田彦俊平、朱雀の守護者だよ。」

「朱雀……、じゃあ南の守護者だね!僕は風眞蓮って言います!」

「てめぇが、十一歳の……。」

 蓮に自己紹介をされ、俊平は二か月前の話を思い出す、十一歳の戦士が居ると、セレンに言われていた事を。

「ほんとにガキじゃねぇか!?」

「ガキっつっても、おめぇよりつえぇぜ?」

「マジかよ!?」

 えへへと笑う蓮、とても自分より強い様には見えない、確かに普通の十一歳にしては筋肉質だが、それでもどこにでも居そうな普通の子供にしか見えない。

「蓮っつったっけ?その右腕の、入れ墨か?」

「これはね!デインさんが力を貸してくれてる証なんだ!」

「デイン?」

「この世界の守護神、デイン。この世界を守ってる神様の名前だな。」

 俊平が頭に?を浮かべた所に、セレンが説明を入れる。

「マジかよ!?」

「マジもマジ、大マジだ。」

 驚く俊平、このジパングの守護神の一柱である朱雀の力を得ているのだが、別に世界の守護神が居るという事に驚く。

 世界の守護神、と聞いて、どれだけ大きな存在か、どれだけ偉大な存在か、と。

「世界の守護神って、スケールでかくね!?」

「それ、世界群の守護神の前で言う事か?」

「そういや、世界群ってどーいう事なんだ?」

 世界群、という言葉に対して、至極真っ当な疑問をぶつける俊平、セレンはそれに答えようとはせず、ディンに目線を投げる。

「それはな。この世界と君達が元居た世界、両方を守護する役割を持ってるって事だよ。」

「へー。」

 ディンは世界群の事を話そうとはせず、そう説明した、竜神の掟、世界群の存在をその世界に属する者に話してはいけないからだ。

「すげぇ奴なんだな、あんた。」

「俊平、言葉遣い気を付けた方がいいぞ?なんたってディンは千五百歳だからな。」

「はぁ!?十五,六の間違いじゃねぇの!?」

「俺は千五百歳だよ、竜神は何百万年と生きるから若く見えるだけ。」

 呆気に取られる俊平、目の前にいる、自分より若く見えるディンが、まさか自分の百倍も生きているとは、と顔に書いてある。

「とりあえず今日は休むと良い、疲れてるだろ?」

「あぁ、そうさせてもらうぜ。良いよな?俊平。」

「お、おう。」

 目の前の衝撃から頭が離れないという風な俊平を引っ張るように、セレンが退室を促す。

 俊平はそれにつられる様に、ふらふらとディンと蓮の元から居なくなった。


「やっと着いたぁ……。」

「……、ここが……?」

「はい。ここが外園さんの家、集合場所です。」

 その数時間後。月明りが辺りを照らし始めた頃、竜太と大地が外園邸に到着した。

 二人は暫くは歩き旅をしていたが、途中で馬車に乗せて貰いここまで来たのだ。

 普通に馬に乗ることも考えなかった訳ではなかったが、大地の体格に合わせた馬がいない、という話で、それならば馬車を外園邸まで借りたい、と聖獣の守り手である事を話し、麓の村まで運んでもらった、という形になる。

「父ちゃんの所行きましょうか、挨拶しないと。」

「……、うむ……。」

 二人はさっさと部屋に荷物を置くと、ディンの居る茶室へと足を向けた。


「父ちゃん、ただいま。」

「竜太か、お帰り。大地君、初めまして。」

「……。」

 茶室に入ると、ディンと蓮が紅茶を飲んでいた。大地はこれが竜太の父の姿か、と認識する。

 若い、自分よりだいぶ若く見えるが、竜太が父ちゃんと呼んでいるし、二か月前に聞いた声とも一致する。

「あ、竜太君!」

「蓮君、ただいま。」

「おかえりぃ!」

 そんな大地を他所に、竜太と蓮がハグをして挨拶をする、竜太と蓮は年が近い、だからよく遊んでいた仲だ、そんな竜太が戻ってきた事は、蓮にとってとても嬉しい事だろう。

 にこにこと笑い、竜太が最後に見た二か月前の顔つきとは、また違った顔を見せる、竜太はそれに安堵していた、闇をのぞかせる瞳、をしていないだけでも、蓮にとっては良い事なのだろう、と。

「おっきい!」

「……?」

「大地さん、この子が蓮君です。僕の叔父さん、デインの力を借りてる戦士ですよ。」

「……、こんな子供が……?」

 大地は蓮を見て驚く、どこにでも居そうなその少年が、玄武の言っていた守護神の使いだとは、と。

「僕、風眞蓮って言います!お兄さんはなんてお名前なの?」

「……、儂は、心月大地と申す……。」

「大地さん!おっきくてかっこいい!」

 蓮は嬉しそうに笑う、大地には、とてもではないがこんな子供が戦っているのだとは思えなかった。

「大地さん、多分蓮君の方が強いですよ?」

「……!?」

「蓮君は父ちゃんに修行してもらってますから、僕達が修行つける何倍もの速さで成長してますよ。だって、二か月前とは全然違うから。」

 大地の心情を察した竜太が話すと、大地はさらに驚く。

 まさかこんな子供に自分が遅れを取るとは、そんな衝撃が、大地の中を走り続ける。

 修行をしていたか、基礎鍛錬だけをしていたか、の違いはあるだろうと考えたが、しかしここまで小さい子供に負ける、と言うのは想像が付かない。

「大地君も竜太も疲れたろう、一旦部屋で休むと良い。」

「そうだね、行きましょう大地さん。」

「……、うむ……。」

 とりあえずはとディンが提案をする、竜太は疲れたから、大地はそれに従い、茶室を出て与えられた部屋へと向かった。


「はぁ……。」

「どうした?」

「いや、スケールがでかすぎてついていけねぇってか……。ホントに俺が世界なんて守れんのかって、思っちまって。」

 セレンと俊平の部屋にて、竜太と大地が到着した頃、俊平は不安げな顔をしていた。

「守れるかどうかじゃねぇ、やるっきゃねぇんだって言わなかったか?」

「そうだけどよぉ……。」

「ぐじぐじ悩む暇があるなら修行でもしたらどうだ?実力ついてくりゃ自信もつくだろ。」

「はぁ……。」

 ため息をつく俊平、それはそうだろう、自分からしたら次元の違う強さを持つセレンにそう言われても、という感じだ。

 セレンとしては、非戦闘員の自分が鍛えるという事に不安を感じているのだが、それは、俊平に言うわけにもいかない。

「早く俺より強くなれ、そうすりゃ自ずと自信もついてくる。」

「そんなもんなんか……?」

「帰ってダンサーになるんだろ?この世界守らなきゃ、おめぇが元居た世界もおじゃんだ。だから、やるしかねぇ。」

「そりゃ、そうだけどよ……。」

 不安が拭えない、中学までは真面目に修行に励み、この世界に来てからも基礎的な修行はしてきたが、しかし、実戦経験が圧倒的に少ないと感じている。

 ゴブリンのボスとの戦闘以来、あまり魔物と戦っていないというのも不安に拍車をかけている。

「まあ明日っからは仲間と修行すんだ、少しは慣れるだろ。」

「そんなもんなのか……。」

「そんなもんだ。さ、飯行くぞ飯。」

「お、おう。」

 飯を食べに行くと言う事は、先に到着している面々と顔を合わせると言う事になる、俊平は緊張した面持ちで、部屋を出ていくセレンの後をついていった。


「さ、やっと全員集合か。」

 夕食時、食堂にて、初めて全員が顔を合わせることになった。

「一人ずつ自己紹介してもらうのがいいかな?」

「僕はみんな知ってるよ!」

「そうだな、蓮はみんなと顔を合わせてるからな。」

 ディンが蓮を宥めつつ、修平に目線を向ける、修平はそれを自己紹介をしろという合図だと受け取り、立ち上がる。

「俺!河伯修平!みんな、宜しく!」

「ウォルフと呼んでくれ。」

 修平の横にいたウォルフも自己紹介をする、そして清華に視線を投げた。

「鈴ヶ峰清華と申します。」

「リリエルよ。」

 目線の先にいた清華と、リリエルが次に自己紹介をする。

「俺、猿田彦俊平、よろしく。」

「セレンだ、みんなの武器作ったの俺だぞ?」

 次にセレンと俊平が挨拶をする、まるで指南役達が集まった時の様だ、とセレンは感じる、最初の挨拶とはそういうものなのだろうか?と。

「坂崎竜太です。」

「……、心月大地と申す……。」

 最後に竜太と大地が自己紹介をする、とほぼ同時に、外園が夕食を運んでくる。

「おやおや、皆さんお揃いで。私、この屋敷の主にて皆さんのサポートを勤める外園と申します。」

 食事をテーブルに置きながら、外園が自己紹介をする、その瞳は俊平と大地を見ていて、ふむと一言唸った。

「じゃあ改めて自己紹介、みんなを集めたディンだ。みんな、自分達の使命は聞いてるな?」

「俺達が世界守んなきゃなんねぇんだろ?」

「そうだ、みんなはこの世界ディセントを千年前に守った守護者の末裔。そして、戦う宿命に生まれた子達だ。本来なら俺達指南役はいらなかったんだけど、とある事情で必要になった。だから、みんなが強くなるまでは近くにいてくれる、安心して戦ってくれ。」

「そのとある事情とはなんなのです?」

 ディンが話している所に清華が口を挟む、指南役という事は理解していたが、なぜ必要なのか?何故元々はいらなかったのか?と。

「それは言えない、俺達竜神の掟だから。でも、まあ居るから安心してくれ。」

「本当は俺達だけで戦わなきゃいけなかったって事?」

「本来は、な。」

「……。」

 修平が疑問を口にし、大地は口を閉ざしている。

 大地だけ、この場に指南役が本来はいない事を知っていた、しかしそれは口にするほどの事でもないだろう、と黙る。

「みんなはこれからマグナ、敵の神が居る所に行って神々の戦いを鎮めて貰う事になる。その事は、各自聞いてるな?」

「ホントに神様と戦わなきゃならねぇのか……。」

 俊平が不安げな声を上げる、ディンは不安になるのもわかるが、と話を進める。

「そうだ、神を鎮めなきゃならないんだ。だからみんなには強くなってもらわなきゃならない、その為の指南役だ。」

「貴方が神々の戦を鎮めると言う事では駄目なのですか?」

 清華が疑問を口にする、それもそうだ、ここにいるディンは世界の守護神と言われてきた、ならばその守護神が争いを鎮めるのが道理ではないか?と。

「本来は俺は関わっちゃいけない争いなんだよ、清華ちゃん。本来は君達だけが戦う役目を背負ってた。それが、イレギュラーが発生して俺達が介入しなきゃならなくなったんだ。」

「そのイレギュラーって?竜神の掟、だっけ。で言えないんですか?」

「そうなるな。竜神の掟は守らなきゃ世界が滅びる、だから言えない。とにかく、君達に戦ってもらうしか方法がないんだ。」

「……。」

 改めて事実を突き付けられ、項垂れる俊平、清華、修平の三人、大地は元々家訓として言い伝えれていた為か、動揺していない。

「私達の役目は貴方達を育てる事だけ、戦争には加担出来ないらしいわ。」

「そんな……。」

 リリエルが口を開く、清華はリリエル程の強さを持つ者が共に戦ってくれれば、と頭の片隅で考えていたが、それは叶わないらしい。

「ウォルフさんも?」

「そうだ、我々の役目はあくまで指南だ。」

「……、竜太よ、それは本当なのか……?」

「すみません大地さん、そういう掟なんです。」

 修平と大地もそれぞれ指南役であるウォルフと竜太に問うが、答えは一緒だった。

「セレンさんは元々鍛冶屋なんだよな?」

「あぁ、俺の役割はおめぇらの武器を作る事だ。」

「そっか……。」

 俊平もセレンに確認をし、再び大地以外の三人が項垂れる。

「まあ道中は長い、みんな存分に稽古をつけてもらうといいさ。」

 そんな中、あっさりとしているディン。

「お兄ちゃん達より強くなって頑張るもんね!」

 そして、それを理解している蓮、蓮も最初は共に戦えない事に悩んでいたが、半年も経てば覚悟も出来たという所だろう。

「……、うむ……。」

「蓮君がそういうのなら、私達がやらないわけにはいきませんね…。」

「そうだね、蓮君が頑張ってるんだもん。俺達も頑張らなきゃ。」

「こんなガキに遅れ取るのもむかつくしな。」

 蓮の言葉で各々覚悟を決める、十一歳の子供が覚悟を決めているのだから、自分達も覚悟を決めなければ、と。

「まあ、詳しい話は追々。今日はみんな揃ったんだし仲良く飯を食おう。」

「竜神王サンに賛成だな。oh!腹の虫が合唱してるぞ!」

「そうだね、父ちゃんの言う通り。」

「まあ賛成だわ。」

「俺も腹減った!」

 ディンを皮切りに、指南役達が音頭を取る、四神の使い達もとりあえず今日はそれでいいと考え、十一人はがやがやと食事を食べ始めた。


「……、竜太よ……。」

「なんでしょう?」

「……、お主の父は、何を考えておるのだ……?」

「何をって、なんでしょ?」

 その日の晩、部屋に戻った大地が、竜太に問う。

「蓮という少年を戦場に赴かせる事……、苦行ではないか……?」

「そう、ですね……。父ちゃんがなんで蓮君を戦場に駆り出すのかは、僕にもよくわかってないんです。ただ、デインおじさんの力を与えられたからとしか。」

「……、そうか……。」

 竜太でさえ答えを持ち合わせていないのなら、きっとディンは誰にも言っていないのだろうと、大地はそう直感する。

「……、しかし、あの子供……。」

「蓮君がどうかしました?」

「……、玄武から、魔物を生み出す量の闇を、抱えていると聞いた……。」

「そう、ですね。本来なら魔物を生み出すレベルの闇を抱えてて、でも蓮君は魔物を生み出してないし魔物にもなってない。」

 それはどうしてなのか、竜太にもその答えはわからなかった。

 ただ、デインが力を与えたのと関係しているのではないか、としか。

「……。」

「大地さん?」

「……、いや、空太よりも年が小さい……。それにも関わらず、戦いに赴くというのがな……。」

「そういえば弟さんいましたね、空太君、十二歳でしたっけ?」

「……、ああ……。」

 大地は、戦場に赴くのが自分でよかったと考えていた。

 弟には重荷を背負わせたくない、と旅の中で感じていたからだ、まだ十二歳の子供である弟には、荷が重すぎる。

 そして、唯一心を開いていてくれていたその弟に、戦争など加担させたくはない。

「……。」

「大地さん?」

「……、いや、竜太よ……。」

「なんでしょう?」

 大地はそこで一旦言葉を止める、これは言っていいものかと、考えている様だ。

「……、お主の父は……、お主を戦場へと赴かせる事に……、疑問を抱かなかったのだろうか……?」

「……。そう、ですね……。父ちゃんにもしもの事があったら、僕がその役目を引き継がなきゃならない。だから、いつかはこうしなきゃいけなかったんです。」

「……、そうか……。」

 とっくのとうに覚悟は出来ているのだろう、一年前魔物と戦っていたのだから、当然と言えば当然かと大地は考える。

「今日は寝ましょう、明日からまた修行です。」

「……、そうだな……。」

 大地は煩悩を消すように一旦考える事を止め、ベッドへと入り眠りについた。


「さて、全員揃ったけど間に合うかどうか。」

 ディンは一人、蓮を寝かせた後に茶室に来ていた、そこは一人で考え事をするにはもってこいの場所だからだ。

 ランプの中の蝋燭の明かりが少し消えかかっている中、一人悩んでいる。

「……。」

 間に合わなければ世界滅亡、しかし自分には自分の役割がある、焦ってもしょうがない、と考えを纏めようとした時。

「ディンさん、よろしいですか?」

「外園さんか、良いよ。」

「失礼します。」

 部屋に入ってきたのは、外園だった。

「彼らは世界滅亡までのタイムリミットに間に合いますかね?」

「間に合わせないと世界滅亡だ、どうにかしても間に合わせるさ。」

「それが良いでしょう、私も役目を果たさなければなりません。」

 預言者となり、世界の滅亡を予言してしまってから数百年間、世界の存続の為に、奔走してきた。

 そこに現れたディンという、デインに関係する神、外園としては、藁にも縋る思いでディンを信じた部分がある。

「役目を果たしたら、どうする?」

「どうする、とは?」

「まあ余生みたいなもんだよ、肩の荷が降りたら色々してみたりしたらどうだ?」

「そう、ですねぇ。」

 外園は少し考え込むような仕草をし、口を開いた。

「その暁に考えとしましょう。」

「今は言わないんだな。」

 その後は他愛の無い話をし、ディンと外園は解散、それぞれ部屋に戻った。

 これからどうなるのか、という漠然とした不安を抱えながら、ディンは世界を守る為に、外園は未来を変える為に、戦うのだと。


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