12.5話 世界の守護神
「さて、と。」
「どうしたの?お兄ちゃん。」
「ちょっと出かけてくるよ。」
「はーい、行ってらっしゃーい!」
修行を終えた後、外園邸から姿を消したディン。
向かった先は、竜神の祠と呼ばれる場所。
ディセントに住まう者には基本認知出来ない、選ばれた者にしか入れないその祠、そこにディンが現れた。
「よぉ、デイン。」
……どうしたの?……
「いや、蓮の事なんだけどな。」
……蓮がどうかした?……
「なんで蓮を選んだのか、考えたんだ。」
言うか言わないかと考えるディン、しかし言う事を選んだようだ。
「デインが昔封印されてたのは三宅島、蓮が住んでたのも三宅島。偶然にしちゃ、出来過ぎやしていないか?」
……そうかな?……
「それに、魔物になっててもおかしくない量の闇を抱えてた。他人の闇、というのを抱えてた、これも、お前と一緒だ。」
……。
デインは何か言ってくるわけでもなく、ディンの推理を聞いている、それは図星だからなのか、言い返す程の事ではないからなのか。
「トリガー、だな?」
……ディンなら、何とか出来ると思ったんだ。……
「確かに俺の剣なら蓮の闇だけを切ることが出来る、でもな……。」
……?
「それは蓮の心を壊しかねない、あの子の心は微妙なバランスで保たれてる。だから、今それをやっちまったら蓮の心が耐え切れない。」
……それは……
ディンの言葉に、デインは声に翳りを見せる、それがわからないほど若くはないが、しかしそうして欲しい理由があった。
……でも、トリガーになっちゃったら……
「蓮は確実に耐えられない、わかってる。でも、今はそれをしたくはない。蓮は…、蓮は俺を兄と言ってくれる。だから、今は壊したくない。」
……優しいんだね、ディンは……
「臆病なだけだよ。竜太にあれだけ守りたいものの為に動けって言っておきながら、自分はそれを壊しかねない存在を許してるんだから。」
悲し気な顔のディン、最初それに気づいた時には、もう蓮もその「守りたいもの」になってしまっていた。
だから、最善と言える選択肢を取れない、半年という短い期間だったが、兄弟として過ごしてきた蓮。
そんな蓮が壊れるのを、ディンは良しと出来ない。
「だから、この旅で闇を癒せたらいいと思ってるんだ。仲間と一緒に戦って、自分の闇に打ち勝つ。それが一番いい、そう思う。」
……そうだね……
「でも、それが出来ずにトリガーになったら…。俺は、蓮を切らなきゃならない。そん時は、年輪の世界の守護者として覚悟するさ。」
したくはない、したくはないがするしかない、そんな響きが、その言葉には含まれているようだ。
……ごめんね、ディンに押し付ける形になっちゃって……
「いや、いいんだ。俺にしか出来ない役目だからな、そこはわきまえてるつもりだ。」
ディンはそういうと転移を発動し、その場から消えた。
……ディン……
デインは悲し気にそれを見送り、眠りについた。
「ただいま、蓮。」
「おかえりなさーい!どこ行ってたの?」
「ちょっとデインの所にな。」
「デインさんかぁ、会ってみたいなぁ…。」
蓮にとってデインは、自分とディンを引き合わせてくれた恩人だ、会ってお礼が言いたい、というのも自然な話だろう。
「まあそのうち会えるさ。」
「やった!」
嬉しそうに笑う蓮を見て、ディンは少しだけ悲し気な顔になった。




