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聖獣達の鎮魂歌~Requiem~  作者: 悠介
壱章 冒険の始まり

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9話 四つ首の鷲

「……ここは……?」

 目が覚めると、黄緑色の淡い光に包まれた空間にいた。

 眠りについた時は、林道のすぐ横の茂みのはずだったが、と修平は頭に?を浮かべる。

「やぁ修平君!こうして会うのは初めましてだね!」

「えっと、昨日の……ってうわぁ!?虎!?」

「驚かないで!君の敵じゃない、僕が白虎だよ!」

「君が、白虎……?」

 唐突に目の前に淡い光が零れ出し、虎の形になる、修平は驚き逃げようとするが、ふわふわと浮いている為動くこともできないが、そんな中自己紹介をされ、ハッとなる。

「落ち着いて?僕は君の力になる為に現れたんだ。」

「う、うん……。」

 自分より一回り大きいその虎に少し怯えるが、しかし敵意はないらしい、と認識して、とりあえずは警戒心を薄める修平。

「それで、白虎君はどうして俺を?」

「君には色んな力が眠ってる、それを目覚めさせる手助けをしに来たのさ!」

「色んな力?」

「例えば……、魔法とか!」

 そういえばウォルフにも言われた、魔法を使う素質のようなものがあると。

「俺も魔法使えるの!?」

「うん、白虎の守護者の家系は代々魔法が苦手らしいんだけど、使えないことはないよ!」

「そう、なんだ……。」

 白虎としてはフォローをしたつもりなのだろうが、その話を聞いて少ししょげる修平、学校でも勉強は苦手だったが、それは魔法にも影響するのか?と考えてしまう、修平の中では、魔法が使える=頭がいいという風に捉えてしまっているからだ。

 魔法という言葉を漫画やアニメで見ていた際は、賢い人間や種族が使うもの、という認識だ。

「使えないわけじゃないんだよ!例えば武器に魔法を付与するとかが得意だったんだって!」

「そう、なの?」

「うん!僕は五百年前に生まれたから先代から聞いた話なんだけど、白虎の守護者は代々魔力を纏う戦い方をしてたって話だよ!」

 武器に付与、と言われても修平は基本素手だ、付与する武器がない、と少し考えたが、その時思い出す。

「そういえば、グローブもらってたんだった!」

「そうそう!彼の作る武器は魔力を宿しやすいから使えるよ!」

「彼って、ウォルフさん?」

「ううん、セレンって人!彼の作る武器は強いんだって青龍が言ってた!」

 無邪気な子供の様な白虎、修平には、とても五百年も生きている神だとは思えなかった。

「えっと、白虎君……。」

「なんだい?」

「えっと、その……。君、若いんだね?」

「そうだよ!玄武なんてもう五千歳になるんだって!僕の十倍も生きてるんだよ!すごいよね!」

 神なのに年齢がある事に驚く修平。

 神とは普遍的な存在で、ずっといるものだと思っていたから、年齢や寿命がある、というのは驚きだろう。

「えっと、神様なのに年齢があるの……!?」

「うん!僕は一番若くて、青龍が二千歳くらいで朱雀が千五百歳くらいだったかな?」

「へ、へぇ……。」

「それとね、僕達に力を貸してくれてるデインっていう神様がいるんだけど、デインは一万歳超えてるんだってよ!」

 デイン、という名前に引っかかりを覚える修平、確か、どこかで聞いた事がある名前だ。

「えっと……。」

「どうかした?」

「うん、デインって何処かで聞いた事がある名前だなって……。あ!」

「思い出した?」

 ハッとする修平、思い出す、その時の事を。

「デインさんって、もしかしてディンさんと一緒に戦ってた人!?」

「えーっとね、確かデインは元々は君達の居た世界の住人で、こっちの世界に眠りにつくために飛んできたって話だったかな?」

「あの人、神様だったんだ……。」

 デインも会った事がある、ディンと共に魔物を討伐する存在だった、確か魔物に襲われかけた所を助けられ、話もしたはずだ、そのお礼を言った記憶が、修平には残っている。

「さて、と。そろそろ目覚める時間だね!また今度会おう!」

「え、聞きたい事がまだ……、んぅ……。」

 白虎がそういうとほぼ同時に、急激に眠気に襲われる、その眠気に抗えず、修平は意識を手放した。


「……、ふあぁ……。」

「おはよう修平君、よく眠れたかね?」

「あ、おはようございます。」

 目が覚めると、そこは林道はずれの茂みだった。

 ウォルフはすでに目を覚ましていたようで、馬に荷物を乗せ出発の準備をしている。

「あれ、昨日俺……。」

「どうかしたかね?」

「確か眠った後、白虎君に会って……。」

「ほほう、白虎神が交信をしてきたか。それで、彼の神はなんと?」

 えーっと、と思い出そうとする修平、寝ぼけ眼の寝起き頭だから、中々思い出せない。

「確か、魔法が使えるって事と、デインさんについて……。」

「デイン神か、まあ白虎神ならそれを知っていてもおかしくはないだろうな。」

「ウォルフさんも会った事があるんですか?」

「いいや、竜神王サンから聞いたことがあるだけだ。会った事はない、そもそも白虎神達四神は思念体だからな。俺は会った事も、交信をした事もないのだよ。」

 そういえば、まだ聞いていてない、と修平は思い、質問を続ける。

「竜神王、って誰なんです?」

「我々指南役を集めた張本人だ、この戦争を止めたがっている神だよ。」

「えっと、そうじゃなくて……。」

「あぁ、そういえば君は竜神王に会った事があるんだったな。竜神王サン、ディンアストレフに。」

 えー!と目を見開く修平、超常的な力の持ち主だとは知っていたが、まさか神だったとは、といった感じだ。

「ほんと、凄い人?なんだ……。」

「憧れるかね?」

「えぇ!そりゃ、あんな強い人憧れますよ!」

「そうか、それは良い事だ。が、彼はとても悲しいぞ?」

 ウォルフは何か知っている様で、笑いながらも何処か悲し気な声音で話す。

「彼は何千万年と生きる存在だ。愛する人間の家族がいると言っていたが、別れに必ず立ち会わなければならない。」

「そう、なんですか?」

「まあこの話は本人に会った時に直接聞きたまえ、今は移動し目的地に到着することが優先だ。」

 そういうとウォルフは馬に乗り、修平にも乗るように促す、修平は何か思う所がありそうな顔をしながら、それに従う。

「では、出発だ。」

「はい!」

 再び始まる旅、馬に揺られながら、二人は標高の少し低いであろう山の方へと向かっていった。


「そういえば!俺以外にも!仲間っているんですか!?」

「いるぞ、四神の使いが他に三人、デイン神の使いが一人だ。」

「そう!なんですか!」

 まだ二日目の乗馬で慣れていない修平が、言葉を飛ばし飛ばしにしながら問い、ウォルフはそれに丁寧に答えていく。

「デイン神の使いは十一歳だが、君達より強いだろう。何せあの竜神王サンが直々に指南をしているのだからな。」

「えぇ!?十一歳!?」

「そうだ、だが侮ってはいけないぞ?デイン神の力を受け継ぎ、竜神王サンから術を学んでいるんだ。そんじょそこらの守護者よりよっぽど強い。それに、俺達指南役からも、それぞれ得意分野を教わっている、それなりの強さではあるだろうな。」

「へぇー!」

 感心する修平、十一歳という少年が戦場に出る事はもちろん、あの桁違いの力を持つディンの修行についていけているというのが凄い、と考える。

「他の人達って!何て名前なんです?」

「四神の使いが確か、猿田彦俊平君、鈴ヶ峰清華ちゃん、心月大地君だったか。」

「女の子も!いるんですか!」

「あぁ、君と同い年の子だがね。デイン神の使いは風眞蓮という名の子だ。」

 その名前を聞いて、何か引っかかる修平。

 確かどこかで聞いたことがあるような、テレビか何かで見たような。

「あ……!その子って半年くらい前に行方不明になってませんでしたっけ!?」

「そうだな、こちらに来たのは確か半年ほど前のはずだ。」

「じゃあ、あの子……。」

 思い出した、確かテレビでやっていた、両親が惨殺され息子が行方不明、誘拐されたのではないかと話題になっていた。

 結局行方がわからず、住んでいた三宅島から出たという目撃情報すらなく、神隠しにでもあったのではないか、とテレビで実しやかに報道されていたが、すぐに報道されなくなってしまった、修平は真面目に神隠し説を信じていたが、それは違った様で、正しかった様だ。

「じゃあ!両親殺したのって!まさかディンさんが!?」

「いや違う、彼は自分で自分の両親を殺したんだよ。ずっと虐待され続けた末に、な。」

「そんな……!」

 虐待についてはニュースではやっていなかった。

 自分の親を殺したのだ、余程酷い虐待を受けていたのだろう、そう想像するのは容易だった。

「まあそれもいずれ本人から聞けるだろう、今は目の前の事に集中したまえ。」

「え……!?」

「魔物の気配がする、恐らくここいらを仕切っているボスか何かだろう。」

 気が付けば山の中腹、とりあえずの整備された道を走っていた二人、そんな中、ウォルフは気配を研ぎ澄まし、探る。

 すると、山の頂上の方から何か良くない気配を感じた。

「昨日戦った魔物よりも強い、今の君では勝てないかもしれない。それでも戦うかね?」

「……、はい!」

 魔物がいると言う事は、また人間が犠牲になる可能性があると言う事、それは修平には許せない。

 例え自分より強いのだとしても、戦わない理由にはならない、強くならなければ、世界を、妹を守れないのだから。

「では馬を降りて行こう、ここからは徒歩の方が楽だ。」

「はい!」

 二人は馬を降り、木々の生い茂る山頂の方へと歩き始めた。


「そろそろ到着だな。修平君、準備をしたまえ。」

「はい!」

 段々と木が減ってきて、岩山を歩いていた二人、山頂が見えてきたが、一つおかしな点があった。

 山頂部分、丁度一番上に鳥の巣のようなものがあったのだ。

 それも自分達よりも何倍も大きい、どんな鳥ならばそんな巣を作れるのかという程の、そんな巣だ。

「あれが魔物の巣と言った所だろう、すぐ来るぞ。」

「……はい!」

 二人が会話をしたその刹那、ピィィと大きな鳴き声がした、それはすぐ近くで聞いたら鼓膜が破けかねない程、大きな音だった。

 ウォルフは背中に背負っていたケースを地面に置くと、封を開ける。

「さて、雑魚が何体かいるだろうが、そちらは俺が担当しよう。修平君、君はボスだけに集中すると良い。」

「それは……?」

「マクミラン TAC-50、俺の愛銃だ。」

 ウォルフは愛銃であるマクミランというスナイパーライフルを取り出し、眼鏡を外し胸ポケットにしまっていたスポーツサングラスをかける。

 それとほぼ同時に、羽ばたきの音が聞こえた、修平がそちらを見やると、人間の二倍程度の大きさの、四つ首の鳥がこちらを睨んでいる様だった。

「あれが、魔物のボス……。」

「恐らく、ここら辺を取り纏めている魔物だろう。」

「勝てる、のかな……?」

「勝つしかないのだよ、君達は。」

 ごくりと生唾を飲み込む修平、人間大の魔物相手には一撃で倒せたが、今度は自分より倍以上の体躯はある魔物だ。

 尻込みするのも仕方がないが、しかしこれくらいの魔物は倒せないと話にならない、とウォルフは考える。

「さあ、構えたまえ。」

「ふぅ……。はい!」

 深く深呼吸をし、構えを取る修平、それとほぼ同時に四つ首の魔物が再び鳴き声を上げ、二つ首の魔物が十数体程現れる。

「さあ、久々に楽しむとするかね。」

 BANG!

「うわぁ!?」

 修平のすぐ横から聞いたことがない爆音が鳴り響き、思わず驚きの声を上げる、ウォルフが先手を打ちスナイパーを発砲して、一発で二つ首を一体仕留めたのだ。

 ピイィ!

 四つ首が怒りの鳴き声を上げ、滑空してくる、修平は少しひるんだが、しかしそれではやっていけないと気持ちを持ち直した。

 一番得意な構えを取り待つ、接近してくる四つ首は、近づけば近づくほどそ異常な大きさが伺える。

「てやぁ!」

 真正面から来た四つ首に、正拳突きを繰り出す修平、それは四つ首の頭の一つにヒットし、四つ首が怯んだ、かのように見えたのだが、しかし。

「うわぁ!」

「……。」

 四つ首の突進は収まらず、吹き飛ばされる修平、五メートル程吹き飛び、背中から岩肌に体を強く打つ。

「っつ!」

 呼吸が乱れる、息が吸い込めない、肺に衝撃が走り、パニックになる。

「……。」

 BANG!

 ウォルフはそれを気に止めつつ二つ首の魔物を撃ち続ける。

 一度打ち負けただけで死んでしまうようなら、それまでだと考える、そして信じていた、河伯修平という男はここで終わるような男ではないことを。

「っつぅ……。」

 そんなウォルフの心情を察してか否か、それはわからなかったが、修平は慎重に呼吸を整え始めながら、立ち上がる。

「まだ、まだだ……!」

 四つ首は旋回し、再び突進してこようとしている。

「はぁ、はぁ。」

 呼吸は乱れたままだったが、再び構える修平、しかしこのままでは、先ほどと同じ結果が待っているだろう。

 何か手立てはないのか、と考えたその時。

「修平君!僕の力を使って!」

「白虎、君……?」

「僕の力があれば、あんな魔物一撃さ!」

「君の、力……。」

 声が聞こえた、それは昨日の晩話した白虎の声で、修平は自然とどうすれば良いのかを理解する。

「ふぅ……。」

 深く息を吐き、集中する、するとどうした事か、修平の手の周りから風が吹き荒れる。

 先祖が使っていたという魔法、その使い方。

 修平は原理も何も理解していなかったが、遺伝子に刻まれたそれを自然と発現する。

「来い!」

 四つ首が旋回し、再び突進してきた。

「でやあぁ!」

 修平は息を深く吸うと、腰に溜めていた拳を思い切り振り抜いた。

 四つ首の頭の一つに当たったその拳から、風が吹き荒れる。

 その風は四つ首を包むように吹き抜け、そしてそれは風の刃となる。

 ピイィィィィィ!

 四つ首が風の刃によってずたずたに引き裂かれ、霧散した。

「や……、った……!」

 四つ首が霧散したと同時に、その場にバタリと倒れる修平。

「おやおや、魔力を使い疲れたか。それとも緊張感が無くなってしまったか。」

 そこに、二つ首を倒し切ったウォルフが歩いてくる。

「やれやれ、この程度で倒れていたらこの先持たないぞ?」

 そう言いはするものの、よくやったと笑うウォルフ。

 スナイパーライフルをケースに戻し背中に背負うと、修平を担いで元来た道を戻り始めた。


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