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聖獣達の鎮魂歌~Requiem~  作者: 悠介
壱章 冒険の始まり

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4話 青龍の守護者

「貴方が鈴ヶ峰清華さんですね。」

「貴方は?」

「私は青龍、この島国の四神と呼ばれる者の一柱です。」

「青龍……、何かどこかで聞いたことがあるような……。」

「えぇ、御伽噺か何かで聞いたことがあるのではないでしょうか?」

「姿が見えないのは何故です?」

「今はまだその時ではないからですよ、そのうちまみえる事でしょう。」

「私はどうしてしまったのかしら……。」

「貴女は私の守護者、お父様から何かお聞きになられていないの?」

「そういえばお父様は何か知ってる様でしたが……。」

「聞いていないのですね、それならば説明は彼女に任せましょう。」

「彼女……?」

「えぇ、彼女にお任せします。ではまた会いましょう、清華さん。」

「んぅ……。」


「ここは……?」

「ここはディセントの東端、青龍の祠よ。」

「貴女は先ほどの……。」

「リリエルよ、貴女の警護を務めるわ。」

 視界がぐにゃりと動いたかと思ったら何かふわふわとした空間にいて、そこで意識を失ったと思ったら今度は木造の部屋にいた。

 そして目の前には先ほど出会ったばかりのリリエルがいた。

「リリエルさん、警護とは一体何のことなんです?先ほどの声の青龍というのと何か関係が?」

「そうね、では一から説明しましょうか。」

 そういうとリリエルはその場に座り、清華にも座るように促す、剣道着に胴と垂という服装の清華が、それに従い正座するとリリエルは話し始めた。

「貴女はこの世界、ディセントの守護者の末裔なの。千年前にこの世界で戦争があった、その戦争を収めた人間の。」

「ディセント……?」

「この世界群の中でのこの世界の名称よ、年輪の世界と呼ばれるこの世界群の中心、表裏のある世界の、裏の世界の名前。」

「世界群?年輪の世界?」

「そのあたりはディン君に聴いて頂戴。それでこの世界が存亡の危機に瀕している、そして貴女は選ばれた。」

「ディン君とは……、いったい何者なのです?」

「私達警護者をこの世界に集めた人の名前よ、そのうち会う事になるわ。」

 次々に説明をされ、着いて行けない清華、しかしリリエルはそれを意に返さず、話を続ける。

「私の目的は、貴女を育てながら中央の屋敷まで連れていく事よ、理解出来ているかしら?」

「はぁ……。私が選ばれ、それで、この世界?が危機に瀕しているのですね?」

「まあ、今はその程度の解釈で構わないわ。」

 訳が分からないが、それでも魔法のようなものに触れ、知らない場所に連れてこられたのだから、少し理解できる。

 リリエルは、清華が考えるのをやめたのを確認すると、清華に向け刀を差し出した。

「これが貴女の武器、剣道をやっていたのだから使えるでしょう?」

「これは……。日本刀、ですか?」

「ええ、そうよ。」

 清華はそれを受け取り、鯉口を切り刀身を見る。

 それは、清華の瞳によく似た深い青色の刀身をした日本刀で、ずっしりと重さを感じる。

「日本刀は何度か触ったことはありますが、実戦は……。」

「実戦は私が教えるわ、それで問題ないでしょう。」

「わかり、ました……。」

「それじゃあ行きましょう、時間は早くするに越した事はないわ。」

「えっと、その、リリエルさん。」

「何かしら?」

 戸惑いがちにリリエルを見る清華、何か言いたげだ。

「あの、まだ、わからない事だらけなのですけれど。その、宜しく、お願いします。」

「ええ。」

 それだけ言うとリリエルは祠を出て行ってしまい、清華は慌ててそれに従った。


「騒がしいわね。」

 リリエルと清華が祠の外に出ると、祠のある丘の下に村が見えた、普段なら穏やかな村なのだろうが、リリエルには声が聞こえてくる。

 これは。

「どう、されました?」

「人と人が争ってるわね、しかも大勢。」

「戦争、という事でしょうか……?」

「それに近いわね、行きましょう。」

そういうとさっさと丘を降りていくリリエルと、それについて行く清華。

「何が起こっているんです……!?」

「だから、人と人が争い合っているの。恐らく私達を迎え入れる村の人と、それに敵対する村か何かの争い、かしらね。」

「そんな、世界が危機に瀕しているというのに、人同士で争っているというのですか……!?」

「世界の滅亡を願う人間だっているのよ、覚えておきなさい。」

 早足で歩くリリエルに、追いつくのに精いっぱいな清華、二人は丘を降りると、村へとたどり着いた。


「あれは、御使い様では!」

「御使い様がいらっしゃったぞ!」

 村に着くと、そこはまさに戦場と化していた、農具を持って戦っている陣営と、剣や魔法と思わしき炎や光を使っている陣営が争っていた。

 農具を持っている陣営はこの村の者達なのだろう、清華とリリエルを見つけると縋りつくようにそばに寄ってきた。

「御使い様!我々はマグナの神の僕達から攻撃を受けております……!どうかご助力を……!」

「何が起こっているのかしら?」

「わ、わかりませぬ……。突然にマグナの神の僕と名乗る集団が、襲い掛かってきたのでございます……!」

「貴方達はこの村の人間なのね?」

「そ、そうでございます!」

 リリエルは一人納得したように目線を投げる、そちらでは魔法の炎により燃やされている、村人と思わしき人物がいた。

「じゃあ清華さん、私達で追い払いましょう。」

「えぇ!?人を相手に日本刀で戦え、と!?」

「そうよ、マグナというのはこの世界の混沌の原因を作っているの。だから、守護者を生み出すこの村を襲ったんでしょう。」

「ひ、人なんて斬れません……!」

「あら、そしたらこの村の人達は全滅よ?」

 そういいながらリリエルは走り出す。

 村の人間達の間を潜り抜け、飛び交う魔法を潜り抜け、あっという間にマグナ側の陣営の懐に乗り込む。

「貴方達に恨みはないけれど、私の目的を邪魔するなら容赦はしないわよ。」

「な、なんだこの女は!?」

「何でもいいのよ、貴方達はここで死ぬのだから。」

 そういいながら、跳躍するリリエルは、マグナ側の陣営の男の首に腿をかけると、そのまま思い切り捻り上げた。

 ゴキッという音が鳴り、男の首が向いてはいけない方向へと捻じ曲がる。

「こ、殺せぇ!我らの神の名のもとにぃ!」

 陣営の長と思しき壮年の男性が怒鳴る。

 陣営の者達は一斉にリリエルに向かい、魔法を放ち剣を振るうがしかし、軽やかな動きでリリエルはそれらを全て躱す。

 そして一撃必殺の手刀や格闘技で、次々に陣営の者達を屠っていく。

「……!」

 清華はそれを見ている事しか出来ない、ぽかんと口を開き、辛うじてリリエルの動きを目で追っている。

 否、リリエルの動きを視切れている訳ではない、本当に辛うじて、リリエルの動きを目が追っている、というのが現状だった。

 それだけの速度、それだけの技のキレ、清華に殺しの技はわからなかったが、それを覚える為にどれだけの鍛錬を積んだのだろう、と想像が付かない程、その技のキレはすさまじかった。

「魔法を使える割には弱いのね、もう少し歯ごたえがあると思ったわ。」

 そういいながら、まだ年端も行かないであろう、10歳程度の魔法使いの少年の首を捻じり折るリリエル。

 少年は悲鳴を上げる間もなく絶命し倒れる、その様を、清華はただ見ている事しか出来ない、加勢する事も止めに入る事も、何も出来ないでいた。

「こ、殺せぇ!」

 壮年の男が焦った声を上げるが、しかしそれは遅かった。

 リリエルがその壮年の首をへし折り、マグナの陣営は壊滅してしまった。

 死屍累々、数十の死体がリリエルの周りに転がっていて、その真ん中で呼吸一つ乱さずにリリエルは立っていた。

「御使い様が我らを守ってくださったぞー!」

「おぉー!」

 村人達が喜びの声を上げるが、清華はそこには混ざる事が出来なかった。

 驚愕、というよりも忌避、平気な顔をして人を殺して見せたリリエルに対する、忌避感。

 人道を第一とする清華にとって、最も遠い存在、それがリリエルだと、嫌という程認識させられた。

「清華さん、貴女戦えないのね。」

「……!」

「そんなのでこれから先やっていけるのかしら?一人前にして来いと言われたのだけれど。」

「人を……、人を、殺したんですよ……!?」」

「それがどうしたの?」

 握りこぶしが震える、目の前にいるこの人は、人を殺しても何も思わないのか、罪悪感はないのか、後悔はしないのか、そんな感情が、清華の中をぐるぐると回る。

「貴女、この村の人が全滅してもよかったの?」

「それだって……!違うやり方が、あったはずです!」

「ないわ、少なくとも私は知らないわね。」

「貴女は……!何とも思わないんですか……!?」

「えぇ、何も。村人を守るためには殺すしかなかった、当然の事でしょう?それ以外の方法を私は知らない、そして貴女は動けなかった、村人達では相手にならなかった、なら殺す以外に方法があったのかしら?」

 さらりと言ってのけるリリエルに、改めて愕然とする清華、生きている世界が違いすぎるのだ、このリリエルという女性と自分は。

 この女性は、目的の為なら人だって殺す、それが当たり前なのだと、清華は考えてしまった。

 そして忌避する、その考えそのものを。

「さあ、村人達を弔うなら弔って、私達は旅の準備をしなきゃならなわ。」

「は、ははぁ。」

 村人達はリリエルの言葉に従い、死んでしまった村人を弔い始めた。

「ささ、御使い様はこちらへ……。」

「貴方は村長かしら?」

「はい、左様でございます。そちらの御使い様も、どうぞこちらへ……。」

「……。」

 リリエルはさっさと村長について行ってしまい、清華は一人取り残される、清華は死んでしまった村人や、マグナという所から来たという、リリエルが殺した人々に目を向ける。

 皆苦しんでいるような顔をしていて、人によっては丸焼きにされてしまっている。

 これが戦場なのか、と清華は一人考える、これからもこれを沢山見ることになるのか、これからもたくさん人が死んでいくのか、と。

「……。」

 違う、そうならないようにと、自分が呼ばれたのではないのだろうか。

 リリエルの言葉が正しければ、そのマグナという所を制し、戦争を止める為に自分は呼ばれたのではないだろうか、そう考え、清華はリリエルと村長の後をついていった。


「ささ、御使い様方、こちらへ。」

「お礼をいうわ、清華さん、貴女も休んだら?」

 村長の家に通された二人は、囲炉裏の前の座布団に座るよう促される。

 リリエルはすぐに座るが、清華はリリエルの隣に座るのが嫌だと感じてしまうが、村長にそれを気取られてはいけないと考え、渋々リリエルの隣に正座する。

「先ほどはありがとうございました、貴女方が居なければ今頃我々は全滅していたでしょう……。」

 老齢の女性の村長が、やれやれという顔をする。

「あの連中はいつ襲ってきたのかしら?」

「御使い様方が現れるつい数十分前でして、突然に現れ襲い掛かってきたのです。」

「それは私達が現れた時に何か困る事があるからかしら?」

「恐らく、これを渡されるのを良く思わなかったのでしょう。」

 そういって村長は古い木箱を取り出し、蓋を開けた、その中には青色をし、中心に五芒星の描かれた勾玉が入っており、きらりと囲炉裏の炎で煌めいている。

「これは?」

「千年前に御使い様が着けられていたという、青龍神の守りでございます。」

「それを渡されるのがいけなかったのね、それは清華さんに渡す手筈だったのね?」

「左様でございます、御使い様が現れた際に渡すよう、先祖代々受け継いできた物でございます。」

 村長はそれをリリエルに向け差し出すが、リリエルは受け取らない。

「これは貴女の為の物よ、清華さん。」

「私、ですか……?」

「えぇ、青龍の守り手は貴女なのだから。」

 そう言われた清華は、差し出された勾玉を手に取る。

 するとどうした事か、暖かい何かが勾玉から流れ込んでくる様だった。

「これは……。」

「青龍の力が籠められている、つまり貴女の助けになるようにと青龍が用意した物でしょう。」

「よくご存じで……。所で、御使い様はお一人と伝承には残っていたのですが、貴女様はどういったお方なのです?」

「私は彼女の警護役よ、道中の修行をつける為の。気にしないで頂戴、それだけの関係性よ。」

「それであれほどの強さを。いやはや、そのお若さで途方もないお力をお持ちになられている……。」

 村長は納得出来たという風に首を縦に振る。

「それより、宿を用意してくれないかしら?明日から動きたいの。」

「承知致しました、少々お待ちください。」

 村長はそれだけ言うと、宿を手配しに外へ出ていった。

「……。」

「貴女の意見は貴女の意見よ、私には関係ないわ。」

「……。」

「まあ、それでも私の意見が間違っていると言いたいのなら、強くなる事ね。」

 リリエルはそれだけ言うと黙って村長について行ってしまい、清華は一人悶々と考えを巡らせるのであった。


「さあて、うまくやってるかどうか。」

「どうしたの?お兄ちゃん。」

「いや、性格的に合わなそうな組み合わせにしちまったなって思ってな。」

「どういう事?」

 外園邸にて、ディンと蓮は二人、紅茶を飲みながら茶菓子を楽しんでいた、そんな時に、ふとディンが呟いたのだ。

「俺と蓮とは違ってな、仲良くできなそうな子達もいるってことだ。」

「そうなの?」

「リリエルさんは冷徹だからな、清華ちゃんとはうまくいかないんじゃないか?」

「冷徹って?」

「怖いって事だよ、リリエルさんは目的の為なら手段を選ばないから。」

「怖い、かなぁ……。リリエルさん、僕は好きだよぉ?」

「それは蓮が優しい子だからだよ、リリエルさんは敵に対して容赦しないと思うからな。」

 蓮に対しては、そこまで非情な面を見せていなかったリリエル、そのリリエルに対して、怖いという感情を抱くのがいまいち理解出来ない蓮。

「まあ色々とあるんだよ、大人にもな。」

「そうなんだぁ、大変なんだね。」

「そうだぞぉ?蓮もそのうちわかる日が来るさ。」

「ほんとぉ?」

「あぁ。」

 そういって蓮の頭を撫でてやると、蓮は嬉しそうに笑った。


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