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聖獣達の鎮魂歌~Requiem~  作者: 悠介
壱章 冒険の始まり

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3話 ゴブリンファング

 次の日の朝、陽の光と共に目を覚ました俊平は、改めて渡された刀を見やる。

 それは紅いの刃に紅い鞘、黒い柄をした直刀だった、これをセレンが作ったのかと、感心する。

「お、起きてたか。」

 そこに先に起きて準備をしていたセレンが現れる。

「お、刀見てたんだな。どうだ?俺の傑作は。」

「やっぱセレンさんが作ったんだな。」

「そうだぞ?おめぇらの為に魔力籠もった鉱石で作った特注だ。」

「魔力って、なんなんだ?」

 一昨日の勾玉の件と言い、今回の刀といい、魔法と魔力の違いが、いまいち理解できない。

「魔力ってのはそうだなぁ……、魔法を使う為の力ってとこかな。魔法の原型っていう感じかな?」

「なるほど……、その魔力ってのは、俺にもあんのか?」

「あぁ、あるぜ。聖獣の守り手の家系は代々魔力を受け継いでるって話だ。」

「じゃあ俺も魔法とか使えんのか?」

「訓練すれば使えると思うぜ?」

 なるほどと首を振る俊平、戦う事を覚悟した以上、強くなればなるほどいいのだろう、と。

「魔力を魔法に変えんのも、その勾玉が役に立ってくれるだろ。」

「そう、なんか?」

「あぁ、その勾玉は戦う為の全てにアシストするような魔力が込められてる、魔法も例外じゃねぇだろ?」

「なる、ほど。」

「さ、魔物退治に行こうぜ、いい経験値稼ぎだからな。」

 そういうとセレンはさっさと宿を出て行ってしまう、俊平は一人、少し考えていた、その時だ。

「やっと戦う覚悟をしたか、軟弱者。」

「その声、一昨日の!?」

「痴れ者め、我が法勾玉を身に纏っておきながらあの戦いぶりとは情けないと思うておったが、ようやく戦う覚悟を決めたな、ならば我の力を授けよう。」

「お前の、力?」

 どこからともなく声が聞こえてきたと思ったら、目の前に手のひら大の紅い鳥が現れる。

 そして俊平に向かい翼を動かすと、紅いオーラのようなものが俊平を包む。

「勾玉の力を最大限に引き出した暁には、我が奥義を授けよう。」

「あ、ありが、とう、な。」

「痴れ者よ、強くなるがよい。」

 紅い鳥、朱雀はそれだけ言うと消えてしまった。

「……。」

 勾玉を通して、力がまた湧いてくるのを感じる、朱雀の力が、俊平の勾玉に加えられたのだ。

「サンキュ、頑張ってみるわ。」

 俊平はそういうと、セレンの後を追い宿を出ていった。


「さ、て、と。魔物が出てくんのはどこだ?」

「御使い様、おはようございます。」

「お、織江さんじゃねぇか。魔物ってどこにいるんだ?」

「はい、魔物はここから北東の洞窟に巣食っているようです。討伐をお願いできますでしょうか?」

「あぁ、いいな?俊平。」

「おう。」

 宿から俊平が出てくると、織江とセレンが話していた、丁度セレンが出てきた時に織江が現れたらしく、魔物の情報を聞くセレン。

 織江に地図と共に魔物の出現場所を伝えられ、そこにマーカーを引くセレン。

「ほんじゃ、いってくるわ。」

「お気をつけて行ってくださいませ。」

「あいよ、行くぞ俊平。」

「おう。」

 二人は地図に記された方向へと歩いて行った。

「お気をつけくださいませ、あそこには魔物の長がおります故……。」

 それを見送った織江は、心配そうにぽつりと呟いた。


「ここか。」

 三十分ほど歩いて、二人は大きな洞窟の入り口にたどり着いた。

 道中は特に魔物に遭遇することもなく、あっけなく着いたものだから少し驚きだ。

「ここに魔物が……。」

「怖いか?」

「……。」

 怖くないと言えば嘘になる、しかし、覚悟を決めた以上はやるしかない。

 昨日は戦えた、ただ、それがいつまでビギナーズラックとして通じるか、今の自分の実力で何処まで出来るのか、それはわからない。

 ただ、やるしかない、やると決めた以上、やるしかないのだ。

「行く。」

「おう、そうか。」

 俊平はそういうと一歩、前へと踏み出す。

「あ、そういや明かりとかどうすりゃいいんだ?」

「あほかおめぇ……。」

 うっかりという感じで聞いた俊平に思わず突っ込むセレンは、腰に背負った荷物から松明を取り出すと、それに火を点ける。

「これでいけるだろ?」

「あそっか……。」

 セレンが前に立ち、洞窟へと入っていく二人、洞窟はなかなかに広いらしく奥は見えず、何やら獣臭のようなものがする。

「行くか。」

「おう。」

 二人は洞窟の中へと入っていく、その後ろを、何かが追いかけてきている事に気付かずに。


「なかなか広いなここ……。」

「そうなのか?」

「あぁ、空洞から鉱石の声が聞こえるけど、結構中の方だからな。」

「鉱石の声?」

 セレンの言葉に?を浮かべる俊平。

 それもそうだ、鉱石の声などという不思議ワードが出てきたのだから。

「あぁ、俺鉱石の声が聞こえるんだよ、特異体質ってやつかな?」

「特異体質……?」

「まぁ、聞こえるもんは聞こえるってこった、あんま気にすんな。」

「なる、ほど?」

 聞けば聞くほど理解が追い付かない俊平、そういえば育て役だということ以外、ほとんど何も知らない。

「とにかく中進んでくぞ、あんまり時間もかけらんねぇからな。」

「お、おう。」

 まあ後々知っていけばいいだろうと考える。

 今はそれよりも、自分の経験値を増やしていかなければ、と。

「すぐに出てくるぞ、ほら。」

「マジか……!」

 洞窟を少し進んでいくと、そこには大量の魔物がいた、所謂ファンタジーアニメで見たことがある、ような気がする人型の魔物だ。

「こいつらはゴブリン種だな、集団で行動して獲物を追いつめる、となると……。」

「う、後ろにもいやがる!?」

「だろうな、罠に嵌ったってわけか。」

 後ろからの足音に気付いた俊平がそちらを見ると、そちらにも大量のゴブリンが。

「蹴散らしてくしかねぇな。」

「こ、この量をか!?」

「他に方法あるか?」

「……。」

 生唾を飲み込む俊平、昨日は魔物が一匹だったからまだよかったものの、今回は数十匹といる。

 それを二人で相手しなければならないというのだから、恐怖するのもおかしくはないだろう。

「刀抜け、戦うぞ。」

「お、おう……。」

 セレンは脇差を一本抜いており、構えている。

 俊平も急いで紅い刀身の刀を抜くと、震える手で構える。

「俺が後ろをやる、おめぇは前をやれ。」

「わ、わかった。」

「じゃあ、行くぞ!」

 そういうとセレンはゴブリンの群れに突撃し、敵をなぎ倒し始める、それに呼応するかのように、ゴブリンたちが奇声を上げ、俊平に向け突撃し始めた。

「う、うわぁぁ!」

 悲鳴のような声を上げながら、俊平は刀をがむしゃらに振り回す。

 ゴブリンたちにはそれは当たらなかったが、威嚇としては機能しているようだった、ゴブリンたちは後退し、距離を取る。

「馬鹿野郎!そんな攻撃じゃ当たんねぇぞ!」

 後ろからセレンの声が響いてくる、セレンはセレンで元々非戦闘員な為か苦戦しているようだ。

「んなこと言ったって!」

「いいから一撃で仕留めろ!」

「わ、わかったっ!」

 そういわれ少し冷静になる俊平、刀を八相に構えなおす。

「一撃、一撃で……。」

 冷静に冷静にと、自分に言い聞かせる、すると不思議なことに、自然とゴブリンの動きがスローになっていく。

「てやぁ!」

 スローに見えたその瞬間、俊平はゴブリンに向け刀を振るった。

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

 ゴブリンの内の一匹が奇声を上げ倒れた。

「い、いける!」

 俊平はゴブリンの群れに向かい走ると、一撃一撃を加えていく、ゴブリンの群れは一匹ずつだが、俊平の刀によって倒されていく。

 それはセレンの攻撃より遅く、か弱い物ではあったが、しかし勾玉と刀の力もあってか一撃必殺の技となる。

「その調子だ!」

 セレンはゴブリンの群れをなぎ倒しながら、俊平の様子を見る、そして怒鳴るように応援をする。

「いいか!敵に行動させるな!」

「おう!」

 ゴブリンの相手もだいぶ慣れてきたのか、俊平の持つ本来の能力のおかげか、徐々に倒すスピードが上がっていく。

「よし!いける!」

 攻めきれると思ったのか、俊平は一気にスピードを上げていく、昔訓練したときのことを思い出しながら、それを順になぞっていく。

  勾玉によってブーストされているおかげか、俊平の攻撃は中々に威力が高くなっていた。

「お、いい調子じゃねぇか!」

 後ろの敵を片づけたセレンが、眺めながら笑う、本来の力はこれだけあったのかと、少し驚きながら。

「くらえぇ!」

 最後の一匹を斬る、ゴブリンは奇声を上げ、霧散するように消えていった。

「はぁ、はぁ、はぁ。」

「やりゃ出来るじゃねぇか、おめぇ。」

「そりゃ、修行は、してたから、な。」

 それと同時に息を切らす俊平、どうやら、だいぶ体力と集中力を使ってしまったようだ。

「こんくらいでへばってたら後が大変だぞ?ゴブリン種ってこたぁボスがいるはずだ。」

「マジ、かよ……。」

 その場にどさっと座り込む俊平、セレンは松明を拾い上げると俊平の傍により、しゃがみ込む。

「まあ、2回目の実戦でここまで出来りゃ上出来だけどな。」

 少し休憩を入れるかと、セレンが提案しようとしたその時。

「グオオォォォォォォォ!」

 洞窟の奥の方から、雄たけびが聞こえた。

「こりゃ、来るな。」

「来るって、なにがだ!?」

「ゴブリンのボスだよ。」

「ぼ、ボスぅ!?」

 ドスンドスンと音を立て洞窟の奥からそれは現れた、それは先ほどまでのゴブリンが自分たちと同じ程度のサイズだったのに対し、三倍程の大きさがあった。

「で、でかくねぇか!?」

「そりゃボスなんだから、でけぇだろ。」

「なんでそんなに冷静なんだよ!?」

「いや、そりゃ、なぁ?」

 セレンが言葉に迷っている間に、松明の明かりがゴブリンのボス、ゴブリンファングを照らす。

「や、やべぇって!」

「やばくたって戦わなけりゃ、死ぬぜ?」

 気が付くと後ろに何十体のものゴブリンの群れがいた。

「囲まれてるかんな、俺が後ろやるからおめぇはボス倒せ。」

「む、無理だって!」

「無理でもやるんだよ!」

 セレンが怒鳴る、狼狽えていた俊平はその言葉にハッとさせられ、刀を構えた。

 鼓舞された、と言うのには些か乱暴な言葉遣いだったが、しかし、やると決めた以上、この程度は出来て貰わなければ困る、とセレンは怒鳴った。

「これから先こんなんと比べもんにならねぇ敵がたっぷり出てくんだ、こんくらい倒して見せろ!」

「おう!」

 気合を入れ、ゴブリンファングに突撃する俊平。

「てやぁ!」

 一閃。

「ギャアァァァァ!」

 ゴブリンファングの左腕が宙を舞う。

「い、いける!」

 態勢を立て直し、構える。

「おりゃぁ!」

 ガキン!という音がなる、ゴブリンファングが右手に持った棍棒が、俊平の刀をはじいたのだ。

「うわぁ!」

 ゴブリンファングの腕力で吹き飛ばされる俊平。

「ぐっ!」

 洞窟の壁に体をうち、倒れる。

「うぅぅ……。」

 勝てない、そう感じてしまう、一撃加えられただけで、精神がぽっきりとおれてしまった気がする。

 戦闘経験の少なさ、実戦はこれで二度目、攻撃を喰らったのは今回が始めて、勝てないと本能的に感じてしまうのも、無理はないだろう。

「うぅ……。」

 ドスンドスンと音を立てながらゴブリンファングが近づいてくる。

 恐怖で体が震える、動けない、このまま殺されてしまうかもしれない、そう思った時だ。

「この痴れ者め!我が力を使わんか!」

「……?」

 脳裏に声が聞こえた。

「我が授けし力を使わんかと言っておるのだ!この愚か者!」

「あんたの、力……。」

「そうだ!我が朱雀の名の元に!今放つのだ!」

「放つ……、わかった……!」

 俊平は立ち上がる、まだ震えは止まっていない、恐怖を退けられてはいない。

 しかし、しっかりと立ち上がり、両手を前に翳す。

『スパイラル、リボルバーーー!』

 叫ぶ、その力の名を。

「お?」

 セレンがそちらを見るとそこには、何個もの火球を目の前に出現させた、俊平の姿があった。

 その火球は高速で放たれ、そして。

「ギャアァァァァァ!?」

 ゴブリンファングに命中し、その体を焼き尽くす。

「や……った……!」

 そしてバタリと倒れる俊平、ゴブリンファングが霧散するとほぼ同時に、気絶してしまったようだった。

「まったく、こんな調子でどうすんだぁ?」

 後ろのゴブリンの群れを退けたセレンが、やれやれと言った感じで気絶した俊平に語りかける。

「まあ魔法の使い方も理解したようだし、いっか。」

 そう言うと俊平を担ぎあげ、2人は村へと戻っていった。


「んぅ……。」

「お、起きたな。」

「セレンさん……、あの魔物は!?」

「おめぇ、自分で倒したのに覚えてねぇんか?」

「倒した……、俺が……?」

 俊平が目を覚ますと、そこは村の宿だった。

「そういえば、声が聞こえて……。」

「声?」

「多分朱雀の声、聞こえたんだ。それで……。」

「あの火の玉ぶっぱなしたって事か、なるほどな。」

 こくりと頷く俊平と、納得したようなセレン。

 俊平は、ゴブリンファングを倒したことを思い出したようで、少し口角が上がる。

「俺にも、出来たんだよな。」

「あぁ、あんだけ出来りゃ今は上出来だ。」

 セレンはそういうと部屋を出ていこうとする。

「さ、行こうぜ。早くしねぇと、他の奴らに遅れをとっちまうぞ。」

「おう!」

 俊平もそれについていく、道中まだまだ長そうだが、何とかやっていけそうだなと、少しだけ自信を持ちながら。


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