表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖獣達の鎮魂歌~Requiem~  作者: 悠介
壱章 冒険の始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/160

2話 初めての戦い

「んん……。」

 朝の光と共に目が覚める、陽が宿の窓から入り込み、俊平を照らす。

「夢、じゃねぇんだよな……。」

 昨日の出来事が、夢であってほしいと願いながら体を起こすが、そこは昨晩眠りについた宿だった。

 落胆、といえばいいのだろうか、戦わなければならないという事実に、改めて衝撃と落胆を感じる。

 なぜ自分なのか、なぜ鍛錬を積んでいる父親や姉ではなかったのか、そう、考えてしまう。

 伝承をきちんと聞いていて、修業に励んでいた姉であれば、自分などより役に立ったのかもしれない、猿田彦流という忍術、それを芯の奥まで叩き込まれていた姉の方が、適任だったのかもしれないのに、と。

 違う、それは逃げたいだけだ、姉だって俊平の現在を聞いたら、自分がと志願するだろう、父親も同じく、不甲斐ない自分より習熟した技術を持っている自分が、と志願するだろう、それでも俊平が選ばれた理由、がどこかにあるはずだ、と。

「お、起きたか。」

「えっと、セレンさん。」

「そうだ、起きたばっかでわりぃけどよ、これ渡しとくぜ。」

「これは……、刀?」

「そうだ、おめぇが戦う為に誂えた刀だ、魔力籠めてあるからある程度の力でも使えるぜ。」

 セレンは先に起きていたようで、俊平に向かい直刀を投げ渡す。それは60センチ程の短刀で、俊平が昔まだ鍛錬を積んでいた時に使っていた模造刀と、同じ程度の重さだった。

「戦うって言ったって、俺戦い方知らねぇ……。」

「それは俺がレクチャーしてやるから安心しろ、おめぇが戦えるようになるまで育てるのが俺の役目だからな。」

「……。」

 覚悟など決まっていない、迷いだらけだ、しかし戦わなければならない、と俊平は背中に直刀を背負う。

 それは俊平の体のサイズに丁度合っているようで、背負うとしっくりくる。

「よし、じゃあ出るか。」

「お、おう。」

 セレンはささっと持っていた荷物を背負うと、腰に脇差二本を差し部屋から出ていく。

 俊平もそれに従い、部屋を出ていった。


「村長さん、馬とか借りられっか?」

「馬でございますか、承知致しました。」


 昨日も訪ねた村長の家に向かい、馬を調達する2人、村長は使いの者に馬を用意するように伝えると、何やら倉庫のようなところに向かい、すぐに戻ってきた。

「こちらをお持ち下され。」

「これは?」

「千年前の戦争で御使いが着けられていたという勾玉でございます、旅のお役になるかと。」

 そういって渡してきたのは紅く光る首飾りだった。

 それは中に五芒星が描かれており、セレンには特別な魔力が感じられた。

「お、サンキュ。俊平、着けてくといいぞ。」

「お、おう。」

「終わり次第出るからな、さっさと着けろ。」

 セレンの言葉に従い、その場で勾玉を首からさげる俊平。

「村長さん、あと食料なんかももらっていいか?」

「その程度でしたらお幾らでも、他に必要なものはございますか?」

「いや、それだけでいい。」

「着けたけど……。」

「お、なかなかさまになってるじゃねぇか。」

 俊平が勾玉を着けると、確かに力が湧いてくるのを感じる、特別な物であると、魔術など一切知らない俊平がわかる程度には、魔力が強い品なのだろう、俊平はわからないなりに力が溢れてくる事を認識した。

「これ、不思議だな……。力が湧いてくるみたいだ。」

「そりゃそうだろうよ、特別な魔力が練り込まれてるからな。」

「魔力?」

「魔法って言った方がはええか?」

 魔力と聞いてはてなを浮かべる俊平だったが、魔法と聞いて納得する。

「魔法なのか……。」

「あぁ、魔法だ。」

 そういってセレンは先にと外に出て行ってしまった。

 魔法、についてはまだ知らない、自分の先祖が忍者として戦っていた事、それを元に猿田彦流は編み出されたであろう事、そして、この世界において、魔力とは一般的な何かをさすのであろう事、については理解した。

「……、あのさ、村長さん。」

「何でございましょう?」

「俺に、出来んのかな……。」

「出来ると信じております、私らは聖獣の御使いを信じております。」

「そっか……。」

 それだけ聞くと俊平は黙り、セレンの後を追い家を出ていった。

「ええ、信じておりますとも、たとえどんな困難でも立ち向かい、立ち上がってくださると。」

 村長は一人、ぽつりと言葉を口にした。


「お、来たか。馬乗ったことあるか?」

「えっと、昔訓練で何回か。」

「そか、なら平気だな。」

 外ではセレンが2頭の馬の前で待っていて、村人から食料を包んだ風呂敷を受け取っていた。

 馬には鞍がつけられていて、さすがに裸馬に乗る必要はなさそうだ。

「さてと、行くか。」

「行くって、どこ行くんだよ?」

「この国の中央の屋敷だ。俺達は今南端にいるから、急がねぇと他の奴らより遅れちまうぞ?」

「そう、なんか。」

 セレンが馬に乗ると、俊平もそれに倣い馬に乗る、馬に乗ったのも何年ぶりだろうか、きちんと修行に参加したのは何年前だろうか、そんなことを考えながら、俊平は馬にまたがった。

「よし、出発!」

 セレンが馬に鞭打つと、馬は走り出した。

「うわっ!」

 俊平は馬にしがみつくように掴まり、落ちないようにと必死になる。

 かくして冒険の旅は始まった。


「うわぁぁ!」

「なんだ?」

「魔物だぁ!」

 朱雀の村から3時間ほど進んだところで、叫び声が2人の耳に入ってきた。

 その叫び声は大人の男のもので、馬の脚を緩めよく聞くとすぐ近くから聞こえてくる。

「よし俊平、俺達で戦うぞ。」

「え、えぇ!?」

「いつまでも新米じゃいらんねぇだろ?いい経験だ。」

 そういうとセレンはさっさと馬を降り、叫び声の方へ向かう、俊平は一瞬ためらったが、しかしそれ以外に選択肢はないのだろうと感じ、それに付き従った。

「た、助けてくれぇ!」

「ほいほい、助けに来たぞ。」

「あれが、魔物……?」

 それは獣のような形をしていたが、俊平の知っている動物の形ではなかった。

 それはまさしく、異形の存在というべき形をなし四足歩行をして居て、二体程自分たちと相対していた。

「ーーー!」

「……!」

 殺される、いともたやすく。

 その咆哮は、俊平の体を強張らせる。

「臆すんな、そしたら殺される。」

「そ、そんなこと言われたって……!」

「いいのか?こんなとこで殺されて。ダンサーになるのが夢なんだろ?ほら刀抜け、戦う準備しろ。」

 そういわれてハッとなり、強張る体を無理やり動かし背中に背負った刀を抜く、最近こそ修行していなかったものの、しかし昔はきちんと修行を積んでいた身だ。

 体は自然とそれを思い出し、構える。

「そうだ、それでいい。絶対に背中を見せるな。」

「……。」

 生唾を飲み込む。

 刀で竹を斬ったことはあっても、生物を斬ったことなどない、その恐怖と緊張で、手が震える。

「震えるのはまあ仕方がねぇか、じゃあ俺が見本見せてやる。」

 セレンは脇差を1本を抜くと正眼に構える、そして一呼吸置くと、魔物に向け高速で接近した。

「ふん!」

 そして一閃、真向に切り裂く。

「―――!」

 魔物が奇声を上げ倒れる。

「一撃だ、雑魚は一撃で倒せ。」

「そ、そんなこと、言われても……。」

「いいからやってみろ、勾玉の力もあんだからなんとかなんだろ。」

 そういってセレンは脇差を収める、もう戦う気はないようだ。

「一撃、で……。」

 直刀を八相に構え、震えを抑える。

「……。」

 唾を飲み込み、深く呼吸をし、覚悟を決める。

 竹を斬った時のことを思い出し、相手をそれになぞらえる。

「てやぁ!」

 そして、一閃。

「―――!」

 魔物の体を両断したその刃が、きらりと紅く煌めく。

「はぁ……。」

 俊平はその場にどさっとへたりこみ、ため息をつく。

 一瞬だった、一撃だった、恐らく自分の力だけでは、成しえなかったであろうその攻撃、勾玉の力が俊平を強くしているのだろうと、そう考えられる。

「やった……!」

 へたり込みながら、感動する俊平、初めての実戦で勝利を納めたのだから、感動するだろう。

「おいおい、一匹倒したくらいで感動されちゃ困るぜ?」

 やれやれといった感じのセレンだが、初戦にしては上出来だろうと考えた。

「だけど、まあ初戦にしちゃ上出来だ。」

「怖えけど、何とかやれそうだ……。」

 立ち上がりながら俊平は笑う。

「これから先つえぇ敵がいくらでも出てくる、精進するこったな。」

「お、おう!」

 初めての実戦で勝利を勝ち得た興奮が冷めないまま、2人はまた馬に乗る。


「所でおめぇ、修行さぼってたって割には筋はいいじゃねぇか。」

「いや、中学まではちゃんとやってたし……。」

「なるほどな、昔取った杵柄ってやつか。」

 馬を走らせながら、セレンは興味深そうに俊平を見る、ただのチャラ男にしてはキレのいい一撃だったな、と。

「昔は修行とかちゃんとしてたんだけどさ、どっからか外に出たいって思い始めたんだよ。」

「なるほど、それで反抗期突入ってわけか。」

「反抗期じゃねぇし……。」

 馬を走らせながら、俊平はどこか遠い所を見るような目になる。

 そういえば昔は、父親のような忍者になりたいなと思っていたなと。

「反抗期だろ、俺もそんな時期あったし。」

「だからちげぇって……。」

 セレンの言葉にむくれる俊平だったが、しかしそれ以上は言っても仕方ないのか、と思い黙る。

「所でおめぇよ、なんで忍者やめようと思ったんだ?」

「そりゃ……、まあ色々あんだよ……。」

「色々ねぇ、まあ話したくねぇならそれでいいけどよ。」

 なにやら複雑そうな顔をしている俊平、それを見て、セレンは聞くことをやめ二人は黙って道を進んでいった。


 陽が暮れ、夜の帳が降りてきた頃、二人はある程度進み、南端から少し進んだ村に到着した。

「よし、今日はここに泊まらせてもらうか。」

「今ってどれくらい進んだんだ?」

「さあな、どれくらいだか。」

 そんなことを話していると、村人達が集まってくる、本来あまり村と村の間での交流もないジパングでは、来客自体が珍しいからだ。

「えーっと、聖獣の守り手何だが、宿を借りれないか?」

「おぉ!聖獣の御使いということは朱雀様の!私村長の織江と申します、今お宿をお手配致します故、私の家でしばしお待ちくだされ。」

 セレンが名乗りを上げると、老齢の女性が声をかけてくる。

 織江は2人を家へと誘うと、馬に食料を与え2人の宿を用意するようにと手配した。


「ささ、雑多な場所ですがおくつろぎくだされ。」

「ありがてぇ、いただきます。」

「いただきます。」

 食事を用意され、それを堪能する二人、素朴な食事ではあったが、一日移動し続けた二人の体には沁みる。

「聖獣の守り手っていうんは、この国ならどこでも通じるんか?」

「ええ、そう伝えられております。聖獣の御使いが現れた際には村総出でもてなせ、と。」

「なるほど。」

 むしゃむしゃと、かき込むように食事を食べながら、セレンが問う。

 織江はそれに頷くと、次のように語りだした。

「我が村にも千年前の守護者様が滞在し、魔物を打ち払ったと伝承に語られております。」

「なるほどね、他には?」

「……、これは伝承ではないのですが、近頃このあたりの魔物が活発化しております。」

「それを倒してほしい、っと。」

「左様でございます、我々は武力を持たず魔物もこの千年おとなしくなっていた為、打ち払う術を持ちえないのでございます。」

「だとよ俊平、どうする?修行ついでにこなしていくか?」

「んぐ……!げほ!げほ!」

 急に話を振られてむせる俊平、茶をすすり呼吸を整え、考える。

「……、今のままじゃ、俺弱いよな?」

「あぁ、弱い。」

「強くならなきゃ、死んじまうんだよな?」

「あぁ、死ぬな。」

「……、やるしか、ねぇんだな……。」

 諦め、とは少し違う気がする、ここが異世界で、自分は戦わなければならない運命にあって、それを全うしなければ死ぬ。

 ただその事実を、確認しているだけのような気もする。

「うっし、そうと決まったら明日からでも魔物の討伐としゃれこむか。」

「お、おう……。」

 セレンの即断に戸惑いながら、しかしそうしなければならない事を、理解出来るだけの頭はある。

 頷くと、さっさと終わらせてしまおうと食事を急いで口にした。


「あのさ、セレンさん。」

「なんだ?」

「戦い方、教えてくれないか?」

「明日な、まぁ俺も元々戦闘は専門外だから、あっさりおめぇの方が強くなると思うぞ?」

「そうなのか?」

「あぁ、俺は鍛冶屋としてこの世界に呼ばれたからな。」

 宿へ移り、就寝前、セレンは俊平に事実を伝えると、俊平は驚く。

「鍛冶屋って、刀作ったりする?」

「その鍛冶屋で合ってるぜ、俺は元々鍛冶屋の家庭に生まれたんだ。」

「それが何で、こんなことしてんだ?」

「それがな、俺の家族が失踪しちまってな、その理由をディンが知ってるっていうからついてきたんだ。あ、ディンってのは俺らのボスみたいな奴な。」

 そういってセレンは思い出す、ディンと出会った日の事を。

「あれは確か、家族みんながどっか行っちまって、一人になって少し経ったくらいの時だったか。急にディンが現れて、家族の行方を知ってる、教えるからそん代わりについてきて手伝ってほしい、って言われてよ。」

「そのディンってのは何者なんだよ?」

「この世界群の神様らしい、竜神王って言ってたな。」

「か、神様!?って、ディンって……、もしかして、あいつ……?」

「あぁ、神様だってさ。」

「そいつって、もしかして……。」

 俊平は昨日見た夢を思い出す、朱雀と名乗ったあの紅い鳥の事を。

 そして、自分達がいた世界で、討伐者と呼ばれていた存在、それをなんとなくだが思い出す。

「なんだ?」

「いや、何でもない……。」

 あれはただの夢ではないのだろうと今は理解している、何せ、朱雀神の御使いと散々呼ばれているのだから。

「まぁ今日は寝ろ、明日からまた忙しいぞ。」

「わかった。」

 朱雀神、それはこの島国を守護する四神が一柱。

 軟弱者と言われて黙っていられる程、俊平は利口ではない、その言葉を熨斗をつけて返すべく、俊平は覚悟を決めるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ