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聖獣達の鎮魂歌~Requiem~  作者: 悠介
壱章 冒険の始まり

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1話 朱雀の守護者

「このような軟弱者が我の守護者とは!何たる事だ!」

「だ、誰だよお前!?」

「我が名は朱雀、ジパングを守りし四神の人柱也。」

「朱雀!?なんじゃそりゃ!?」

「戯け者めが!それはこちらのセリフよ!貴様のような軟弱者が我が守護者とは嘆かわしい!」

「軟弱者ってなんだよ!どーいう意味だよ!」

「痴れ者!嗚呼、我の使命は叶わず潰えてしまうのか……。」

「っせーぞさっきから!痴れ者だの軟弱者だの!大体てめーなんなんだよ!」

「愚か者!伝承すら聞き及んでいないとは!貴様のような者、戦場では何の役にも立たんわ!」

「戦場!?伝承!?だからなんだってんだよ!」

「嗚呼煩い!とく聞き及ぶが良い!貴様は戦場へと駆り出された我が守護者の末裔!新たなる戦場へ向かう者だ!」

「はぁ!?戦場!?」

「そうだ!貴様は我が力を使い神々の争いを鎮める役目を持つのだ!」

「だからどーいうことだっての!」

「さあ行くがよい!もはや語るべくもないわ!」

「だから……、うぅ……。」


 ディセントのジパングは南端、四神朱雀を祀る祠、朱雀の魂の欠片と呼ばれる紅玉の祀られた、その祠の中。

「んぅ……。」

 一人の青年が倒れていた。

 その青年は、和装が主なジパングの服装とは大きく違う、赤いパーカーにワイシャツ、スラックスという恰好で倒れていた。

「ん……。」

 青年、猿田彦俊平は目を覚ます、確か、部屋についてすぐに眠気に襲われて、それで眠ってしまったような、と。

「ここ、どこだ……?」

 体を起こしながらあたりを見回すと、どう考えても自分の部屋ではない、何処かに寝転がっていた。

「夢か……?」

 先ほどまで見ていた、夢のような出来事と現状に、そう思って頬を抓ってみる。

 痛い、夢ではなさそうだと感じる。

「夢じゃない…?」

 俊平は戸惑う、それもそうだ。

 突然見知らぬ場所で目が覚めれば、それは誰だって戸惑うだろう。

「お、起きたか。」

「だ、誰だ!?」

 そんな俊平に声をかけてくる者がいた。

 祠の入り口に陽が差し込み、陰でしか見えなかったが、自分より幾分か体の大きい青年のようだ。

「寝すぎだぞ?そんなんでこの先大丈夫か?」

「だ、誰だよ!?なんだよここ!?」

「まあ戸惑うのも仕方ねえか、まあ順を追って説明するぜ。」

 青年は俊平に近づいてくる、陽の光に慣れ、青年の姿が見えてくる、その青年は黒髪に青いメッシュを入れていて、黒いツナギを着ている。

 その姿に、俊平は見覚えがあった。

「あんた、俺達をストーカーしてたやつ!」

「ストーカーって……、なんかほかに言い方あるだろ……。」

「あんたが俺を攫ったのか!?」

「だから言い方ってもんが……、まあいいか。」

 そういいながら青年、ルベライト・セレン・カイルは俊平に近づく。

 俊平は後ずさり距離を置こうとするが、しかし祠の壁に背をついてしまう。

「な、なんなんだよ!」

「えーっとな、おめぇは戦う運命にあるって言えば話がはええか?聖獣の守護者、その末裔なんだよ。」

「な、何言ってやがる!?」

「オヤジさんからなんか聞いてねえんか?」

「……?」

 そう言われふと考える俊平、そういえば昔、そんな話を聞いたような気がする、と。

 小さなころに父親から聞いた御伽噺、聖獣の守り手と呼ばれる者達の末裔である、自分達は、そう言った宿命を持っている、という荒唐無稽な御伽噺、それを俊平は思い出す。

「でも、そんなのおとぎ話だろ!?」

「いいや、おとぎ話じゃねぇ。おめぇは守護者の末裔、千年前に戦った奴らの子孫なんだとよ。」

「はぁ!?」

「んで今回の戦いにおめぇらが呼ばれたってわけだ、理解したか?」

「わっかるわけねぇだろ!」

 はぁとため息をつくセレンと、理解が全くできていない俊平、これは時間がかかりそうだと、セレンは一瞬考えた。

「まあ座れ、じっくり話してやるから。」

「なんであんたの言う通りになんて……、とっとと俺を家に帰しやがれよ!」

「駄々こねたって帰れねえぞ?いいから座れって。」

 セレンが語気を強めて話す、俊平は普段感じた事が無い、父親に説教されている時ですら感じた事が無かったその圧に怯え、渋々といった感じでその場に座った。

「とりあえずだ、おめぇはもう戦うしかねぇ。だから大人しく話を聞きな。」

「ふざけんなよ……、なんで俺が……。」

「それはもう、時代を恨んでくれとしか言いようがねぇ。そういう時代に、生まれちまったんだからな。」

 項垂れる俊平、父親から聞いていた、その御伽噺が御伽噺ではなかった事、どうやらこれは夢ではない事、自分が戦わなければならない事に、ショックを受けているのだろう。

「そんでだ、俺はおめぇを育てる為に呼ばれた、セレンっちゅう人間だ。他に呼ばれた奴らと合流するまでに、おねぇを一人前に育てなきゃならねぇ。」

「だから、なんで俺が……。」

「だからうだうだ言ってもしゃーねぇだろうに、諦めて戦え。」

「うだうだってなんだよ…、いきなりそんな事言われて戦えるかよ……!?」

「だからしゃーねぇんだって、おめぇらはどう足搔いた所で、戦わなきゃならねぇ運命にあるんだとよ。」

 再び項垂れる俊平、諦めなけらばならないのか、と考えているように見える。

「とりあえずだ、中心までかなりの距離がある、さっさと移動すっぞ。」

「……。あんたは、戦うの怖くねぇのかよ……。」

「ん?怖ぇぞ?でも俺には目的がある、だから戦わなきゃならねぇ。」

「目的……?」

「おめぇには関係ねぇ事だ、気にすんな。」

 セレンはそれだけ言うと立ち上がり、さっさと来いと俊平を促す、俊平は、他に当てもなく手だてもない、帰ろうにも方法を知らないと諦め、それに従う。

「セレンさん、だっけ。」

「おう。」

「俺、戦えるんかな……。」

「戦えるか戦えないかじゃねぇ、戦うしかねぇんだ。」

「そっか……。」

 そういうと俊平は黙り、セレンについていく。

 覚悟など決まっていないが、今はそれ以外に手段がないと理解して。


 祠の麓には一つの村があった、その村は朱雀神を信仰していて、その恩恵を賜り生活していた。

 作物はよく実り、家畜もよく育つ、飢餓とは無縁なことが、それ即ち朱雀神の恩恵だと、そう言い伝えられている。

 故に、村民達は朱雀を信仰対象とし、崇め奉っている、そんな村に、騒ぎが起きた。

「あれはもしや!」

「朱雀様の御使いなのでは!?」

 自分達と、まったく毛色の違う服装をした2人組が、麓に降りてきたのだ。

 もしやあれは御使いでは?とざわつくのも無理はないだろう。

「あぁ!朱雀様の御使いが現れたという事か!」

「あー、やっぱ騒ぎになるよなぁ……。」

 村民達が、わらわらと2人の所に駆け寄ってくる、老人から子供まで、本当の意味で村中の人間が集まってきているようだった。

 そして仰ぎ見る、聖獣の御使いであろう2人を。

「御使い様……、ようこそ、いらっしゃいました……。」

「えーっと、村長さんいるか?」

「私めが現村長、庵と申しますだ。」

「庵さん、ね。俺達ってかこいつが聖獣の使いなんだけど、少し話出来ねぇか?」

「はは、私めの家にてお話をお聞きいたします。」

 庵はそういうと群衆を解散させ、2人を家へと誘った。


「朱雀様の御使いが現れたということは、戦争が起ころうとしているという事ですな?」

「そうだな、神々が争いを始めたってとこらしい。」

「あなた様はどういったお方でございますか?」

「俺は聖獣の守護者の育て役だ、こいつらを育てて戦場に送り出すんだよ。」

「なるほどそうでございましたか、育て役の方に関しては伝承がございません故、失礼をば致しました。」

「いや、いいって事よ。」

 サクサクと話を進めるセレンと村長、そしてついていけていない俊平。

「それで、伝承にまつわる事を教えてほしいんだ、俺達もまだ情報が少なくてな。」

「伝承でございますか、この村に伝わる伝承としましては、朱雀様の御使いが現れた際には戦争の兆しあり、それをお迎えするのが我々一族の役目だとしか……。」

「そうか、あんま伝わってねぇのか。わかった、こっちでどうにかすっか。」

「あ、あのさ。」

「何でございましょう?」

「その伝承の俺の先祖?ってどうやって戦ってたんだ……?」

 セレンが仕方ないかと頭を掻いている時、俊平が口を開いた。

 怯えたような表情をしていて、やはりこれからの戦いに不安しかないといった風だ。

「ははぁ、そうですな、朱雀様の御使いは忍びとして戦われていたという伝承がございます。」

「忍び……、忍者?」

「とも言いますな。」

「そっか、それでうちの家は……。」

「何かございましたか?」

「いや、こっちの話だ。とりあえず宿を借りてもいいか?」

「あいや、宿ならここから北に歩いたところにございます、どうぞご自由にお使いくだされ。」

 考えている俊平の話をセレンが遮り、村長との会話を終える。

 そして、2人は宿に向かった。


「……、なあセレン、さん。」

「なんだ?」

「俺の親父はこのこと知ってたのか?」

「あぁ、知ってたぜ。伝承として語り継がれてきた話だからな。」

 宿屋について暫くの沈黙ののち、口を開いたのは俊平だった、セレンはあれこれとやることがあるからと忙しそうに動いていたが、その手を止め話をする。

「なんで親父じゃなくて俺だったんだ……?」

「そりゃ……、まあ色々あんだよ。複雑な事情って奴だ、俺もよく知らねぇ。」

「知らねえって……。」

「まあ俺も詳しくは聞かされてねぇ、事情は合流してからってこった。」

「……。」

 事情は合流してから、という言葉に、俊平は引っ掛かりを覚える、父親から昔聞いた事が事実なのであれば、と認識して、そうなった場合、他に三人の戦士がるはずだ、と。

 朱雀、という南の守護を管轄していたのが自分達の先祖、ならば、東西南北、で後三人いるはずだ、と。

「そういや、俺以外にもいんのか?」

「あぁ、おめぇ含めて五人いる。一人はもう半年は実戦経験積んでるぜ、まだ十一だってのによくやるぜまったく。」

「十一!?なんでそんなガキが……!?」

「デインって奴に選ばれたんだとよ、なんでもこの世界の守護神なんだとさ。」

 俊平は驚く、それもそうだろう、自分より六つも下の小学生が、戦争の為に鍛錬を積んでいるというのだから。

「……。」

「さ、今日はもう寝ろ、明日から忙しいんだからな。」

「……、わかった……。」

 気が付けば夜も遅くなり、外は真っ暗だった。

 電気や機械の流通していないジパングでは、松明の明かりだけが村のところどころを照らしている。

 俊平は布団の中に入ると、悩み事を抱えつつ眠気には抗えずに寝息を立て始めた。


「ディン、寝たからオッケーだ。」

「あいよ。」

 セレンが宿の外に出て、独り言をいった、と思ったら、そんなところに突然現れたのは、ディンだった。

「あの祠にあった宝玉をもとに武器作ればいいんだよな?」

「ああ、その宝玉を元に武器を作ってくれ、それはこの子達の役に立つ。」

「なるほどな、あの宝玉ってなんなんだ?」

「あの宝玉は四神の魂の欠片だな、聖獣の守り手の為に作られた武器の残骸とも言える。」

 ディンは、煙草を吸いながら答える。

 祠にある宝玉は回収済みで、もうセレンの工房に持ち込まれている。

「そんで、こっから中央に向かえばいいんだよな?」

「そうだな、ここから屋敷を目指してくれればいい、道中で修行つけながら。」

「修行って言われても、俺戦闘能力ないぜ?」

「大丈夫だよ、セレンは十分強いから。」

 ディンはセレンの肩をポンポンと叩く、セレンは不安げに大丈夫なのかよと呟くが、ディンはもうその場からいなくなってしまっていたようで、それは聞こえなかったようだった。

「俺も寝るか……。」

 セレンは不安げな顔をしたまま、布団に入り眠りについた。


「さて、大丈夫かな?」

「あ、お兄ちゃんお帰り!」

「ただいま、蓮。」

 ジパング中央紅麗山中腹、外園邸、そこに戻ってきたディンは、ちょうど部屋に入ってきた蓮とばったり出会う。

「今帰ってきたの?」

「そうだよ、ちょうど今帰ってきたところだ。」

「そっか!ちょうど修行の時間だったから来たんだ!」

「お、そうだったな。」

 蓮に手を掴まれ、引っ張られる、ディンはそれに逆らわずに引っ張られて行った。


「よし蓮!修行も最終段階だ。」

「うん!いっくよぉ!」

 外に出て双剣を構える蓮と、何も構えていないディン。

 蓮はディンに向かい突撃し、触れる直前で跳躍、2本の剣を振り下ろした。

「よっと。」

 それを軽く避けるディン、そこに蓮が着地し土煙が立つ。

「まだまだぁ!」

 着地直後に体をひねり、左手の剣でディンを薙ぐように攻撃する。

「ほいっと。」

 しかし難なく躱されてしまう。

「まだぁ!」

 躱されることを解っていたのか、右手に握った剣を振りかぶり、投げた。

「ほい。」

「くっそぉ!」

 しかしそれも躱されてしまう。

 蓮は慌てて剣を拾いに走り、ディンはそれを笑いながら見守る。

「ほれ、これで終わりか?」

「むぅ、まだだもん!」

 蓮はそういうと目を閉じ、魔力を剣にためる。

 すると両刃剣が雷を帯び、バチバチと音を立て始めた。

 と同時に、蓮の右腕に描かれているディンの左腕に刻まれているような、竜の頭を五芒星が囲っている、紋章が輝く。

『いっけぇ!雷咆斬!』

「……。」

 今まで成功したことが片手で数えられるくらいしかなかったその技、それを蓮は隠れて修行していたのか、正確に放った。

 クロス状に放たれた2つの斬撃に雷の力が加えられ、音速の衝撃となってディンに飛来する。

「だけど、まだ詰めが甘いな。」

 しかしその斬撃をディンは躱す訳でもなく、左手で受け止めた、素手で、何かの魔力を籠めるわけでもなく。

 バチバチとディンの周りが帯電し、防がれた事を蓮は理解する。

「あーもう!」

「凄いな蓮、いつの間に出来るようになったんだ?」

「お兄ちゃんに隠れて練習してたもんね!」

「そっかそっかぁ、頑張ったな、蓮。」

 嬉しそうに笑うディンと蓮、ディンは蓮に近づくと、わしゃわしゃと灰色の短髪を撫でる。

 蓮は嬉しそうに笑い、へへへという。

「そういえば、雷咆斬のコツを教え忘れてたな。」

「え、そうなの?」

「ああ、雷咆斬のコツはな……。」

 蓮から手を離したディンは剣を出現させ、帯電させる。

「こう、振り上げると同時に雷を前に前に押し出すんだ。そうする事で斬撃の威力が上がる程に技の威力が上がる、蓮でもかなりの力を発揮できるようになるぞ。」

 そういいながら、空に向かい剣を一閃するディン、すると蓮の何百倍、何千倍もの質量を持った雷が爆音と共に空へと放たれ、あたりを覆っていた雲を消し去った。

「すごい!」

 蓮は目をキラキラさせてそれを見やる、それは純粋な憧れであり、早く自分もこうしたいという願望だろう。

「まあ、蓮は俺とは違う性質の力だからここまでしろとは言わないけどな。」

「そうなの?」

「前にも言っただろう?本質的には似てるけど違う力だって。」

「そういえばそうだっけ!」

 ディンの放った雷咆斬の威力にまだ興奮しているのか、テンションが高い。

「そうだぞ?蓮のはもっと優しい力だからな。」

「そうなんだ!」

 優しい力とは何なのか?と疑問はあったが、まだ興奮冷めやらぬ蓮には聞くことは出来なかった。

「さて、修行の続きだ。」

「うん!」

 そして興奮冷めやらぬまま、2人は修行の続きに入った。


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