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聖獣達の鎮魂歌~Requiem~  作者: 悠介
幕間の物語

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6話 殺しの技

「お兄ちゃん、疲れたぁ……!」

「じゃあ、今日はここまでにしようか。」

「リリエルさん、こうですか?」

「そうね、そうするのが良いのかしら。貴方は飲み込みが速いから、助かるわ。」

 それぞれ修行をしていた蓮達、蓮は上段切りをひたすら繰り返していたが、疲れが来てしまった様子だ。

 と言っても、剣を振った事もない子供が、一時間も剣を振るう事が出来る、それはデインの力を継承しているから、と言うのもあるのだろうが、元々素質があったのだろう、とディンは考えた。

 蓮に剣の鞘を渡し、それに剣を仕舞わせると、竜太達の修行をおいて、外園邸に戻る。

「剣ってもっと重たいと思ってたけど、重くない!」

「それは蓮に合わせて作った剣だからな、それはそう言う仕組みなんだ。普通の剣を持ったら、重たいと思うぞ?」

「そうなの?」

「そうだな。」

 へとへとになっている蓮だが、話をする程度の事はする体力は残っている様子だ。

 初めて持った、剣という武器の感想を話すと、ディンが答えを提示する。

 ルミナ&ウィケッド、それは蓮の身体能力を引き出す為の武器でもある、蓮が元来持っている身体能力、それを引き出して攻撃能力に変換する、そう言った能力を持っている、だから、ディンは蓮には素質があるだろう、と感じたのだ。

 ただの子供が同じ形、同じ様式の剣を持ったとしても、その重さに耐えられないだろう、本来であれば、己の心を映した剣と言うのは、持てるはずがない重みがあるはずだった。

 竜神が竜神たる所以、それは己の心の奥底、根源にある心の現身である竜神剣を扱える、己の心の根源という、元来では扱えるはずのない根底を扱える、それが竜神が竜神たる所以だ。

 それに近い剣、己の心の光と闇を映し出した剣を扱える、という時点で、蓮は普通の人間ではない、それは理解していたが、ディンはこれで剣を持てなかったら、別のプランを考えなければならない、と思案していた為、ある意味ホッとしていた。

 普通の剣を握らせた場合、まず蓮の筋力では持つ事が不可能だろう、能力的には、蓮はまだ剣を握って振るう事が出来るだけの筋力量を持っていない。

 ただ、それをある程度無視して両刃剣を振るえているのは、心から取り出した、蓮にしか扱えない武器、だからというのがあるだろう。

「僕、才能ある?」

「ああ、あるよ。蓮は強くなる、俺はそうみてるな。」

「やったぁ!」

 蓮にしか使えない武器、それはディンには使えるが、基本的には蓮以外の存在が握ったとしても、その存在が決して持ち上げられない重さ、に変わるという、枷を掛けている武器だ。

 ディンは例外的に、全ての世界の全ての武器を扱える、という特性を持っている、だから蓮の剣も使う事が出来るが、それをしようとは思っていなかった、他人の心から出来た武器、と言うのを握るというのは、その人間の心を踏みにじる事になりかねない、とディンは考えていて、基本的に竜神剣も、自分の剣である竜の誇り以外使う事をしたがらなかった。

 ディンは数多の竜神から剣を継承している、竜神剣はその命のやり取りをもって継承される、という特性があり、ディンはとある事情から、千何百本かの竜神剣を保有していた。

 ただ、それを安易に使うのか?と問われると、否と答えるだろう、ディンにとって、竜神剣とはそれだけ大切な武器なのだろう。

 ディンの使う竜の誇り、竜神王剣竜の誇り、それは、ディンが不完全な竜神王であった頃、セスティアの時期で言えば今年の三月末、までは、悠輔という少年の武器、陰陽刀絆、と一つに融合する事で、竜神王剣竜の絆、としてしか顕現出来ない剣だった。

 それが、三月末に起こったとある事件のお陰と言うべきか、影響と言うべきか、ディンは単独で竜神王剣を発現出来る様になった、それが現在のディンの武器である、竜神王剣竜の誇りだ。

 何にも代えがたい感情、ディンの根底にある、根源的な価値観。

 それは、守るべきものがいる、という事を誇る事、竜の誇り、とは、守るべきものがいる事を誇る剣なのだ。

 では、竜太はどうかと言われると、竜太の剣の銘は竜の愛、愛する事を竜太は根源として持っている、という話なのだが、竜太はそれを自覚していないだろう。

「お腹空いた!」

「外園さんも戻ってきてるし、飯を作ってもらおうか。」

「どんなお料理かなぁ?」

 それと同じ事を、蓮にした。

 ルミナ&ウィケッド、蓮の中にある、大きすぎる闇と、小さく淡い光を映し出した、それが蓮の武器だった。


「こう、ですか?」

「えぇ、そうよ。」

 修錬場に残っていた竜太とリリエル、リリエルの殺しの技を、そうとは知らされず覚えていた隆太は、ただの体術ではない、とは感じていた、ただ、それが殺しの技だとは認識出来ていなかった。

 特殊な体術、リリエルなりに覚えてきた対人戦の攻撃なのだろう、と認識していた竜太、そんな竜太の意思を知ってかしらずか、リリエルは少し考える素振りを見せる。

「……。」

「リリエルさん、どうかしましたか?」

「……。竜太君、私が今教えているのが、普通の体術ではない事は気付いているのよね?」

「え?はい、リリエルさんなりの対人術のスキルを教えてくれているんですよね?」

「……。半分は正解、半分は間違いね。ディン君が教えろと言ったのだから、それは教えても構わないのかしらね。彼、本当にわからないわ。竜太君、今貴方が覚えようとしている技は、殺しの技、人を殺す為の技、私はそれしか知らないの。人間を殺してきた、貴方達光に属する存在とは違って、私は人間を沢山殺してきた、それを教えているのよ。」

 リリエルの言葉に、竜太は考える。

 意識しないようにしていた、今日一日教わっていて、それが殺しの技だとは認識出来なかった、ただ、特殊な体術だとばかり考えていた。

 ただ、それをリリエルが話した意味、そして、ディンがそれを教えてほしいとリリエルに依頼した意味、について考える。

 ディンはかつて言っていた、殺す意味が無いから殺さないのであって、意味があれば人間であろうと殺す、それが世界を守る事になるのであれば、躊躇いなはい、と。

 それを躊躇っている竜太にとって、それは悲しい現実だった、人間は守るべき存在、人間は殺してはいけない、そう信じていた竜太にとって、それは悲しい現実だ。

 ただ、それを知っていて、竜太が人間を殺す事を恐れている事を知っていて、尚対人術の極致である、殺しの技を教えてくれとリリエルに依頼した理由、それを考える。

 わからない、がディンが意味のない事を教えてほしいという事は絶対にないだろう、何某か、竜太には自覚出来ない理由があるのだろう、と竜太は考えた。

「……。父ちゃんがそれを教えてほしいって、リリエルさんにお願いした意味、についてはわからないですけど……。でも、必要だと思ってるのなら、僕は覚えないとです。」

「人を殺める覚悟はあるの?」

「分かりません。……。ただ、世界と個人を考えた時に、世界をとらなきゃならない、それが竜神の役割だ、とは聞いてます。父ちゃんも、殺したくない人を殺した事がある、後悔はしてないけど、でも、違う道があってくれたら良かった、って。だから……。僕は、それを覚えて、使わないでいられる道を探したいんです。人を殺した事が無いわけではないんです、一人だけ、殺した事はあるんです。あの人は、僕の家族を殺した人、僕達の家族を引き裂いた人、だから殺せた、憎しみがあったから、守るべき存在がいたから殺せた、のかもしれません。……。ただ、きっとそれをしなくても良い未来がある、そう信じてるんです。」

「甘いわね。貴方を殺そうとした人間の感情を慮った所で、その人間は貴方に対する憎しみを捨てはしないのよ?それでも、そうならない未来、を探すのかしら?」

「はい。僕は十一代目竜神王になる存在、そして、父ちゃんの息子ですから。父ちゃんがみた夢、人を殺さずに済んだら良かった、って言う夢を、僕は叶えなきゃならないと思うんです。それはそれとして、殺しの技が必要になって来る事、もあるんだろうなって、父ちゃんは考えたんだと思います。僕が死なない様に、目的を達成出来る様に。」

 竜太の夢、それはぬるい夢なのかもしれない、綺麗ごとなのかもしれない、リリエルからしたら、目的と殺人を天秤にかけた時、間違いなく目的を選ぶだろう、殺人を躊躇うという事は、相手に殺されても仕方がない、それがリリエルの生きてきた道だ。

 眩しい、光に属する存在と言うのは、ここまで眩しくなれるのか、とリリエルは感じた、それは心根の優しさであると同時に、心根の甘さだ、と。

 ただ、それを失わずにいられるのならば、失う必要はないのだろう、とも感じていた、リリエルにとって、それは命取りになる事なのだから、捨て去る事しか選択肢が無かった、だが、竜太は違う、竜太には、守るべき存在も、守るべき尊厳もある、とリリエルは考えた。

 それを守った上で、人間を殺める事をしたくない、というのであれば、それは正しい事なのだろう、と。


「ふー……。」

 外園邸の横、ディンが誂えた工房に引き籠っていたセレンは、ディンから渡された金属と鉱石を使って、トンファーを鍛造していた。

 ディンが持ち込んだ金属、それは、セレンがいまだ扱った事が無い材質の素材で、もしもこれを持っている人間がセレンのいた世界にいたら、それだけで争いが起きていただろう、という様な代物だった。

 オルハリコン、オレイカルコスと呼ばれる金属、伝説に語られる、失われた金属と呼ばれていた原材料、セレンも、伝聞では聞いた事があっても、扱った事も触った事も、ましてや見た事もなかった金属。

 これを売るだけで、巨万の富を得られるだろう、トンファー一つ分のオルハリコン、それだけの素材があれば、世界を救う勇者と言うのにふさわしい存在に、うってつけの武器が作れるだろう。

 鍛冶屋として、鍛冶師として、これ以上の鉱石や金属、というのには中々お目にかかれない、それこそ、それ以上を求めるとなると、現在槌として使っているハンマーの中心に埋めている、紅い鉱石しかセレンは知らない。

 原材料不明、ある日家族が消えた、そしてそれだけが残されていた、という、謎に満ちた鉱石、それ以外に、オルハリコンを超える金属は存在しないだろう。

 それを加工できる存在、と言うのも限られてくる、ディンはセレンなら出来るだろう、と託したが、セレンにとっては、現在進行形で一世一代の大勝負、といった所だろうか。

「すげぇ金属だな……。」

 良く伸び、叩けば叩く程、靭性が上がっていく、そんな金属を炉に放り込みながら、セレンは緊張していた。

 これ以上の鍛造をする日が来るのだろうか、これ以上の武器を作ってほしい、と言われてしまったら、果たしてセレンにそれを作る事が出来るのか。

 そうならない未来もあるかもしれないが、セレンは感じていた、そうなる未来がある、と。

 いつの日か、これを超える武器を依頼される日が来るのだろう、これを超えるだけの武器を生み出す技量を求められる日が来るのだろう、と。

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