街中デート、今日だけあなたのシンデレラ
第9話
●街中デート、今日だけあなたのシンデレラ
彼、友志先輩と付き合って1ヶ月。
デートというデートをしていない。
勿論、私が憧れていた学校ならではの登下校デートもなく、お互いバイトしているのもあるし、休日もデートする日程を決めてからでないとデートが出来ない。
これは付き合っているといえるのだろうか?
私が憧れていた夢のデートとは全くといっていい程、実現していない。
そんなある日の事、お互いの都合が付き、初めてと言って良い程のデートする事になったんだけど ―――
待ち合わせ時間になっても先輩は現れないのだ。
1時間、2時間と過ぎて雨が降りだす。
もう少し待ってみようと思い待ち合わせ場所にいるものの全く現れる様子もなく ―――
連絡するものの連絡つかず。
しばらくして、雨は多少小降りになったものの私は傘を持たない為、そこそこ濡れている状況だ。
「もうっ! 帰るっ! 待ちぼうけなんて、最悪だよっ!」
ショートメールで帰る事を告げ、その場を去った。
その直後、再び雨が降りだし、私は雨の中、走って帰る。
その途中 ―――――
「それでねー……友志……」
「うん」
そういう会話が聞こえ、声のする方へ視線を向けると、女の人と相合い傘をし、女の人は友志先輩に腕を絡めている2つの人影に遭遇した。
「……友……志……先…輩……?」
「悠羽ちゃん……あっ! いや……これは……」
「友志、誰?」
「……彼女……」
「彼女? 友志、また可愛い子に告白したの?」
「……ああ……」
「もうっ! 駄目じゃん! ごめんね~。友志、私いながら可愛い子には、すぐ告白しちゃって!」
「………………」
「本当ゴメンね。ちょっとっ! 友志、こんな可愛い子、また傷つけて! ていうか、今迄で一番可愛いじゃん!」
「……私を待ちぼうけさせて先輩は……私以外の女の人とイチャイチャぶりですか?」
「……ごめん……悠羽ちゃん……」
「………もう……良いです! こっちから別れてやります! もう二度と今後一切、私に近付く事も顔も見せないでっ!」
私は走り去る。
「あっ! 悠羽ちゃんっ! 危ないっ!」
ブッブー
走り去る私の目の前に、一台のダンプカーが ―――――
ビクッ
大きいクラクションの音が響き渡る中、驚く私の足はその場に立ちすくんでしまい動けないでいた。
グイッと誰かが私の腕を掴み安全な場所に移動させる人影。
「傘、持ってな」
そう言うと私に傘を渡し、私の前から離れた。
≪……誰?≫
「悠羽ちゃんっ!」
と、駆け寄る先輩の前に立ち塞がる人影。
「本カノ(彼女)いながら、彼女に告白したんですか?」
「……君は……」
「雨の中、何時間も待ちぼうけさせた挙げ句、あなたは他の女の人とデート……酷くないですか?」
「……………」
先輩の胸倉を掴む人影。
「俺が通らなければ、もしかすると彼女は…………あんた自分のやってる事分かってんのかよ? …………本当はすっげぇ殴りたい所だけど……立場上そういう訳にはいかねーし……運が良かったですね?」
掴んだ胸倉を離す。
「……一体……どれだけの女傷つけてるんですか? これを機に、その癖辞めた方が良いんじゃないですか? そのうち本命の彼女からも相手されなくなりますよ? ……あんたみたいな男に…………彼女を……悠羽を渡せるかよ!」
ドキン
私を助けてくれた誰だか分からない相手のその言葉に胸が大きく跳ねた。
「本当……申し訳ない……」
「……………」
振り返る人影。
ドキン
≪えっ!? 嘘……!?≫
私を助けてくれた相手は、いつも顔を合わせている隼人の姿があった。
「……………」
私から傘を受け取る隼人。
そして、その傘を閉じた。
気付けば雨はあがっていた。
「……隼人……」
「今日から、またフリーだね。藍上 悠羽さん」
優しく微笑む隼人。
ドキン
「ねえ……本物?」
「ドラマの撮影?」
「えっ? でもカメラなくない?」
「……………」
「やっぱり俺が、悠羽の事を幸せに出来る男なんだろうな」
頭をポンとする隼人。
ドキッ
グイッと私の手を掴む隼人。
ドキン
「なあ、悠羽」
「な、何?」
「俺とちょっとスリル感味あわない?」
「えっ?」
「デートしようぜ?」
「えっ!?」
「ヤバイ本物だよ!」
徐々にざわつく周囲。
私達は手を繋いで、そこから走り去る。
雨の中
手を繋いで走る時間
今
人気のあるあなたと
手を繋いで街の中を走る
どれだけの人間が
求めてる?
この時間
この瞬間
この手が離れる時
またお互い
別々の道を歩き出すのかな?
私達は隼人が常連で行く店に洋服を買いにショッピング。
濡れている洋服から着替える為だ。
「ちょっと隼人っ! 私、持ち合わせないよ!」
「お前は出さなくて良いから」
「えっ!? いや……それは……」
「俺がお前にプレゼントするんだよ。今日限定の俺のシンデレラだから」
ドキン
胸が大きく跳ねた。
「……隼人……」
「俺、雨の中、お前見掛けて放っておけなくて正直、声掛けようと思ったけど……彼氏と待ち合わせかな? と思って……様子見てたけど……」
「……………」
「あんな事になるって分かってたら早く声かけておくべきだったなぁ~って……マジで焦ったし!」
「前に、お前が傷付いて悲しむ姿を見たくないって言ったように、お前が笑顔になるならと思ってデートに誘った。どうせ帰ったら泣くだけだろうし」
隼人はバレないように出来る限り変装をし、そんな私も変装させられた。
ゲーセン行ったりして1日を楽しんだ。
マンションに帰りつき
「後で部屋に来な」
「うん。分かった」
私は加賀家に行く。
テーブルを囲み話をする私達。
「今日はありがとう」
「別にお前が元気でいてくれるなら良いし」
「そっか……」
「また良い男見付けろ! 何回も何回も。最終的には俺がお前の居場所になるだろうし」
「何それ!」
「いや絶対っ! 俺の隣は悠羽だから」
「何処から、そんな自信が?」
「それは……」
グイッと引き寄せるとキスをした。
ドキン
「俺の人生にはお前が絶対に必要だから」
ドキン
至近距離で言われ、私の胸は大きく跳ねる。
「いつか必ずお前に言える時が来れば良いんだけど……人生も運命も……未来は分かんねーからな……それに、もし俺が真面目に言った所で、お前は演技だろうとか言ってくるから……難しいんだよなぁ~」
「……隼人……そうだね? 私を信じ込ませるの大変だと思うよ?」
私達は話題を変え色々と話をしていた。