バイト先
第4話
●バイト先
「やったぁーっ! バイト見付かったぁーーっ! 念願のバ・イ・ト・……ラッキー♪」
「ただいま」
「あっ! 稔兄、稔兄! おかえり、おかえり。聞いて、聞いて、聞いて!」
「帰って早々どうした? 落ち着け悠羽。おかえりも聞いても1回で良いから」
「さっき、バイトの採用決まったっ! 連絡あった所なんだ!」
「おっ! そうかぁーっ! 良かったなぁーっ!」
「うんっ!」
「で? どんなバイトだ? コンビニ?」
「コンビニじゃないけど、ファーストフード店」
「へぇー、良いじゃん! 頑張れよ!」
「うんっ!」
そして、バイトを始める事になり、バイト終了後 ――――
「君、可愛いし、相手してくれればバイト料、倍にしてあげるよ」
「えっ!?」
「面接の時から可愛いって思ってたんだ。やっぱり、今の子は、お金いるだろうし、平気で相手してくれるだろう?」
「えっ? こ、困ります……私は、そんなつもりで……」
グイッと肩を抱き寄せた。
「や、やだ……離して下さい……」
「バイト料、倍になるんだから、こんな良い話しはないだろう?」
太ももを撫でるように大きい手が這う。
「や、辞めて……下さい……」
私は引き離し帰ろうとすると、両手を掴まれ壁に押し付けられた。
「や、やだ……離して下さい……」
「悪い話しじゃないだろう? 倍になるんだぞ!」
「わ、私は例え倍になろうとむやみに体を預けませんっ! 今日限り辞めさせて頂きますっ!」
「チッ! 話しの分かんねー高校生の子供だなっ!」
バッと離したかと思ったら、再び両手を押さえつけられ、キスされた。
「や……辞め……」
ドカッと股間を膝蹴りし、飛び出した。
「信じらんないっ!」
私はマンション近くの公園で口を洗う。
未だに感触があるような感覚が嫌で仕方がない。
「……………」
「まだ違和感ある……」
洗っても洗っても、きりがない。
そこへ ―――
「悠羽じゃん」
「……隼人……何して……」
「あー、小腹すいてコンビニ行った帰りで。そうしたら公園にある人影に気付いて、ちょっとドキドキしながら近付いて、お前だって分かって声かけた」
「そうか……」
「どうかした? つーか、ヘコんでねーか?」
「ヘコみたくもなるよ……」
「何かあった?」
「……………」
「まあ、言いたくないなら無理に聞かないけど」
「……バイト……辞めた……」
「えっ!? まだ1ヶ月も経ってないじゃん!」
「……稔兄も……心から喜んでくれたのに……」
「……悠羽……」
私は下にうつ向く。
「女子高生の存在って……良いものじゃないね……」
「……えっ?」
「君、可愛いし相手してくれたらバイト料倍になるって……」
「えっ!? ヤっちゃったの!? もしくはヤられた!?」
私は顔を上げる。
「ヤってないですっ! むやみに体を預けませんっ! 今日限り辞めさせて頂きますっ! って言ってきたっ! だけど、強制的にキスされたっ!」
「キスされたぁぁぁっ! 何だよそれっ!」
グイッと私を引き寄せるとキスされた。
ドキン
そのキスは長かった。
「消毒」
ドキン
至近距離で言われ、胸が大きく跳ねた。
「飛んでもねぇ奴だなっ! でも、ヤられてなくて良かったぁ~。マジ焦ったし! もし、強制的にされてたら俺、芸能人なんて忘れて辞める覚悟でマジギレしてたかも相手に」
「隼人……」
「でも、キスされたのは許せねぇーっ! 悠羽、駄目だからな。俺以外に体を預けちゃ」
「いや……それって……問題発言」
「キスした仲じゃん!」
「それは……で、でも……最初のキスはジコだよジコ! 今のは消毒してくれて、ちょっと嬉しかったけど……」
「可愛い♪ 言っておくけど最初のキスは誓いのキスだからな。だって俺……
耳元で言う隼人。
ドキン
胸が大きく跳ねた。
「えっ?」
『お前は、俺だけの女であって欲しいから』
耳元でそう言われた言葉が、こだまする。
「本当、マジな話。一先ず今はこんな感じだけど将来的に? 俺、お前が傷付いて泣くのとか見るの嫌だし。今のままでのお前であって欲しいしお前の全て俺が受け入れたいかな? って思う訳」
「隼人……嬉しいんだけど……信じろっつーのが難しいような気がするんだけど」
「今はまだ、お前の人生楽しめば良いんだよ。俺自身の想いだから。付き合うとかじゃねーし」
「隼人……」
「好きな人出来たら、それはそれで良いし。彼氏出来たら出来たで良いんだよ。だけど、お前の事、本当に手放したくないと思ったら俺、お前にマジ告するから」
ドキン
胸が大きく跳ねた。
「……………」
「まあ、言った所で演技してるみたいな感じでからかってるって思われるんだろうけど……」
「うん……多分……信じないと思う。でも私も好きにだったら信じるかも? 戸惑いながらも隼人に確信求めて……」
「悠羽……」
「隼人、約束だよ。お互いの想いが1つになる時が来ると良いね! そうしたら隼人と同じ人生歩んであげれる自分がいるから」
「悠羽……そうだな。でも何かあったら俺の隣は悠羽の為に、すぐ開けてあげれる状態でいたいから、鍵掛けとく」
「……分かった……じゃあ必要な時に開けて貰おうかな?」
「良いですよ。藍上 悠羽さん…………なぁ悠羽」
「何?」
「もう1回キスして良い?」
ドキッ
「えっ!?」
「いや……何かさっきのキスだけじゃ消毒しきれてないと思って。俺の中で」
「大丈夫だよ。でも、もう少しして貰おうかな? なーん……」
私を抱き寄せ再びキスされた。
冗談と思いノリで言った瞬間、言い終える前にキスされた。
そして、唇が離れ、もう一度キスされた。
オデコ同士をくっ付ける隼人。
「……気が済んだ?」
「悠羽は?」
「私に振る? 私は別に……」
隼人を押し離す。
「大体、私達は恋人同士でもなんでもないよ」
「ラスト1回! 大人のキスして良い?」
「えっ!?」
グイッと後頭部を押し私の唇に割って入る熱があり、初めての濃厚と思われるキスに戸惑う私。
唇が離れ、もう一度キスをされた。
「消毒完了かな? 帰ろうぜ」
「は、隼人が満足するキスしただけじゃん!」
「それ位の勢いないと駄目だし! 悠羽の唇を奪っておいてマジ許せない!」
私達は色々話をしながら帰るのだった。