隣人~出逢い~
第1話
●隣人
ザアアーーーー……
空からは雨がバケツをひっくり返した様な雨が突然降りだす。
「えええーっ! さ・い・あ・く…………雨だよ雨! 街に出て来てこれってついてない……確かここから稔兄の所近いんだっけ? 行こう、行こう」
私はとあるマンションの建物に駆け込む。
そして、同じように、もう一人の人影が駆け込む。
「雨、凄いですね」
「えっ? あ、はい、本当そうですね」
顔を合わせる私達。
ドキン
私の胸が大きく跳ねた。
≪マジカッコイイんだけど……でも……何処かで……≫
私は内心、そう思う中、見とれている中、男の子は先にマンションの中に入って行き始める。
「あれ? 行かないんですか?」
「えっ? あ、えっと連絡しないといけない相手がいるので……」
「彼氏?」
「いいえっ! ち、違いますっ! 兄に」
「お兄さん?」
「はい」
「そうなんですね。それじゃお先に」
「はい」
男の子は去っていく。
「か、カッコ良すぎて……ヤバイっ! ドキドキしている……あっ! 電話、電話」
私は気を取り直し兄に連絡する。
「もしもし、稔兄? 私」
「悠羽? どうした?」
「今、平気?」
「ああ」
「今、稔兄のマンションの建物の前にいるんだけど、部屋番教えて」
「何!? やだ!」
「やだ! じゃなくて実の妹が急な雨に降られてずぶ濡れに近いんだけど? お願い!」
「はいはい」
私は兄貴である。
藍上 稔紀。23歳に番号を教えて貰い鍵を開ける。
そんな私は妹の藍上 悠羽。15歳。
中学3年生。
受験も終わり中学も卒業し街に出た矢先、突然の雨に見舞われたのだ。
とりあえずシャワーを浴びる事にし、しばらくして、体にバスタオルを巻き脱衣場を後に、洋服を物色中。
「やっぱ、男だし女物はないよね……ん? あれ? これは女の人の? 彼女のかな?」
取り出して見るものの、私には大きい。
「まさか稔兄の? まさかね? いくら何でも、そっち系? そんな変態趣味あるわけ……」
「いやぁ~まずあり得ないっしょ? まさか、お兄さんがそんな」
「だよね~? だって……ん? あれ? 今……声が……」
私は振り返る。
「どうも~」
笑顔で言う男の子。
ドキッ
私は胸が大きく跳ねた。
「あれ? さっきの……イケメン男子。いやっ! ち、違うっ! えっ!? 誰!? 何でいんの?」
「君は誰?」
「あ、あなたこそ誰ですかぁっ!?」
「…………」
「け、警察……」
私は近くに携帯がなく取りに向かおうとした。
「ま、待てっ!」
グイッと腕を掴まれた。
「きゃあっ! や、やだ! 離してっ!」
「離す訳にはいかねーな! 警察沙汰なんて面倒な事されたらこっちが困んだよ!」
「そんな事知った事じゃないし!」
私は、もう片方の掴まれていない手で平手打ちしようとしたが受け止められた。
両手が塞がり、私は足で蹴りをしようとしたが交わされる。
≪む、ムカつくっ!≫
抵抗する中、バランスを崩す。
「きゃあっ!」
ドサッ
床に尻もちをつく。
「いったぁ~……あっ! い、今だっ! で、電話っ!」
グイッ ドサッ
腕を掴まれ押し倒され私の上に股がると押さえ付けた。
ドキーーッ
私の胸が大きく跳ねた。
「いい加減、大人しくしろよ!」
「で、出来る訳ないでしょう!」
「……………」
しかし、上からイケメンに見下ろされる体勢に恥ずかしさとドキドキと胸が加速していく自分がいた。
私は男の子の顔がまともに見れず目を反らす。
「初対面の女の子に、こんな形で聞きたくないけど暴れられたらかなわないから。俺、事情あって警察沙汰したくないんだよね。このまま質問させて貰うけど、あんたさっき、ここの人の住人知ってる感じだけど」
「……私……妹……」
「妹?」
こくりと頷く私。
「後、マンションの入口にいた女の子だよな?」
再び頷く私。
「雨に濡れて稔兄に連絡してシャワー浴びた所で…」
「それで着替えを探していて俺と遭遇したって訳だ」
男の子は私から離れると起き上がらせ自分の洋服を羽織らせた。
ドキン
胸が大きく跳ねる。
「悪かったな。俺、隣に住んでるんだけど……」
「隣に住んでる人? どうやって来たわけ?」
「あそこのドア」
1つのドアを指差す。
「えっ?」
私の手を優しく掴み立ち上がらせるとドアの前に移動させた。
カチャ
普通にドアが開いた。
「!!!!」
「隣が俺の住んでる部屋。一先ず、せっかく温まったのに元もこもねーな」
優しく微笑む。
ドキン
胸が高鳴る。
「洋服ありそう? ちょっと待ってな」
―――― そして ――――
「姉貴の貸しても良いけど、勝手に触ると怒られるから、俺の洋服で我慢して。着替えたら、また隣に来な。温かい飲み物作るから」
「……ありがとうございます……」
私は着替え、隣の部屋に移動した。
「そこ座んな」
「うん」
私は椅子のあるテーブルに腰をおろす。
「マジ悪かったな。大丈夫? 寒くない?」
「うん、大丈夫」
私達は向かいって話をする。
「名前は、何?」
「えっ? あ、悠羽。藍上 悠羽」
「俺、加賀 隼人いくつ? 俺と、そう変わらない気がするんだけど。まさか、見た目の顔とはギャップ違う年上系?」
「違いますっ!15。今度、高校生になるんだけど」
「じゃあ、俺と同級生なんだ」
「そうなんだ。本当に同級生? ていうか何処かで見た事あるんだけど……」
「同級生。ちなみに似てる人は3人いるからな」
「まあ…そうなんだけど……」
――― そこへ ―――
「ただいまーー」
女の人の声。
「俺の姉貴」
と、小声で言う男の子。
「あら? お客さん?」
≪うわっ! 美人な人……弟もカッコイイはず……≫
「は、初めまして! すみません、お邪魔しています」
頭を軽く下げる。
「まあ、可愛い♪ あんたと交換したい位だわ」
「おいっ! 隣のお兄さんの妹さんの悠羽さん」
「そうなんだ! 宜しくね♪」
「は、はい。こちらこそ宜しくお願いします!」
軽く頭を下げる。
「ところで、あんた仕事は?」
「この雨じゃ無理だから中止」
≪仕事? 中止? バイトじゃなくて?≫
「あ、あの……仕事って? バイトじゃなくて……ですか?」
「その子、業界の子だから」
「業界……? あ、あーーーっ!」
ガタ…ガタン……
私は立ち上がった。
「そ、そうだっ! 加賀 隼人君だっ! どうりで見た事あると思った! やだ……すみません……芸能人であるあなたに飛んでもないご迷惑を……」
「いや、まだお互い知らなかったし、不法侵入扱いされるのは当たり前だし」
「いやいや……下手すれば大ニュースに……」
「気にすんなって!」
私達は、さっきの出来事を話す中、色々と話をしていた。