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異世界化したこの世界で、君を護りたい  作者: まう
第一章 君を守るための場所
4/4

〜目的地まで〜

翌日明朝、俺達は行きがけに車を入手し、目的地に向かうことにした。


我々自衛官はともかく、民間人に隠密行動は難しいとの判断だ。


目的地までは距離もある上、緊張を保って体力を考えつつ、休憩を取りながら行軍することは、不可能に近い。


路上には放置車両や事故車で溢れているのは、これまでの道中でも分かり切っていた。


そこで、堅山3佐の命令により、近場の工事資機材リース(レンタル)ショップに寄り

ブルドーザー二台、大型ダンプ二台、箱型の大型車一台を拝借。


ブルドーザーで放置車両を押し除けながら進む強行軍作戦を行う運びとなった。


何故バスではなく、貨物車なのかって?


それは簡単だ。


単純に戦闘シーンを見せたくなかったと言うこと。


それから、防御力の問題だ。


窓ガラスばかりで、いかにも人が乗っていればグール共の標的になるだろう。


後は車高の問題だ。


日本ではノンステップバスが主流だ。


乗降しやすいが、それは障害物があったら引っかかり易いと言う事でもあるのだ。


大型車なら、車高が高いため、ある程度の障害物は気にならないはずだ。


俺達は隠密行動で、車両類と、民間人用の毛布類を掻き集め、最低限の怪我をしないための備品を回収し、目的地へと向かっている。



相沢「しかし、あっけないもんっすねぇ。

まさか市街地に入ってグール5匹しか遭遇しないとは…」


大須「しかも、4匹は鬼忍が秒殺でしたし。残りの1匹も相沢が串刺しにしてましたもんねぇ。

小声でリア充滅ぶべしっ!って聞こえました笑」


相沢「なんで聞こえてるんっすかっ!だってあのグール自分の周りに女の子しかいなかったじゃないですか!」


いや、グールに女も男もないんじゃ…


遊佐「あのーそれってめっちゃ私怨入ってません?」


クスリとしながら遊佐さんが言う。


片桐「ほぅ…相沢3曹?ボーナスは覚悟しとけよ?」


俺なりの超絶スマイルで相沢3曹を見つめる。


相沢「嘘ですからぁぁあぁ!嘘ですよぅぅう?

大須!お前見てろよ!駐屯地にあるお前のロッカーの中身、嫁さんに送りつけてやるからなっ!」



大須「馬鹿やめろっ!あれは処分するよう遺書にも書いてるんだからなっ!」


まぁ確かに、片桐家にある秘蔵PCも水没処分するよう、俺も遺書に書いてある笑


周囲に若干の笑いが広がる。


萩月さん達、女子高生組は若干引いている。


うん。空気読もうか君達。


片桐「その辺にしとけ。お前等が馬鹿やるからお客さん寄って来たじゃねぇか!」


現在、俺達はブルドーザー、大型ダンプ、民間人が詰め込まれた大型車、大型ダンプの縦隊陣形で目的地に向かっている。


ガッシャンガッシャン言わせながら、進んでいるもんだから、グールが散髪的に襲ってくる。


しかし、ダンプにはあおりがついており、登ろうとしてきたグールを落とすだけで良い。


今も2匹ほど飛びついて来たが、小銃の銃床で叩き落とした。


緊張感がないと言えばそれまでだが、走り続けている分、追っかけてくるやつ等だけ始末したら良いだけなので、楽なもんだった。


それに、相沢と大須のやり取りはわざとだ。


あれでいて、気を使っているのである。


なんで女の子2人がこっちに乗っているのかと言うと


大型一台では民間人は収容しきれなかったので、ダンプにも何人かずつ分譲しなくてはならなかった。


萩月さん当たりは、俺から離れようとしないので、一緒に乗っていた。


男性恐怖症なのに、頑張っている。


なぜか知らんけど俺と一緒の場合は大丈夫なのだそう。


さて、もうそろそろ目的地に近づいてきたころだ。


片桐「さぁ、これからが問題だな。」


萩月「何か問題なんですか?順調に行ってるように見えますけど。」


相沢「あぁそれはですね、移動間は大丈夫なんですが、これが止まったらまずいんすよ。」


大須「まぁこんだけうるさければなぁ。

止まった瞬間からわらわらグール共が飛び出てくるかもしれないって事なんだよね。」


萩月さんが顔を青くして身震いする。


片桐「まぁ大丈夫だろう。人里までは距離があるし。直前に広めの駐車場があって、そこで防御陣形を取るから。」


「ただし、同時に目標も制圧し、安全を確保する部隊も出さなきゃならない。昨日から今日に掛けて、生存している味方部隊もこっちに向かってるって話しだから、そっちも当てに出来るしね。」


そう、俺達はいくつかの部隊と連絡が付いていた。


大きいのは、福島駐屯地にいる残留部隊と連絡が付いた事だ。


あの駐屯地は背後は山で正面のみを守れば良いので、防衛は容易い。


ただ、正面の向こうが市街地なのが問題なのだが…


僅かばかりだが、テント類、給水車や、炊事車両などの補給部隊を送ってくれる手筈になっていた。


向こうでも多数の民間人を保護しているだろうに、ありがたい。


事実として、気は抜けない。だが、絶望的ではないって説明しているのだが


この少女2人はまだ不安そうな表情をしている。


萩月さんが、無自覚に俺の裾を掴んで震えている。


もう少しこうしていて欲しい。


あ、いや安心させてあげないと…


片桐「大丈夫だよ!こんな馬鹿共だが、こいつらは腕は一流なんだ。全員レンジャー記章持ちだしね。」


俺はそう言って頭を撫でてやる。


また、あの時みたいに、生気のない目をしていたが、撫でてやると、少し顔を赤らめて、光が戻って来た。


ふにゃぁっとした、二ヘラ顔である。



相沢「遊佐ちゃんも撫でてあげようか?」


遊佐「…大須さん、その鉄砲借りていいですか?」


うん、遊佐さんむっちゃいい笑顔だなぁ…


相沢「ちょっ!待った!それは洒落にならないっす!おいっ!大須、安全装置の解除なんて教えてんじゃないっす!やめてええぇ。」


まぁ相沢は撃たれても死なんだろう。




萩月「あのー、一つ聞いてもいいですか?」


片桐「うん?どうしたんだい?」


萩月「福島の基地までそんなに離れていないなら、どうして福島まで行かないんです?」


そう、目標から福島駐屯地まで、そこまで離れていないのだ。


片桐「それはね。福島駐屯地の正面が市街地なんだ。ずーっと何10キロもね。そこの人達全てが福島駐屯地には入りきらないし、グールが大軍で襲い掛かってこられたら、流石に持たないからだよ。対して今から向かう所は敵が来る方向が制限出来るから、小部隊でも守り易いんだ。」


片桐「まだそこまで、話しは進んでいないけど、これから、城壁都市を作るみたいな感覚でいてくれたらいいよ。」


萩月「城壁都市ですかっ?イタリアみたいな?」


片桐「そうそう、そんな感じ!それから猪苗代湖が近いから、水に困らないし、電気だって使える。少しは希望が持てるだろう?」


萩月「電気が使えるんですかっ?嬉しいです!それならお風呂にも入れますし。」


そう、発電所は必要不可欠なのだ。


人として最低限生きるために、また、グールや中国軍から街を守るために…


先日、連絡が付いた第22普通科連隊の生存者の部隊が、堅山3佐の指示で、発電所の確保に向かってるはずだ。


なんでも堅山3佐の同期の中隊長がまだ生き残っていたらしい。


本当に朗報だった。


片桐「さて、そろそろ到着するぞ。小隊!

降車後展開し、周辺の安全を確保せよ!第2小隊は左舷側を確保する!」


『了解!』


片桐率いる第2小隊は、15名まで増員されていた。


下川3尉以下第1小隊15名


本部管理小隊10名


その他、今までに合流した、自衛第の生き残りが8名、この8名はまだ編成されていないが、本部管理小隊と随伴する。


これが俺達が使える全戦力だった。



俺達は降車後、銃を構えながら扇型に展開する。


静寂、風の音、草や木々の揺れる音がする。

うむ、変わった様子はない。


片桐「第2小隊クリア!」


下川「第1小隊クリア!」


堅山「よし、小隊長は集合せよ!」



それから、俺達は軍議を行なった。


堅山「では予定通り、目標の制圧を行う。第1小隊は南側から、第2小隊は北川から、東へ向け移動。敵情を得つつ東の合流点より、制圧作戦を実施せよ!」


「本部管理小隊から5名が、西側にて警戒に当たる。同士撃ちに留意せよ!」


下川「第1小隊了解。」


片桐「第2小隊了解。」


堅山「では現在時1115時、1200より作戦を開始する!」

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