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異世界化したこの世界で、君を護りたい  作者: まう
第一章 君を守るための場所
1/4

〜離別と出会い〜


世界は滅亡しました。


いや、正しくは滅びに向かっている。


周りを見渡せば、最早無事な建物なんてない。


全てがボロボロで荒廃という文字がしっくりくる。



俺は瓦礫の一つに腰をかけ


ゆっくりと紫煙を吐いてゆく。


茜空から紫色に変わりつつある空に


煙が照らされ溶けていく。幻想的な光景だ。


ははっ、どうやらまだ綺麗だって感じる心は残っているらしい…




本当、全くどうなってやがる…


どうしてこうなった?何で俺はたった2人で、こんな荒廃した場所に座ってるんだ?


自問自答しても、無意味な事だ。


分かってるんだよ。そんなことは…


でも理不尽過ぎるだろ。


ラノベの主人公じゃないんだ。俺は一般的な兵隊さんなんだよ。


孤立無援なんだから、ぼやきたくもなるだろう。


声には出さないけど…


俺は、この娘を守らなきゃならない…


絶対に…絶対にだ!



…とは言ったものの、疲労感は気合で消しとんではくれないんだよなぁ。



肩に掛けた89式小銃がずっしりと軋むように痛む。


疲れた。


そう、疲れ切っていた。


全てを投げ出して、横になってしまいたい欲求にかられる。


人は極度の疲労感がたまると、無意識に目を瞑ってしまいたくなる。


その欲求に負けたら、二度と目を覚ます事はないだらう…


それが戦争だ。


俺は死ぬわけにはいかない。俺のすぐ後ろに部下の命と引き換えに守った人間がいた。


そこには、生きる物の精彩を欠いた濁った瞳で、女子高生の少女が小さく座っている。


こんな状況で薄汚れてしまっているが、可憐な少女と言って良い容姿だ。


髪はセミロングで、所々破けてはいるが、ブレザーと、チェックのスカートを着ている。


見た目にまだ幼い。しかし、スタイルは良い方だと思う。


だからこそ、こんな戦場に置いておくなんて出来ない。


と言っても、何処から何処までが戦場で、何処から安全なのか、最早分からないのだが…




彼女とはほとんど言葉を交わしていない。


というより、下手に言葉をかけれないのだ。


あんな悲惨な経験をしたんだ。


彼女から泣き付かれるならまだしも、俺が触れてはいけない。


普段通りに接してやるしかないのだ。


口数は少ないが、頼りにはしてくれているのだとは思う。


他に寄る方がないのだから、当然といえば、当然なのかもしれないが…




全く、本当にどうしてこうなった…





〜今から8時間程前〜


高野「片桐3尉!グールの数が多すぎます!支えきれません!」


片桐「高野曹長!中央と右舷に集中しろ!

第1小隊との隙間から来る奴らは俺が白兵戦で倒す!

機関銃手!後方を掃射しろ!今前に出てる奴等は引き受けてやる!」


俺は銃剣を小銃につけ、左舷の突破された場所に突っ込んでいく。


足場が悪い、水に濡れた奴等も機動力が落ちている。


突破してきたのは三体。


既に仲間と白兵戦をしており、下手に撃てない。



俺は流木を蹴り、宙を舞った。


バク転する勢いで遠心力をつけて、3m程飛び上がり、真下の敵に掃射した。


至近距離から数発貰った敵は崩れ落ちてゆく…


そのまま着地し振り返り様に一突き。

敵の心臓を穿つ。


もう1匹のグールが仲間の咽喉を噛みちぎり、こっちに文字通り飛んでくる。


脚力異常だろ、10mは離れてたんだぞ?


バイクが突っ込んでくる並みの速度に、俺は体を倒して、半回転、敵の首筋に銃剣を当て振り切る。


首を落とすまでは、いかなかったが、グールが活動停止になる損傷は与えられた。



突破された場所は持ち直した。


が、他の戦線は維持できなかった…



世界は混沌に包まれていた。


何処の馬鹿がやったのかは分からない。


だが、狂犬病ウイルスと寄生虫を掛け合わせた、生物兵器をとある紛争地域でばら撒いた馬鹿がいるらしい。


それらは人間を破壊衝動と食欲、性欲の塊りにしてしまい


人間では不可能な身体能力を持って、あたり構わず襲う。


ゾンビ?ぬるゲーだろ?こいつらはそんな大人しいもんじゃない


人間がゴキブリ並みの速度で動いているって言ったら分かるかな?


無理ゲーだろ?


俺達はそいつらをグールと呼んでいる



当然、人間が勝てる訳がない


世界各国はグールを殲滅するために核兵器を使用した


結果、まともに政府なんてもんがなくなってしまった



日本が、辛うじて水際作戦に成功していたのが1週間前までのこと


世界中で核兵器が使用され、連隊司令部へ中央からの命令が途絶えたのが、5日前


連隊司令部や中隊本部と通信不能状態になったのが3日前だった。


前線の兵士なんて、補給と命令がなければあっという間に全滅してしまう程脆弱なんだよ。


俺が撤退の判断をしたのも無理からぬ事だろう。


あ、そうそう、俺はこれでも指揮官だ。一応小隊長って奴だ。


俺は防衛大を卒業して2年の部隊勤務で、自分の小隊を率いて海岸防衛の任務についていた。


奴ら、韓国から泳いで来やがる。


全く油断出来なかった。


俺達は海外に鉄条網をはじめとした、防衛ラインを構築し、まだ海中で動きが遅いグール供を撃滅する任務を遂行していた。


しかし、日本政府も、俺達も失念していた。


敵はグールだけじゃなかったって事を…




当時中国はパンデミック当初の押さえ込みに失敗。


国内で大量の感染者と戦っていた。


もう逃げ場なんてない状況になりつつあった。


そんな中、中国の自己中軍人が、自分の国はもうダメだってんで


じゃぁ日本の国土を奪ってしまおうと考えたらしい。


日本に空挺降下&上陸して来やがった。


ただ逃げてくるだけならまだ良かったのに、あろう事か奴らは攻撃して来た。


海外防衛で手一杯だった自衛隊は2正面作戦を余儀なくされた。


だがまぁ、考えたら分かるよな?


そう、海岸の兵力が極端に減少


おかげで防衛線は瓦解

中央から命令が途切れる

俺の部隊も撤退中に離散、バラバラに…

連隊や、中隊とも通信が途絶

僅かに付いて来ていた部下は全滅

はい、もう俺ぼっちです



とはいえ、今は先程話した少女がいるから厳密にはぼっちではない。


名前は、萩月 雫と言うらしい。



この少女は、撤退中に保護をした女の子だ。


その時はまだ、数人の部下がまだ付いて来ていた。


防衛線が突破されたため、俺達は撤退行動中だった。


もともと定めてあった撤退時の集合点は、既に中国軍に占拠されており


さらに奥地へ、戦闘しながら撤退せざるを得なかった。


そんな時に、女の子の悲鳴が聞こえた。


俺達は悲鳴が聞こえた建物に突っ込んだ。


救えるなら1人でも救いたい。


あなただったら助けて欲しいと願うだろ?


だから、俺達は一か八かで救出に向かった。


俺達が行かなければ絶対に、彼女達は殺されるって分かっていたから。


無政府状態ってそういうことなんだよ。



しかし、最悪な事に、敵の中国兵の方が多かった


奇襲にこそ成功したものの


こっちは4人しかいないのに


敵は12人もいて、結局、俺以外の部下はみなそこで死んでしまった


最低な光景だった


突入時に5人を射殺した。


だが…


2人の部下は撃たれながらも、最後の一瞬まで戦い続けた。


「佐藤3曹!織田士長!」


「片桐3尉…ご武運を…」


「靖國で待ってまさぁ…後50年はこねぇで下せぇ」


すまない…すまない…


だが、2人の最後を看取ることを、敵が許してくれなかった。


俺は奥の部屋の残敵を高野曹長と共に掃討した。


曲がり角から出てきた2人を射殺。


滑り込むように踊りだし、奥にいた半裸の敵2名を射殺。


しかし、入り口から1人戻って来て、高野曹長も撃たれてしまった。


「ゴフっ‼︎ …片桐3尉、女性の方を先に保護して下さい…」


高野曹長は、壮年で経験豊かで、よく支えてくれた。


俺にとって、親父みたいに慕っていた人だった。


この馬鹿野郎がっ!


人の心配より自分の心配をしやがれっ!


「分かった。すぐに戻るから、堪えろよ!」


俺は走り出した。


まだ、生きていてくれと、そう…必死に願いながら…


そこで見た光景は悲惨そのものだった。


全裸で汚れて横たわる女性が数人


どう見ても、嬲り殺しにされていた。



その奥で、裸で付近に制服を散らばらせた少女が、虚ろな目をして横たわっていた


「もう大丈夫だ、ここから逃げるよ?いいね?」


俺は手近にあった新品のシーツを彼女に掛けて、付近の服を集めて手渡す


「俺は負傷した仲間のとこに行くから、服を着たら隣に来て。あまり、時間はないから急いでな」



少女は涙が流れた跡のある虚な表情でコクリと頷いた。


「あ、ありがとう…」


俺は、急いで高野曹長の元に向かった




高野曹長…


彼はもう事切れていた


僅かに微笑んで、写真を握りしめていた


奥さんと、娘さんの誕生日に撮った幸せそうな写真だ



涙が…

流れているのかもしれない


視界が歪む


それが涙なのか、ショックのあまり、意識が朦朧としていたのか


分からない


もう、何も、ワカラナイ…



とうとう、俺は1人になってしまった。

部下を全て失った、無能な指揮官


部下ではあったが、俺はこの人達を尊敬していた。


馬鹿で、一生懸命で、それでいて優秀で、若造の俺を精一杯補佐してくれた。


苦しい、呼吸も血の匂いも、今までの思い出も、全てが刺さるようで



ダメだ、まだ悲しんではいられない。


部下の遺書と、弾薬、ドッグタグを回収しないと…


でも、立ち上がろうとしても、力が入らないんだ…



突然、後ろからふわっと柔らかい物に包まれた。


あの子だ


女子高生の女の子が、後ろから抱きしめてくれている。


自分も、地獄のような目にあったばかりだと言うのに…



肩に水の滴る音がした


どうやら泣いているらしい


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


全く、君が謝る必要ないだろうに


君は悪くなんてないんだから…



でも、再び立ち上がるには十分なきっかけだった。


本当、優しい子なんだなぁ。


俺は彼女の細くて柔らかな腕に、優しく手を添えて


「正義感の強いおっちゃん達だったんだよ…君が悪い訳じゃない。

彼等の命を無駄にしないためにも早く脱出しよう」


彼女がうなずく



そうして、仲間の遺品を集めて、最後に遺体に火を放って


その場を後にした。


皆様、初めまして、まうと言います。

異世界物の小説が大好きで、でも読んでるだけじゃ物足りなくなって、執筆してみることになりました。


はい、要は小説家の卵になる前の、さらにその前くらいの初心者になります。笑


この作品のテーマは、単純です!


支え合い、それが愛情と良好な関係を育む!


そして、実際に起こり得るきっかけから、ファンタジーと、リアリティを繋げたような作品にしていきたいと思います。


カッコよく、特殊能力、魔法バンバン!も好きですが、この作品では、能力だけじゃない。

いわゆる戦術、戦略的なリアリティを出していけたらなと思っています。


拙い文章ではありますが、お楽しみ頂けたら幸せです。


また、反応が良ければ、なるべく短期投稿を目指したいと思います!


皆様、どうか宜しくお願い致します。

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