山の中の三姉妹
三姉妹とは言ったものの、ほぼ次女の少女目線で話が進みます。
東暦1240年、2月27日、天候は晴れ。今日も絶好の薪割日和だ。
ここは山の上にある民家。私はここで、姉と妹と一緒に暮らしている。
私の仕事は薪を割って、割って、割りまくって、荷台に乗せて
街へ運んで、売ってくる。
前は人力で運んでいたが、最近は自動で動く
``車``なるものが出てきた。とはいえ、まだお値段高めなようだ。
そこらへんに転がって放置されていたやつを見つけて、
そのまま動くやつを見つけた私は、
なんと運のいいことか。
「おーい、荷台積み終わったぞー。さっさと行ってこーい。」
おっと、どうやら姉が積んでくれたようだ。
家の姉は男が十人掛かりでも持ち上げられない重しを
たった一人で、しかも片手で持ち上げてしまうほどの怪力だ。
本当に頼りになる。
「ほーい。今着替えっから待っててくんろー。」
あ、いっけね、なまりがでてしまった。これは失礼。
そして私は街へ出ていくために着替え、家の鍵を持って、
外へ出た。
「お姉ちゃん、出かけるの?」
「おう。ちょいと街に出て、薪売って来っから、元気で
待っとれよ。」
「うん・・・」
「泣くのはおよしよ。」
「泣いてないもん!」
うちの妹は、こういう時だけはっきり声を出す。
いつも出せるようになってくれれば嬉しいんだがねぇ。
「ほんじゃあ行ってきまーす!」
「おーう、気を付けてなー。」
そして私は車のエンジンをかけて、出発した。
この頃になると、薪が欲しいと言ってくる顧客が
いっぱい来るもんで、お金がウハウハたまってくる時期だ。
最近は``ストーブ``なるものが出てきて、一時はひやひやしたが、
キャンプなんかで使われるらしいので、まだまだこの商売は
続けられそうだ。
そんなこんなして、山を下り、だだっ広い草原に出て、
20分間走り続けて、ようやく城門が見えてきた。
「こんにちは、薪売りのお方、今日も薪を売りに?」
「おうそうだともよ。ほれ、身分証。」
「・・・確認しました。どうぞ、お入りください。」
こっから、いつもの行きつけの店にいって、薪を
売る。いつものパターンだ。
毎日のようにこんなことしてるもんだから、
休みの日も同じ時間に起きてしまう。
まぁ健康なので、全く問題はない。
そして、薪を売っているお得意先に行って、こんなことを聞いてしまった。
「なぁ嬢ちゃん、知ってるかい。」
「概要全く聞かされていないから、知ってる知らないが
言えんですよ。」
「ああ、こりゃ失礼。」
「最近、東の方の共和国から、ある傭兵一家が
亡命してきたって話だ。なんでも、人殺しから
物資強奪、暗殺に用心護衛だってうけるらしい。」
「へ~、この西の帝国に来るとは、あっちで住めなくなった
理由でもあるんですかね。」
「だろうな、何でも、あっちの王族に矛先を向けたんだそうだ。
おかげで、騎士団の大部分が壊滅した。なんて噂話も出て来てるくらいだ。」
昔から亡命だの合併だのは聞いたことはあるが、
傭兵一家が亡命なんてのは聞いたことがない。
最近、妙に東側が慌ただしいとは聞いたことがあるが、
まさか、その一家の仕業だろうか。
今の世の中は恐ろしい。
「まぁ、嬢ちゃんも狙われないようにな。」
「私はそんな金を払って奪える命じゃありませんよ。それでは」
「おう。」
さて、今日も無事に終わったので、家に帰ろう。
今頃姉が昼飯を作ってくれているはずだ。
そうして私は、城門を抜けて、家へと帰ってきた。
「お帰りー。飯出来てるから、冷めないうちに食っちまおうや。」
「お帰りーお姉ちゃん。どうだった。」
「おおー良い値で今日も買ってくれたよ~。」
「ささ、昼飯食べちゃおうか。」
今日の昼飯はうどんだった。
姉が足で踏んで元を作り、コシがあり、しっかりしている。
たれもしょっぱ過ぎず、薄すぎずの味付けで、麺によく合う逸品だ。
完食し終わった後は、木を取りに行って、斧で割って、
明日の分もためておく。あとは自由に、のんびり
ひなたぼっこでもしている。
そんな時・・・
「あのーすみません。」
「ん?なんだね君。見ない顔してんね。
東の人?」
「はい、実は、ある人物が西の帝国に亡命したとのことで、
我々はそれを追ってきているのです。」
「え~っと・・・大変お恥ずかしいことなのですが、
帝国ってこっち側であってますよね?」
「そうだよ。」
「ああ~、よかったぁ。道間違えてなかったぁ。」
「気をつけてね。」
「はい。それでは~」
亡命したやつを追ってるって、もしや例の
傭兵一家だろうか。だとしたら、結構重要人物だったのだろうか、
その傭兵一家は。まぁ、とはいえ私たちが絡むべきことではない。
余計な詮索は身の危険につながる。
そしてその後は、夕食を食べ、風呂に入って、姉とバカ話をして、
布団しいて、寝た。