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難病という名の長いトンネル〜幻覚少女のまほろばへ  作者: 今来村主(いまきのすぐり)
難病という名の長いトンネル〜幻覚少女のまほろばを追いかけて
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⑱幻覚少女のまほろばはいずこに~その一

2018年に宇宙船のワープ時に意識を失った難病患者で永遠の39歳、結城内乃介ゆうきないのすけ

彼が目覚めた時には難病を克服し、健常者になっていた。

しかし、時は2038年。20年も未来へ行ってしまっていたのだ。

そばには幻覚少女ホリーとの間に生まれた娘アニーモがいた。

だが、ホリーの行方は分からない。

宇宙船への援助をしていた内乃介の父親も既に他界して、ホリーの存在を知る手掛かりさえなかなか見つからない。

そんな折、主治医のドクター丘乃おかのが自ら不死人間であることを内乃介に告白するのだった。

そして、ドクター丘乃こと丘乃柊音おかのしおんがホリーに関する手掛かりを掴んでいるのではないかと推測する内乃介。

だが、内乃介はドクター丘乃の奢りで飲んだ1億円以上もする超高級赤ワインに酔っ払ってしまい、翌日にドクター丘乃から話しを聞き出そうと大豪邸の自宅に招くのが精いっぱいだった…。

⑱幻覚少女ホリーのまほろばばいずこに~その一


【朝六時~、無限国(むげんこく)六麓荘(ろくろくそう)にある自宅にて】

 緑豊かで閑静な高級住宅街にあるこの家は、十年前に亡くなった資産家の父親が残してくれたモノの一つだ。

 なお、義母は十一年前に肺がんで死亡。その子どもも同じ月にバイクで転倒して即死したという。

 人の人生は一寸先は闇だ。

 一方で、元執事の谷ジイこと谷垣(たにがき)さんは現在八十八歳で早朝のジョギングをかかしたことがないくらいに健康だという。この前は、ボクの見舞いに病院までわざわざ来てくださったと娘のアニーモから聞いた。ありがたいことだ。

 ココは、敷地面積五百平米の大邸宅ではあるものの、この辺りではコレが平均的。

 一般の庶民が住めるような場所ではもちろんない。

 一度は父親に捨てられたボクが、なぜココに住めるようになったのかは分からない。

 何しろ、ボクがまともになってからまだ二十四時間も経過していないからな………。

         ☆    ☆    ☆

 直ぐ側から、娘のアニーモの甲高い声が聴こえてくる。

 「お父さん、お父さん、起きて!」

 ボクを呼んでいるようだ。

 ボクは目を開けようとするが、朧げにしか見えない。

 しかも、アニーモではなく、あろうことかボクの眼にはホリーの姿が見える。

 「うう~ん。どうしたんだろう?」

 「昨夜の一億円以上もするロマネ・コンティが利いたのか?」

 「ドクター丘乃とはあの後……全然、記憶にないや」

 ボクは心の中でブツブツほざいている。

 ボクの目はおかしくなってしまったのだろうか!?

 右手で幾度となく眼を擦っても、ボクの霞んだ瞳に投影されているモノは、他ならぬホリーの優しげで大きな碧い瞳であり、ホリーの麗しくも薄い唇であり、ホリーの筋が真っ直ぐに通った高い鼻であり、ホリーのほっぺにあるエクボであるのだ。

 ボクは、気でも狂ったのだろうか?

 そうしていると、娘のアニーモは、ボクの身体を起こそうとベッドに乗って来た。

 「お父さん、大丈夫?」と言いながら、ボクの両肩を優しく揉んでくれるのです。

 「お父さん、肩凝っているよ」

 「そうかあ。気持ちいいなあ。じゃあ、もう少し頼むよ」

 「先生にも言われているからね」

 「ドクター丘乃(おかの)先生にか?」

 「もちろんよ。先生は明け方に急いでご自宅へ帰られました」

 「えっ、先生がこの家に泊まったのか?」

 「アハハハ。お父さんが強引に先生をこの家に入れたのよ」

 「全く憶えてない!」

 「そうだと思った。お父さんは何も言わずに寝室へ行ってすぐにベッドでダウンしていたから」

 「アニーモは先生に失礼なことをしていないよな」

 「何言っているの、お父さんったら?……そう言えば、お父さん、寝言で『ガリヴァー、ガリヴァー』ってしきりに言っていたけれど、ガリヴァーって巨人のガリヴァーのこと?」

 「そんなこと言っていたのか。それ、面白いな。覚えていないけどな。お父さんはガリヴァーだぞ。ワオーーー! 食べちゃうぞー」。ボクは、ガリヴァー(?)になって娘に襲いかかるフリをしてみせた。

 「アハハハハ! 何、それ? ガリヴァーじゃなくてオオカミよ」

 娘が笑っている。その笑顔がたまらない。

 ただ、その笑顔が一枚しかないホリーの写真の顔にあまりにも似ているのでどうにかなりそうだ。

 ドクター丘乃が不死人間だということをバレないように道化に走ったらこのザマ。

 ホリーはどこへ行ってしまったのだろうか?

 ボクは、彼女がまほろばの地にいることを信じている。

 そのためには、ドクター丘乃に頼るしかない。

 娘には悟られぬように。

 この時は、それが娘のためだと信じて止まなかったのだ。

 

◎登場人物

ボク…結城内乃介ゆうきないのすけ。39歳。難病患者。車椅子生活。母を21歳の時に亡くし、資産家の父はその2年後に愛人と再婚。内乃介は父に1億円の小切手で縁を切られる。そのカネでひとり豪邸に住む。その後、幻覚少女ホリーと巡り会い、人生が急展開。2030年から2018年に逆行したと思ったら、今度は2038年に。娘のアニーモが現れる。

ホリー…結城内乃介のクスリの副作用で生み出された幻覚少女。推定年齢18歳。東洋哲学・脳神経細胞・心理学に造詣が深い。ホリーの名の由来は、映画『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘプバーンが演じた役名から来ている。2018年のキャラは貧しい舞台女優の卵であり、内乃介宅のメイド。これは内乃介が描いたアニメ『お願い、ご主人様』から来ている。ナメクジが大の苦手。一方、宇宙船では船長を勤める。

アニーモ…結城内乃介とホリーの愛の結晶。絶対音感の持ち主で、ミュージカルスターに憧れる少女。明るさだけが取り柄。勉強は苦手。幼少時の記憶がない。母親の記憶もない。天真爛漫高校に通う。16歳。

ドクター丘乃おかの…難病に関して一目置かれているフリーランサーのドクター。結城内乃介の主治医(2030年の世界)でもある。額に斑紋を持っているが、普通は髪の毛で覆い隠している。化石のコレクター。自称48歳。

谷垣さん…結城内乃介が幼いころから住んでいた大邸宅の執事。2018年の68歳の内乃介が難病であることを知って、彼を助けるためにM78星雲のパンドラ星へ行くことに。88歳。

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