⑭ついに、この時が…めざせパンドラの星~その四
29歳で生涯治らないとされる難病にかかり、無気力となった青年、結城内乃介。
ある時、クスリの副作用で幻覚を見るようになった。その幻覚が彼を救うことになるとは?
その幻覚というのは、知的で天真爛漫な舞台女優の卵だった。その女性の名前はホリー。
ホリーは彼を過去の自分の世界や異世界へと連れ出し、彼を幸せの絶頂へと導くのだった…。
⑭ついに、この時が…めざせパンドラの星~その四
【二〇一八年一月十五日、宇宙船『神聖卑弥呼』内にて】
御宅隊員がおっかなびっくり右往左往している。
彼にしては珍しいことだ。IQ二百はどこへ行ってしまったのだろうか?
まるで鳴き声を忘れたカナリアのようだ。
ボクはその様子をベッドの上にあるディスプレイから目を凝らしてジッと見つめていたのだが、何もしてやれないもどかしさにイラついていた。
御宅隊員にひと言声をかけたくて仕方ないが、このアキネジア――『無動』の状態では何もできやしない。
「御宅、焦るんじゃない。心を落ち着かせよう。キミならできる。自信を持つんだ」
ボクは心で唱えた。
すると、どうしたことか、ホリー船長が御宅隊員の方へと近づいていき、
御宅隊員にこう言ったのがボクのベッドの上にあるディスプレイからも微かに聞こえてきた。
「御宅隊員、焦っちゃダメじゃないの。心を落ち着かせて。あなたならきっとできるわ。自信を持ってね。御宅隊員の大好きなモカコーヒーを用意したわ。まずは、これを飲んでね、リラックスして」
ボクの言の葉がホリーに乗り移ったのか?
ホリーのお腹の子『アニーモ』が伝えてくれたのか?
それとも、単なる偶然なのか?
そんなことはどうでも良い。
結果オーライだ。
☆ ☆ ☆
御宅隊員は、モカコーヒーの香りをかいで、
「う~ん、やはりこのさわやかでいてフルーティーな芳醇り。コレ、コレ! 気分がスーッとする」
と満足気にイエメン産の高級なモカ・マタリをゆっくりと飲み干した。
そして、御宅隊員は、いつもの頭の回転の速さで、エンジントラブルをアッという間に解決させたのだ。
ボクは、彼の底力を見られて、うれしくなった。
単なるオタク坊やではなかったのだ。
とってもかっこいい愛すべき友であったのだ。
ボクは、嬉しくて、嬉しくて泪がホロリと出てきて、しょうがない。まいったぜー。
☆ ☆ ☆
ホリー船長が再びM七十八星雲のパンドラ星に向けてのワープへのカウントダウンを始めた。
「五・四・三・二・一・ゼロ……」
ありとあらゆるモノが歪んでいくように見える。
コレが時空の歪みによるワープというモノなのか?
う~ん、何か、何かが違うような気がする……。
一体、なんだろう?
頭がフワフワとぼんやりしてきた。
そう感じていたら気が遠くなっていく。
これは現実なのか?
それとも、夢なのか?
「ホリー! ホリー!! ホリー!!! ホリー!!!! ホリー!!!!! ホリー!!!!!!!………」
ボクは、ただホリーの名前を何度も何度も声が枯れるくらい叫んで、彼女を捜していた。
この脚で………。
◎登場人物
ボク…結城内乃介。39歳。難病患者。車椅子生活。母を21歳の時に亡くし、資産家の父はその2年後に愛人と再婚。内乃介は父に1億円の小切手で縁を切られる。そのカネでひとり豪邸に住む。
ホリー…結城内乃介のクスリの副作用で生み出された幻覚少女。推定年齢18歳。東洋哲学・脳神経細胞・心理学に造詣が深い。ホリーの名の由来は、映画『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘプバーンが演じた役名から来ている。2018年のキャラは貧しい舞台女優の卵であり、内乃介宅のメイド。これは内乃介が描いたアニメ『お願い、ご主人様』から来ている。ナメクジが大の苦手。一方、宇宙船では船長を勤める。
御宅杉雄…IQ200のゲームオタク。幼少時から宇宙人がいることを信じ、NASAに入ろうと面接を受けるが、AI(人工知能)の面接官に履いている靴について質問攻めにあったため、逆ギレして面接官を罵倒してしまい一旦は不採用に。身長157センチ。外出時には必ずシークレットシューズを履く。29歳。




