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難病という名の長いトンネル〜幻覚少女のまほろばへ  作者: 今来村主(いまきのすぐり)
難病という名の長いトンネル〜幻覚少女のまほろばを追いかけて
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⑫ついに、この時が…めざせパンドラの星~その二

29歳で生涯治らないとされる難病にかかり、無気力となった青年、結城内乃介ゆうきないのすけ

ある時、クスリの副作用で幻覚を見るようになった。その幻覚が彼を救うことになるとは? 

その幻覚というのは、知的で天真爛漫な舞台女優の卵だった。その女性の名前はホリー。

ホリーは彼を過去の自分の世界や異世界へと連れ出し、彼を幸せの絶頂へと導くのだった…。

⑫ついに、この時が…めざせパンドラの星~その二


 「もう、()んな宇宙船『神聖卑弥呼(サンクタ・ヒミコ)』に乗ったのか?」

 周囲を見渡して船員の確認を取るのが年長者の谷ジイこと谷垣(たにがき)さん。ボクの家で長年、執事(しつじ)を務めていただけあって画竜点睛(がりょうてんせい)()くことはしない人ではあるが、プライベートな面は酒にバクチに女で宵越(よいご)しの(ぜに)は持たない主義らしく、後輩の面倒見(めんどうみ)は素晴らしく良いらしい。昨夜(ゆうべ)も夜遅くまで野呂(のろ)医師と豪遊(ごうゆう)していたらしい。

 谷ジイの言葉に反応したIQ二百の御宅杉雄(おたくすぎお)が目を(さら)のようにして探し始め、な、なんと十秒後には、

 「あっ、野呂医師がまだのようです」と甲高(かんだか)い声で叫んだのだ。

 「さすがは、杉様(すぎさま)。ところで、野呂医師はどうしてまだなのです。いつもは時間厳守で、遅れたことはありませんのに、こんな大事な日に限ってどうしてなのでしょう」。張本人(ちょうほんにん)の谷ジイは、ボケているのか、すっかり昨夜の出来事をこの時忘れていたようだ。

 「えっ、昨夜は確か野呂医師は谷ジイと一緒じゃなかったんですか?」。空気の読めない有奈眠眠(ありなみんみん)は、谷ジイに面と向かって金切(かなき)(ごえ)を上げた。

 谷ジイはその事が思い出せなくて、眠眠に突っかかる。

 「眠眠、また口から出まかせか。(ゆる)せん。成敗(せいばい)(くだ)す」と時代劇の口調で、眠眠のデカ(じり)を持ち上げて三度ばかりペンペンと(たた)いた。

 眠眠は、またもやの谷ジイのセクハラに()え兼ねたようで、

 「イタッ。何をするんですか? ワタシは真実(しんじつ)を言ったまでです。『真実の口』に手を入れてもいいです。ウソはついていません」

 と正直に答えながら、谷ジイの股間(こかん)目掛(めが)けてひと()り。

 「あ~~~。イテェーー! 何しやがる!」。谷ジイは、痛くて痛くて真っ赤な顔をしている。

 こうなってくると、ボクが(ほこ)(おさ)めるしかあるまい。

 ボクが横になっているベッドからは、宇宙船の内部が監視(かんし)できるようにベッドの上にディスプレイが配置されていて、音声入力(おんせいにゅうりょく)――要するにボクの声で画面が切り替わるシステムになっている。

 そして、ボクはベッドの上から谷ジイと眠眠を呼んだのだ。

    ☆     ☆     ☆  

 「谷ジイは本当にかわいそうな人なんだ。病気(びょうき)なんだよ………」

 この前、ボクの主治医(しゅじい)でもある野呂医師に、その話を聞かされた時にはマジでビックリした。

 この病気のことを知っているのは、この宇宙船の乗組員では野呂医師とボクだけ。ホリーは船長だけれど、妊婦でもある。余計な負担はかけられない。だから、彼女には一切(いっさい)、伝えなかった。

 近く予想される第三次世界大戦の危険性(きけんせい)回避(かいひ)するべく身内(みうち)を中立国のマロディオ(海神)国に避難(ひなん)させたため、近くに身寄りのいない谷ジイは、この先どうなるのだろうか?

 心配だ。

 ボクが恩返(おんがえ)ししなくちゃ。

 そんなことを考えていたら、谷ジイと眠眠がやって来た。

    ☆     ☆     ☆  

 「眠眠、昨夜のことなんだけれど、ボクが(ねむ)れなくて、それで谷ジイを真夜中に呼びつけたんだ」

 「そうだったんですか? それは知りませんでした。谷ジイ、ゴメンなさい」。恐縮(きょうしゅく)しきりの眠眠。

 谷ジイは何のことだかサッパリ分からなかったが、ボクに口裏(くちうら)をうまく合わせてくれた。

 「お坊ちゃん、そうですよ。お坊ちゃんは昔から眠れなくなると私をお呼びになる。私も六十八歳ですから、そろそろこの件に関しましてはホリーお嬢さんにお譲りさせて頂きたく存じます」。これほどまでに(べん)がたつのも、さすがは(とし)(こう)。まだまだ病気にへこたれる年齢(とし)でもあるまいに………。

  しかし、この時、ボクは今後キーパーソンとなる眠眠にウソをついてしまっていたのだ………。

◎登場人物

ボク…結城内乃介ゆうきないのすけ。39歳。難病患者。車椅子生活。母を21歳の時に亡くし、資産家の父はその2年後に愛人と再婚。内乃介は父から1億円の小切手を渡されて縁を切られる。ひとり豪邸に住む。

ホリー…結城内乃介のクスリの副作用で生み出された幻覚少女。推定年齢18歳。東洋哲学・脳神経細胞・心理学に造詣が深い。ホリーの名の由来は、映画『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘプバーンが演じた役名から来ている。

谷垣さん…結城内乃介が幼いころから住んでいた大邸宅の執事。内乃介が難病であることを知って、彼を助けるためにM78星雲のパンドラ星へ行くことに。68歳。

有奈眠眠ありなみんみん…ナイスバディな25歳。実のところは取り外しが自由な胸で男心を惑わせるのが快感になっていた。ということもあってなのか、子どもは4人いるが、家にダンナはいない。

御宅杉雄おたくすぎお…IQ200のゲームオタク。幼少時から宇宙人がいることを信じ、NASAに入ろうと面接を受けるが、AI(人工知能)の面接官に履いている靴について質問攻めにあったため、逆ギレして面接官を罵倒してしまい一旦は不採用に。身長157センチ。外出時には必ずシークレットシューズを履く。29歳。

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