3話
山上が帰ったのを見届けた颯介は、事務所内を見回した。どこから、どう手を付けたら良いのか悩みほどに、片付けのしがいのある状況だった。はぁと溜め息をつき、キッチンに入っていった。とりあえず、コーヒーでも飲んでと思ったのだろう。キッチンの方は特に被害もない。だが、マグカップがない。お湯を沸かしながら、戸棚の中から紙コップを出して、インスタントコーヒーをいれた。
あちこちと割れた窓から、冷たい風が入り込んできているせいで、とてもじゃないが、上着を脱げない。熱いコーヒーをすすっていると、開けっぱなしのドアがノックされた。
「おや…おはよう。学校は?」
「おはようございます。午後からは自主休講しました…これ、何なんですか?」
ひょっこりと現れた祐斗が、事務所内を見回して、目を丸くしている。颯介にも何と説明してよいのか分からず、苦笑いを浮かべて首を傾げるしかなかった。
「何か分かりましたか?」
「どうだろ?俺にも分からないけど…社長と宮前さんの様子からして、いい状況になったわけではなさそうだったよ」
颯介は祐斗の分のコーヒーをいれると、渡してやった。祐斗は鞄を置いて受け取ると、なぜ紙コップなのかと不思議そうにしていた。だが、文句は言わずにふぅふっしながら飲み始めた。




