3話
「誰かからの連絡が入るかもしれないからな…待機しといてくれるか?何かあれば、すぐに連絡してくれ」
「分かりました。ま、ここを拠点にする以外にないですしね…ついでに少し片付けしてますよ」
山上は事務所内を見回して、溜め息をついた。事務所をここに移してから、まだ1年も経ってないというのに、荒れ具合は凄まじい。
「なんつーか…」
「大丈夫ですよ。むっちゃんが戻って来たら、癇癪起こしながら片付けてくれますって」
颯介がにっこりと笑いながら言うと、それもそうかと山上は思った。この惨状を見たら、むつはぶつぶつ文句を言いながらも率先して片付けをし始めるのが、目に浮かぶようだった。
「だな…俺もちょっと寝てくるわ。悪いけど後は頼んだぞ…って、俺の上着どこだ?」
ようやく帰ろうとした山上だったが、寒い外に出るのにシャツ1枚のままなのに気付くと、上着を探して辺りを見回した。
「ごちゃごちゃしてて…」
「あ、ありました」
颯介は床に置いていた上着を拾い上げた。硝子とタバコの吸い殻にまみれているのを、親指と人差し指でつまみ上げている。
「汚い物みたいに触るなよ…きったねぇけど」
受け取った山上は、からからと窓を開けると外に向かってばたばたと揺らして汚れを落とした。




