3話
玄関の電気をつけ、中に入っていく。一昨日、来た時に山上と篠田で玄関と放置されていた買い物袋を片付けてくれたおかげで、いつも通り綺麗になっている。部屋の中は、来た時と変わりない。警察が入る前に、あらかた調べたから今更、何か見付かるとは思えなかった。
6人で来た時には気付かなかったが、部屋の中にはむつの匂いに満ちている。体臭とタバコ。それから、いつも使っている香水やトリトーメントそんな色々な香りの混ざった匂いだった。冬四郎はその匂いを、吸い込むと側にむつが居るような気がした。だが、居ない。
ふらっと室内に入っていった冬四郎は、むつの寝室のドアを開けた。ドアを開けるとより一層、むつの匂いがしたような気がした。カーテンも閉まっているからか、部屋は薄暗い。冬四郎はずかずかと入っていくとカーテンを開けて、窓を開けた。網戸にしておき、少し空気の入れ換えをしようと思ったのだ。そして、ベッドに座るとぽすんっと倒れ込んだ。布団と枕から甘いような香りがして、冬四郎は顔をしかめた。いくら、妹の部屋とは言えどそこで寝るのは躊躇われたが、冬四郎は香りに包まれると安心したかのよう目を閉じ、うとうとし始めた。
完全に睡魔に身を任せるようにして、意識を手放そうとした時、ジャケットの中の携帯が、ぶるぶると震えた。
「はい、宮前です」
『お、悪い寝てたか?パソコン、電源も入らねぇんだ。晃にデータ残ってたらまた送るように頼んでくれるか?アドレスは…どうすっかな?ちょっと待てくれ、湯野ちゃん』
山上はまだ事務所に居るのか、颯介を呼んで何やら話をしているようだ。遠くの方から、颯介の声が聞こえてきていた。




