3話
くはぁと大きな欠伸をし、目尻に浮かんだ涙をごしごしと擦り、山上は机から足を下ろした。
「それで、宮前さんたちは?」
「奥で片付けしてる。しなくても良いって言ったんだけどな…ま、みやしか居ないけどな」
颯介はごちゃごちゃした机の物をどかして鞄を置くと、奥の様子を見に行った。すると、疲れきった顔の冬四郎が箒で硝子をひとまとめにして、ゴミ袋に入れていた。
「あ、おはようございます…すみません、こんな事になってしまって」
ふらふらとしながらも、律儀に頭を下げる冬四郎を見て、颯介は無言で頷くしかなかった。よく見れば、硝子が飛び散っている床には、血がついている。
「だ、誰か怪我でもしたんですか?」
「いえ…大怪我した人は居ませんよ。ただ、仲間割れが起きて…」
「……?」
半開きの目といい、よく分からない話といい、冬四郎がかなり参っている様子なのが、颯介にも分かった。
「みや、お前帰って寝ろ。まだ京井さんも戻ってきてないんだ…また何かあった時に、そんなんじゃ何も出来ないだろ?」
「ですが…このままにしておくのは」
「いい。俺も帰って寝るしな…湯野ちゃん悪いけど、仕事にもなんないだろうから…全部、次に回せるか依頼者に確認…ってもパソコンも潰れてるか」
「そうですね…まぁ電話してみますよ」
「悪いけど頼むな。ドアだけは午前中に直して貰うから…戸締まりってもドアの鍵だけ頼む」
「むっちゃんの事で動くなら、言ってくださいよ。出来る事はしますから」




