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2話
夜の乱闘で、めちゃくちゃになっている事務所内を見て、冬四郎が聞くと山上は両手を持ち上げて見せた。お手上げという事のようだ。
「後ですれば良いだろ…」
山上は机の上に置いていた缶ビールを取ると、ごくごくと呑んだ。そして、空になった缶をぽいっと床に落とした。今更、缶や灰で汚れようと大した事はないとでも思っているのだろう。
「ドア、閉まらねぇし…寝れねぇな」
「電気も点かなくなってますね」
「ったく…どんだけ修理費かかると思ってんだよ。どいつもこいつも、好きに暴れやがって」
冬四郎は缶ビールを開け口をつけると、少しだけ笑った。そして、手近な椅子を引き寄せると座った。どっと疲れが出たようで、もう立ち上がる気にはなれそうにもない。
「湯野ちゃん来たら…何て説明すっかな」
そうぼやいた山上は、はぁーと長い溜め息をついてビニール袋から次の缶ビールを出して開けた。ぶしゅっと泡が立ち、指が濡れるとシャツになするようにして拭いた。




