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2話
冬四郎の投げた物を避けるのに注意がそれた相手に、あっという間に近付いた京井は拳を握ると腹を殴った。ずんっと重たい音のする一撃だった。がくんっと膝をつき、腹を殴った押さえている。プロテクターをつけていようとも、流石に怪力である犬神からの一撃は、堪えたようだった。
「みや、どこに居たんだ?」
「車内で見張ってました」
それを聞いた京井は、ほっとしたように息をついた。冬四郎は1人で調べ回っていたのではなく、篠田と西原を送り届けてから事務所には戻ってこず、下に停めた車から見張りをしていたのだ。
「連絡しろよ」
山上も心配していたのだろう。ほっとしたような表情を浮かべていた。冬四郎は落ちているネクタイを拾い、腹を押さえて立ち上がれないでいる相手に近付いた。ネクタイで、縛り上げておこうとでも思ったのだろう。京井もそれを手伝おうと近付いたが、物音に振り返った。何かが飛んでくるのが見え、思わず振り払った。手加減が出来なかったからか、それは砕け散りぱらぱらと落ちていった。
「っ…」
京井は嫌そうに顔をしかめた。砕けた破片と元に灰が部屋の中に舞っていた。投げつけられたのは、ソファーの前にあるテーブルの上の灰皿だったのだ。




