2話
運動神経はよくても非力なのか、京井に腕を掴まれた時に、短刀は手放していた。京井はそれを踏みつけて割った。それには流石に驚いたのか、相手の目が少し見開かれた。だが、そんな事では怯まないのか、果敢にも飛び込んできた。
京井が距離を取ろうと後ろに下がると、どんっと背中に何か当たった。驚いていて振り向くと、山上が居たのだ。
「あ、悪い」
「いえ、こちらこ、そっ‼」
山上の襟首を掴んで京井はさらに後ろに飛んだ。山上の苦しそうな声がしたが、それには構ってられなかった。外からの僅かな光の中では、人間の山上にはかなり分が悪い。大人しく引き下がっていようかとも思ったが、片車輪がかなり押され気味だった。ここで片車輪だけでも仕留めたいのか、明らかに強い方が片車輪と対峙している。
「い、犬神っ‼わっと」
ぶんっと短刀を振り、片車輪を狙うもそう簡単には片車輪もやられてはくれない。だが、腕なんかにはすでに切り傷が出来ていた。京井は片車輪の方に回りたかったが、もう1人の方がそれを許してはくれない。距離を開けようともすぐに詰められ、もう1歩下がれば壁に当たってしまう。
それに気付いたのか、相手はぐっと拳を握って京井に殴りかかってきた。避けると、ごんっと鈍い音が響いた。壁を思いきり殴るだけになったにも関わらず、躊躇う素振りはない。すぐに次の拳を打ち込んできた。




