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2話
覆面のせいで、目元しか見えていないが、呼吸の乱れもなく相手はかなり落ち着いているようだ。明らかに、こういう襲撃に慣れている者だなと京井は思っていた。
相手は何を思っているのか、目が少し細められた。そして、大胆にもだんっと机を蹴ると飛び降りた。京井が少し驚き反応が遅れた間に、相手は間合いを詰めるように床を蹴った。だが、まだ短刀に手はかかっていない。どんっと腰にしがみつくようにしてぶつかり、相手はぎゅっと右手で京井の腰を掴み、その間に左手で左の腰の短刀を引き抜いた。そして、短刀を振り上げた。
腰に刺さる前に、京井は相手の腕を掴んだ。意外にもほっそりとした手首に、京井は驚いていた。プロテクターか何かで身体は大きく見えていても、中身はそうでもないのかもしれない。その腕を持ち上げると、相手はその京井の力を利用するかのようにぐんっと腕に重心をかけて、足を振り上げた。顎をすれた靴の感触から、爪先に鉄板を仕込んでいるなと京井は直感した。
プロテクターといい仕込み鉄といい、かなり訓練を積んでいる者ではないかと見ていた。そうでなければ、爪先に鉄板を仕込んだ靴で易々と動き回る事は難しい。
相手は振り上げた足を高く持ち上げて、そのままくるっと後ろに回転して着地した。運動神経もかなり良さそうだ。




