2話
京井と片車輪は、黙って時間が過ぎるのを待っていた。山上はくぅくぅと眠っている。京井はコーヒーをいれに、立ち上がり時計に目を向けた。篠田と西原を送りに行ったにしては、冬四郎が戻ってくるのが遅い。京井はそれも気がかりだった。あんな疲れきった顔で、何か1人で動いているのだとしたら、危険しかないような気がしていた。
コーヒーをいれて戻ってくると、京井は溜め息を吐いた。こうして、出来る事がなくただ待っているというのは辛かった。冬四郎もそんな思いから、単独で動いているのかもしれないと思うと、京井はまた溜め息を吐いた。
「犬神さんはすっかり人の中に馴染んでるんやな…あの、何った?みや、何とかって兄ちゃんが心配なんやろ?戻ってこおへんもんな」
「宮前さんね。むぅちゃんのお兄さんですよ」
「ん?ねぇちゃんの名字、玉奥やなかった?」
「そこはまぁ色々、複雑なんですよ」
「ふーん?顔は似てないけど、やることそっくりな兄弟やな…やっぱし、ねぇちゃんの無茶ぶりは兄さん譲りなんやろうな」
染々と片車輪が呟くと、京井は少し考えるように首を傾げたが、そうかもしれないと微笑んだ。
「片車輪も少し休んでおいたらどうですか?」
「このまんまじゃ大して休まれへんわ。犬神さんこそ、おっさんみたく仮眠取りや」




