2話
片車輪はそっと立ち上がると、山上が眠っているのを確認した。そして、そろそろと戻ってくると京井の隣に、わざわざ座った。
「カメラに移ってた男なんやけど…襲ってきたのと似てる。布で顔隠してたのも同じやな」
「そうですか。となると、やっぱり妖と関わりあるからむぅちゃんが狙われたって事か」
「いっその事、ねぇちゃんみんな喋っちまえば解放されるんやないか?」
「あのむぅちゃんが聞かれた事を大人しく吐くと思いますか?」
京井は怒ったような顔をして、じっと正面を見据えている。京井が見ている先は、いつもむつが使っている机があった。整頓はされていても、よく分からない置物がずらっと並んでいる。
「思わへん。頑固やし…無闇に傷付けたりするのを好むような子ちゃうしな。わしは腕を切り落とされた事あったけどな」
「それは…何かやらかしたからでしょう?」
「いや…どうやろうな?そこは勘違いとか行き違いってやつやな。ちゃんと帰して貰えたしな」
「…今日、何か起きると思いますか?」
「どうやろうな。やつは1度わしを仕留め損ねてる…ここに犬神さんも居るってなればチャンスやと思って来そうな気もすんねんけどな…せやから、わざと一緒に弁当取りに行かせたんやろ?」
「そうですよ。出掛けて戻ってくるっていうのをわざと見せたかったんです。見てたかは分かりませんが」
「ほんま…ねぇちゃんの周りのんは恐ろしいやつらばっかりやな」




