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2話
3人が出ていくと、山上も大きな欠伸をした。残った弁当を京井が、祐斗に持って帰って明日の昼にでもするかと聞くと、祐斗は嬉しそうに頷いた。京井はしっかりとタッパーも用意しており、手際よく、それに綺麗に詰め直している。
「あの京井さん?」
「ん?どうしました?」
「むつさんは力があるから、妖を…まぁ退治したり出来るじゃないですか。けど、僕らには出来ないんですよね。でも、妖が襲われてるって片車輪が言ってましたよね?」
祐斗が何を聞きたいのか分かったのか、京井は手を止めた。そして、ふぅむと唸った。
「出来ない事は…ないですよ」
「え?」
「妖も心臓を一突きにでもされたら死にます」
「犬神さん、そりゃ言いすぎやないか?」
「そうですか?あ、まぁ…そうかもしれませんね」
祐斗が首を傾げると、京井は再び箸を動かしてタッパーに詰め始めた。祐斗は、それを隣で眺めていた。する事が何かお母さんみたいだよな、と祐斗はぼんやりと思っていた。




