2話
「取りに行ってきますよ。片車輪、一緒に来て貰えますか?手伝って欲しいので」
京井がそう言うと、嫌そうな顔をした方だったが、京井の目が細められるのを見て、何かを察したのか頷いた。しゅうしゅうと車輪にまとわせていた少ない火を消して、あっという間に人の形になった。
「では、行ってきますよ」
「あ、車使いますか?だったら鍵を…」
冬四郎がポケットからキーケースを取り出したが、京井はタクシー拾いますからと言い、片車輪と一緒に出ていった。
「はぁ…何か疲れたな」
山上はそう言うと、タバコを揉み消した。そして、腕を上げて伸びをして身体を捻った。すると、ばきばきっと腰が鳴った。
「とりあえず、今日は飯食って解散だな。篠田はどうする?明日は仕事戻るか?」
コーヒーをすすっていた篠田は頷いた。
「それに、片車輪の話が本当なら…家に置いてきたのが気になりますから」
冬四郎は、ふふっと笑った。西原はまだ、こさめが猫又だという事を知らない。篠田は隠しておきたいのか、ぼかすように言った。
「あの…妖怪たちが襲われてるって…人に出来る事なんですか?むつさんみたいな力があるならまだしも」
「そうだね。そこは気になるね」
むつと仕事をしているせいか、祐斗も颯介も妖たちには慣れている。今まで一緒に仕事をしてきて、むつのような力のない祐斗も颯介も妖を退治するような事はした事がなかった。むつだとて、多くはない。
「片車輪にでも聞くしかないな」
ふぁっと大きな欠伸をした西原は、眠たそうに目を擦ると、椅子にもたれて目を閉じた。




