542/542
8話
冬四郎は、りぃがむつに何をしたのかをしっかりと見ていただけに、驚いていた。だが、何も言えなかった。
りぃはむつの額をそっと撫でると、またなと小さな声で優しげに言った。そして狐を抱いたまま、ざっくざっくと歩き出した。歩くのが早いのか、すぐに姿は見えなくなった。だが、足音だけは微かに聞こえている。
「…ばぁか」
冬四郎の腕の中で、ぐったりとしているむつは微かに足音の聞こえてくる方に視線を向けると、溜め息のように呟いた。
「…お前もバカだろうが」
「あら、聞こえた?」
「あぁ…おかえり、むつ」
「ん、ただいま…しろにぃ」
むつは呟くように言うと、冬四郎の胸に顔を埋めるようにして目を閉じた。
「…臭ぇな」
「遥和さんと一緒にお風呂入る」
冬四郎は、ふっと笑った。




