8話
むつを抱えるようにして、下水菅を滑っていくりぃはむつの頭が当たらないようにと、しっかりと頭の後ろに手を回している。藻のような物が生え、ぬるぬるとしているせいか滑りやすく脱出も楽だった。土管の出口にあっという間に到達すると、りぃは尻餅をつくようにして吐き出された。
りぃはむつを抱え直して、道に出るとざっくざっくと歩き出した。しばらく歩いていくと、オレンジ色の炎が見えてきた。りぃはふぅと息をつくと、下水で汚れたタートルネックを伸ばして、口元を隠そうとしたが、臭さに少し悩んだ。夜だし大丈夫だろうと思い、りぃは顔を隠す事なくむつを待つ人たちの所に向かっていった。
「あ…あぁ、お戻りになられましたか‼」
狐が駆け寄ると、りぃを空いている手を伸ばして狐を抱き上げた。
「むつ様も」
ふかふかの尻尾を振りながら、狐はむつの顔を見て嬉しそうにしている。
「むつ…」
「早く休ませてやれ」
駆け寄った冬四郎は、りぃの肩からむつを下ろした。目を閉じてはいるが、怪我をしている様子はない。
「ありがとうな…」
「いや…」
りぃは立ち去ろうとして、ちらっとむつを見た。何か言いたそうに口を開いたが何も言わず、むつの頬に手を添えた。そして、顔を近付けるとすぐに離れた。




