8話
「むつ…お前とこのままここに残ろうなんて思ってないだろうな?」
「…どうかな?残ってもいいかなーとは思ってたりしてるよ?出口ないし」
ふっとむつが口の端を持ち上げて笑うと、りぃは眉間にくっきりと縦シワを寄せた。
「出るぞ。教えた下水があるだろ」
「臭いもん。滑るし」
「だから、早く出れるだろうが」
むつは、覆面の男たちを包んでいる炎に手をかざした。ごおっとさらに炎の勢いが強くなると同時に、上の炎の勢いも増した。
「…むつ。もう会えなくなる」
「遅かれ早かれ、ね」
炎の中から出る気のないむつの腕を取り、無理矢理立たせたりぃはちっと舌打ちをした。そして、引き寄せた。
「…っ、さい、てぇ…」
「そうだな」
りぃの拳が、むつの腹にめり込んでいた。むつは痛そうに腹を押さえながら、ずるずるとしゃがみこんだ。
「お前、無駄に強いな」
悪いなと言いながらりぃは、むつの肩を掴み上体を起こさせるともう1度、腹に拳を打ち込んだ。むつはもう目を明ける事もなく、ぐったりとりぃの腕に抱えられていた。
「…悪いとは思わないけどな」
りぃはむつを肩に担ぐと、さらに地下に潜った。そして、外れている排水口への土管に飛び降りた。




