8話
むつはりぃの肩にもたれるようにして、目の前で炎に焼かれ、形を失っていく人たちを見ていた。
「…あたしも普通でいたかった」
「普通?」
「うん。一般的っていうか…大多数の人と同じように、何も視えず、使えずで」
「…そうか?それがあるから、今の人たちと一緒に過ごしてるんじゃないのか?それは、お前にとって良い事じゃなかったというわけか」
「ううん、良い事。楽しいし、遥和さんも片車輪もこさめも大切な友達。力がなかったら、出会う事もなかった。あなたともね…でも、無かったら悩む事も少なかったのに、って思う。怖い事も減ってたと思うし」
「怖い事?」
「うん。コントロール出来なくなってる今とか」
「それは…危ないな。でも怖い事なんか、ない。人と違うのは個性だろ?それも…色々な経験をして、今のむつがあるんだからな。無くて良かった事なんか、何もないだろ」
「…かなぁ?」
「お前の力を怖がってるやつは、お前の周りに居るか?居ないだろ?妖も能力のあるなしに関わらず、お前の周りには沢山の人が居るだろ」
「うん…でもね、こんな力無ければ良かったのに、って思っちゃう」
むつが少しうつ向くと、ぱたぱたっとコンクリートの上に水滴が落ちていった。りぃはそれに気付いていたが、何も言わずにむつの頭に手を乗せて撫でるだけだった。




