8話
足が固い所に当たった時には、上手く着地も出来ずに膝と手をついていた。燃え盛る炎の中で、りぃが落ちてきた場所だけは炎もなく、ひんやりと冷たい。服のあちこちが焦げて、穴が空いている。
「…危ないのに」
独り言のような声が聞こえ、顔をあげるとむつが目の前に立っていた。オレンジ色の炎に照らされている顔は、無表情で怒っているようにも見える。
「戻ってこないから」
「戻れない」
「炎の勢いがありすぎてか?」
「コントロールがきかないってのもあるね。それと、この人たち…骨も残さずにしてあげようと思って」
むつが振り向いた先には、コンクリートの上に寝かされている人が炎に包まれていた。むつは、とことこと近寄っていき、その目の前にぺたんっと座った。
「まだ息のある人も居たの。でね、助けようと思ったけど、もう間に合わないからって…ほっといてくれって…死にたいって…こんな力があるせいで、居場所がなかったって…もう社会的には死んだ事になってるからって…だから、最期くらい1人にならないように、あたしがついてようと思ってさ」
「…そうか」
家は崩れ落ちそうになっているというのに、むつが出てこなかった理由を知り、りぃもむつの隣に座った。
「なら、俺も居よう…一応は仲間だ」
「そうしてあげて」




