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8話
しばらく見ていると、ばちっばちっと音が聞こえてきた。そして、巨大な火柱が生まれた。流石に、ここまで派手にやるとは思っていなかったりぃは狐を抱いたまま、驚いて声も出なかった。
「怒ってらっしゃいますよ、きっと」
「…いや、どうだろうな」
ばちばちっと音がし、何かが破裂するような音も続けて聞こえてきた。炎の勢いがありすぎてか、あっという間に家は火に包まれて形が分からなくなった。がらっと柱の崩れるような音も、聞こえてきている。火柱と共に、高く昇っていく真っ黒な煙は闇夜の中でも、はっきりと見えている。煙の臭いが濃く漂ってくると、りぃは煙いのか口元を押さえていた。
「むつ様、出て参りましたか?」
炎の勢いを見て、狐が心配そうに言った。りぃも気になったのか、きょろきょろと辺りを見回したが、むつの姿はない。
「もう出てこないと、危ないですよね」
炎の勢いを見ながら、りぃも頷いた。がらっと屋根の一部が崩れ落ち始めている。りぃは寄り掛かっていた木から背中を放すと、狐を地面に置いた。




